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甘くない異世界 -お約束無しはきついです-  作者: 大泉正則
第三章 さぁ、パーティーを始めよう
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3-6 パーティー編成

 借家を借り新たな拠点も定まったということで、つぎは生活基盤をしっかりと固めることが必要だ。


 冒険者ということに少しこだわっていることもあり、やはり今の収入の軸は魔物討伐だろう。

 まずはと、マイルズたちクリストス教の護衛三人を連れて魔物狩りへと出かけた。


 ルルイス村周辺は、それなりの数の魔物が出現する。

 王都周辺の結界によって阻まれた瘴気がその外側に溜まり、このあたりまで広がってきているためにそこそこの数の魔物が発生するらしい。

 だが、村の近くの街道にグレイウルフが出たことからも言えるが、ルルイス村には今はあまり魔物討伐をする冒険者は多くはないようだ。

 二人で狩っていた時もやや手がまわらない程度だったので、よりハイペースで討伐しても魔物が不足することはないだろう。


「まず、アランとブライアンには筋力強化を覚えてもらい、防御強化をさらに訓練してもらいたい。」

「「はい。」」

「筋力強化を使うこと自体は魔力の移動ができていればそれほど難しくはない。魔力を自分が強化したいところに移動させ絡めて馴染ませ、それを維持したまま身体を動かせばいい。

 難しいのは強化した状態で適切に体を動かし、戦い、自分の身体を壊さないようにすることだ。

 防御強化もこれに近いものがあり、体の表面に魔力を移動させ、そこで自分を包む殻のようなものを作って敵の攻撃を受け止める。

 さらに一歩進んだ防御としては、骨や関節などに魔力を移動させて強化し、内部へと浸透する衝撃に耐えたり押しつぶすような圧力を押し返したりする。

 まずは一度手本を見せようか。」

 私は筋力強化を使うと、傍らにあった岩を右手で持ち上げてみせた。よほどの怪力の持ち主でも片手では持ち上がらない大きさだ。

「このように重いものを持ち上げる時の注意としては、腕の筋力を強化するだけではなく、足や腰なども強化しないと持ち上げられないことだ。

 これは筋力を強化した上で剣などで攻撃する時にも言えることで、腕だけで武器を振るうのではなく体全体で振るわなければいけないということと同じだ。」

 アランとブライアンは早速と、私が持ち上げてみせた岩に挑む。

 流石にいきなり片手で持ち上げるということはできないようだが、筋力強化自体はなんとか朧気に形がわかっているようだ。

「いきなりできるようになれとは言わない。ゆっくりと、自分の体を壊さないように習得してくれ。」

 筋力強化は攻撃魔法と違いいきなりできるようにはならない。

 まったく未経験のところから、持っている魔力の最大値まで一気に出せるようになったとすれば、体がついていけない出力で壊れてしまうということだ。

「とりあえず、魔物討伐をしていこうか。まず狙いはグレイウルフからかな。」


 そこから四人で魔物討伐を始めたところで、驚きの事実が判明した。

 ブライアンの弓がとても強かったのだ。

 なんといっても騎射でグレイウルフに正確に当てていたのだ、徒歩の状態では当たり前のように近づく前に2本3本と矢を突き立てる。

 大柄な魔物だとそれだけでは倒せないが、一度怯んで脚が止まってしまうとただの的になる。

「この辺りの魔物が相性がいいだけです。もっと硬くて弓に怯まずに向かってくる相手であればこうはいきません。それに、広範囲で確実な索敵も大きいですしね。」

 ブライアンはそう謙遜していたが、ルルイス村周辺の魔物はケモノ系がほとんどだ。ヘビや蜂などの魔物も多少はいるが、矢が刺さらない硬い魔物は出てこない。

 出てきた魔物をほとんどブライアン一人で無力化してしまっていた。

 偉そうなことをいった手前少し気まずいなと思いながら、筋力強化を使って倒した獲物を運ぶ。

 もちろん、二人で運ぶより四人で運ぶほうが多く運べるのだが、グレイウルフ2匹にグリーンボア一匹は流石にきついなと思う。

 ミランダには早めに馬車で迎えに来て欲しいものだ。


「ブライアンの弓は大したものだな。改めて、今度しっかり教えてもらいたいものだ。」

「いえいえ、私の腕など大したことはありません。それよりも、魔法というものは幅が広いですね。神聖術もその一部と捉えているとは…」

 林道の傍らでミランダを待ちながら、とりあえず一通りの初級魔法を見せ、その真似をさせてみる。

 二人共神聖術を使えるためかある程度の光魔法の適性があり、ブライアンは風魔法、アランは火と土の魔法に適性があるようだ。また、アランの防御強化もなかなかの強度があった。

「もともと神聖術が使えるものとお願いしただけあって、二人共魔法の適性自体は問題なさそうだな。筋力強化もある程度できるになったようだし、即戦力なのは助かるよ。アランの防御強化もなかなかのものだから、前衛も安心して任せられそうだしな。」

「私は不器用なので盾役しかできないだけです。とてもブライアンの弓の腕には敵いません。」

 謙遜しているが、この二人がしっかりとしてくれているだけで、ほかの転生者の訓練も楽になるというものだった。


 結局、今日の狩りはそこで切り上げて村に戻り、居残り組を混じえて訓練をすることにした。

 先の経験を踏まえて、弓の訓練を全員にさせることにしたのだ。

 私はいままで使っていた弓よりももう少し強力でそれでいて大きくなりすぎないコンポジットボウを購入し、ほかにも皆の適性を見るための様々な弓を借りてきていた。

「結局俺たちは兵士とは言っても銃に頼りきっていたからな。ナイフと格闘術は訓練したが、銃がなければ大したことはできない。」

 元奴隷の二人組はおそらく前世では扱ったことがないであろう弓の訓練も素直に受け入れてくれた。

 まだ傷は癒えていないが、森の中を歩き回るのと違って治療院の裏庭で弓の訓練をするくらいなら問題はない。

「俺は遠くからちまちまってのはあまり性に合わなくて、前世ではショットガン持ってどんどん突撃してた。できれば、このクロスボウってやつで一発カマしてから、前に行ってぶん殴りに行きたい。」

 ステファンは少し重めのクロスボウを選び、二射目を考えないスタイルにしたいようだ。

「私は元はスナイパーなので、遠くからは大歓迎です。」

 ジョルジュはロングボウを選び、さっそくなかなかの上達ぶりを見せていた。

 またブライアンの助言でなるほどなと思ったのがイツキに持たせるクロスボウで、より軽いライトクロスボウであれば苦手な者でも少しはましになるということを知った。

 まぁ、少しましに当たるようになったがまだ自衛手段どまりだなというのが正直なところだ。


 そして、意外といったら失礼かもしれないが、ステファンが魔力の移動という感覚をあっさりと理解してしまった。

 一番頭が悪そうだと思っていたが、これは感覚的なもののほうが重要なようだ。

 野生の勘に近いかな?と思ったが、結局失礼だった。

 まぁ、魔法をイメージしてうんぬんは本人が嫌がったので、身体強化の方を重点的に教えることになるだろう。

 その中でもまだ私も訓練中の『自己治癒能力強化』をさせてみることにした。

 要するに私は怪我をしてないが、ステファンの傷はまだ癒えていないのでちょうどいいかな?と思ったのだ。

 体の芯が熱くなるイメージと言ったら首をかしげたので、エナジードリンク(欧米仕様)を決めた時のカフェインの感じだと説明したらあっさりと理解した。

 まぁ、本人はエナジードリンクよりもさらに一歩踏み込んだ何かを使った経験があるようだったが…。

 治癒強化自体はどうやら成功しぐっと治療は短くなりそうだったが、残念ながら目の前で傷が塞がるほどのびっくりする効果にはならなかった。

 効果自体も一緒に見てくれていたミランダが出ていると言ってくれたからわかる程度で、実際の効果がどうかを確認するにはもう少しかかるだろう。

 ともかくも魔力を扱う感覚がわかれば、治療中でも筋力強化や防御強化も訓練させられるので、そのうち前衛を任せることができそうだった。



 そうしてそこから数日、午前中は魔物討伐を行い、午後は弓や魔法の訓練をするというサイクルを繰り返した。

 討伐の仕方はより弓を重視したほうが効率が良くなり、最終的にはアラン一人で前衛をし、敵が多い時はマイルズも前衛に上がる程度で、他は弓を使っていた。

 居残り組だったものたちも、イツキが馬車の御者を覚え、その護衛にジョルジュが弓を持ってついて行き、ジョルジュの傷が癒えて魔物討伐に同行できるようになると、ステファンが馬車の護衛を行うようになっていった。

 ステファンの傷が癒えて討伐に同行できそうなくらいになった頃には一日に馬車2往復分くらいの魔物を討伐できるようになっていた。

 弓の腕前もそれぞれ上達し、特にジョルジュの腕前はあっさりと私を追い越した。

 まぁ、私にはまだ魔法があるからと大丈夫と思いたい。

 魔法の腕前もそれぞれ上達し、筋力強化と防御強化は使えるようになり、攻撃系の魔法や索敵系の魔法もだいぶ使えるようになってきていた。

 まぁ、イツキはやっと通信用の蔦が使えるようになった程度だったが、馬車で獲物を運んでくれるだけでもだいぶ助かる。



 ステファンの傷が癒えてから数日経った頃、王都から私が頼んでおいた人物が到着した。

 プレイアデス枢機卿猊下にお願いしていたのだが、信用できるかどうかきちんと調べ守秘義務を了承させた上で、奴隷解放を処理できる奴隷商人をルルイス村に派遣してもらったのだ。

 もちろん、目的はステファンとジョルジュを正式に解放奴隷にするため。

 頼まれた奴隷商人はさらに二人の転生者を連れてきていた。

 ひとりはイギリス人でもうひとりはカナダ系のアメリカ人。

 二人共、母国でテロに巻き込まれて転生し、クリストス教会に解放されたあともクリストス教に関わることを拒否したそうだ。

 二人には我々の現状を説明し選択させたが、二人はややクリストス教会と関わりつつもきちんと境界を決めている私のスタンスを理解し合流することを選んでくれた。


 奴隷の開放には二つの作業があり、ひとつは書類上のもので奴隷として登録されているものを開放したと証明する書状を作成すること。

 そしてもう一つが、奴隷として刻まれた刺青を、解放奴隷のものと加工することだ。

 いまこの世界で奴隷となったものは上腕に二重線となるように刺青を入れられる。

 そしてその刺青はそのまま消そうとしても痕が残るように特殊なものになっているらしいのだ。

 つまり、上腕のその部分に傷跡が残っているのは違法に抜け出した奴隷であり、解放奴隷としての刺青の加工は全ては消さないが解放されたとわかるように特殊な加工を施すらしい。

 これはアブラハム王国だけではなく周辺の国でも共通しているらしく、違法に刺青を消したものはまた奴隷にしても良いと決められているらしい。


 私は奴隷商人が連れてきた刺青職人にステファンたちと新人二人の刺青の加工をさせながら、別の部屋にイツキを呼び出していた。

「さて、ここらで一度正式に確認しておきたいんだが。」

「そろそろ聞かれる頃だと思っていたよ。ある程度はわかっているんだろ?」

 イツキも覚悟はしていたようだ。

「私とマイルズは初めから君は逃亡奴隷だろうと見ていた。」

 イツキは唇を湿らせ、緊張気味に口を開く。

「そのとおり、僕は逃亡奴隷だ。でも初めからわかっていたなら、今更つきだしたりはしないんだろう?」

「もちろんだ。ただ軽犯罪程度であればそれを精算し、解放奴隷にしたいと思ってね。どのくらいの犯罪を犯して逃亡したんだい?」

 揺れる視線が心の中の葛藤を表す。

 イツキも奴隷として苦労したなら出来れば逃亡奴隷より解放奴隷としての安全な地位が欲しいだろう。

「う~~ん、やっぱり開放は無理だと思うな。」

「それは相手を殺したりの重罪を犯したってことか?」

「いや、殺してはいない。

 所有者の貴族を気絶する程度には殴ったから怪我した可能性はあるけど、それほど酷いはずはないと思うし、死んだという話は聞いてない。

 そのあと、少し生活費のために金目の物を少し頂いたけど、家宝とか言いそうな極端に高価そうなものは手をつけなかったし。

 だけど、それらの罪を許してもらって解放奴隷になるための条件を満たすためには、元の所有者に認めてもらわないとダメなんだよね。」

 どうやら自分が解放されるための前提条件はミランダ辺りから聞いていたらしい。

「絶対に元の所有者は許してくれないと?」

「無理だね。お金とかじゃ無理だと思う。プライドの問題だから。」

「では逃亡した君を探してる可能性はあるんじゃないか?」

「こちらからヤブを突いて蛇を出さない限りは、見つからない自信はある。

 大した力のある貴族じゃなかったしね。

 この村で店番してるくらいじゃ見つからないから、逃亡奴隷ってことは隠して置いておいておくれよ。」

 手を合わせて拝む姿を見ながら、仕方がないなと諦める。

「元々転生者を保護するつもりで連れてきたんだ。

 逃亡奴隷のまま隠れて生活したいというならそれでいいさ。

 もしも見つかったり困ったことがあればいつでも力になるから言ってくれ。」

「ありがたい。あまり僕に出来ることはないけど、やれることは一生懸命やるからさ。」

 急に調子の良くなったイツキを見ながら、あの神が適当に転生させたならこういうのもいるよなとため息をついた。



 奴隷商人が連れてきた新たな転生者二人も解放奴隷としての処置をしてもらい、改めて挨拶していた。

「僕はシモンズ=バークレー。元イギリス人で牛飼いをしていたんだが、街にいるときにテロに巻き込まれてしまってね。こっちに来て一年半だけど、農作業と畑で使う牛の世話をさせられていたよ。」

「私はポール=クラーク。カナダ系アメリカ人だ。まさかアメリカでテロに遭うとは思っていなかったね。まぁ、イスラムの連中とドンパチやってたから不思議ではなかったかもしれないが。元は証券マンだったが、一年前にこっちに来てから農作業ばかりやらされてたね。」

 二人共白人で金髪のようだったが、農作業のせいで日焼けし髪の色もくすんでいた。

 それなりに力仕事はしていたようで筋肉はしっかりと付いており、農場も悪い場所ではなかったらしくそこまで栄養状態も悪くなかった。


「こちらも一人、加えていただきたいものがいるのですが、よろしいでしょうか?」

 マイルズが後ろに一人の若者を従え声をかけてきた。

「騎士団に所属する斥候の一人なのですが、我々を見守っているうちにその教えを請いたいと思うようになり、プレイアデス枢機卿に願い出て許可をもらったとのことです。」

「ダガーと申します。苗字はありません。しがない斥候の一人に過ぎませんが、サトシ様の優れた技を拝見しているうちにどうにも我慢できなくなりお願いいたしました。どうか私めにお教えください。」

 ダガーは小柄で線が細く、少し濃い褐色の肌と灰色の髪の毛をしていた。

「私の索敵や隠蔽、結界などの技は魔法によるものだ。適性がなければ教えられないが大丈夫そうか?」

「隠蔽だけは見よう見まねで少しだけできるようになりました。マイルズ様に見ていただいて、魔法として使えていると確認していただきました。しかし、これ以上の技は見ているだけでは覚えられないと思い、お願いにあがったのです。」

 ダガーはその場で隠蔽の技を少し見せる。

 確かにそれは魔法によって気配を薄くする技の一つであった。

「なるほど、適性はあるようだね。私のそばで習おうというなら、しばらくは私の斥候として働いてもらうけど、それはいいのかな?」

「許可を頂いております。」

「ならば、問題ないだろう。これからよろしく頼むよ、ダガー。」

「はっ、もったいないお言葉でございます。これまでよりおそば近くで務めさせていただきます。」

 ダガーは騎士見習いたちよりさらに腰が低くへりくだっていたが、正直斥候が一人手を貸してくれるのは助かるなと思っていた。



 こうして、使える仲間や新たな仲間が増えていく。まぁ、ゲームじゃないんだから人数制限などというものはない。


どんどん増員し、戦えるようにしていきます。

ま、ゲームじゃないでいくら増やしても、作者が苦労するだけで大丈夫だよねw


次話はちょっと調べながら書く事になるので、少し苦労しそうです。

(評価とかが増えると励みになるのですが…[壁]_・)チラッ)


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