序章
「てりゃああぁー」
悲鳴にも似た俺の声が草原に響く。
その瞬間、俺と奴の剣が衝突する。
──このままじゃ負ける──
俺と奴には力の差がある、無論奴の方が強いに決まっている。
──ハッタリでもなんでもいい、この場を切り抜けないと──
「これ以上近づいてきたらお前を殺す」
「自称勇者、やれるもんならやってみろ」
奴が近づいてくる、1歩また1歩、背筋に緊張が走る。
「楽しませてくれたお礼に、褒美をやろう」
「褒美だと!? ふざけてんじゃねーよ!」
「俺の仲間になってくれたら、世界の半分をお前にやろう」
これがゲームだったら俺は確実に、「はい」を選択しただろう、そういう男だからだ。
ここでの地位を持たない俺には、十分魅力的な条件だった。
だが、
昔の俺とは違うことを証明したかったのか、
考えるより先に、口が動いた。
「そんなモンは要らねぇ!」
「そうか、交渉決裂だな」
そう言って、奴は闇の中に姿を消した。
「助かったのか?」
生きている、そういう事だろう。
安心感に包まれた。
そんなことをしてるうちに
一体、何故俺はここにいるのか自分の記憶を辿った。
──そう、あれは確か──