俺の高校生活は人外一色になるそうです!?
《結城視点》
今、俺とメルシィはある扉の前にいる。
ここは私立魔境人外学園。そして、この扉の奥にいる人物こそ、メルシィの母親にして、この学園の学園長である。
「母様、メルシィ、只今到着しました。」
『入りなさい。』
奥にある椅子に座っているのは長い金髪で片方の眼を隠し、眼鏡をかけている。顔つきも、何処かメルシィを成長させた感じがする。
「お帰りなさいメルシィ、予定より時間が遅れたようだけど何か……………あら」
メルシィの母親は俺と目が合うと、まるで久しくあっていない知り合いに久しぶりに会ったような表情をした。
「ふふっ……メルシィが道草くってると思ったら、まさか男をつれてくるとは。」
「なっ!?ちっ、違います!ちょっと助けてもらっただけでそんな………」
そういうとメルシィは顔を赤くしてうつむきながらブツブツと何かをいってる。
「我が子ながらチョロイわね。初めまして、メルシィの母で学園長の、フランシスカ・バンピーよ。娘がお世話になったわね。」
「いえいえ、普通、人が倒れてたら助けるもんですよ。」
「そうかしら。お人好しなのね。」
少し俺と話をすると、フランシスカさんはいまだにうつむいてるメルシィに向かって声をあげた。
「メルシィ、彼と話がしたいから外にいってもらうついでにお茶を持ってきてくれる?」
「う、うん。わかったよ。」
そういうと、メルシィは扉を開け、外に出て、閉めたとき、部屋の内側から鍵をかけるタイプの扉が不自然なくらい静かに、メルシィに聞こえない音でロックがかかった。
「人払いも済ませた、防音もはった、周囲には人影は無し、さて、ようやくちゃんと話せるわね。天草結城くん?………いや、『白銃の死神』といった方がいいかしら。」
フランシスカさんが口にしたのは、ここにきてから一度もいってない俺の名前と、あのときの名前。
「…………なぜ、俺が『白銃の死神』だと?俺があの戦いにいたのは認めるが、『白銃』とは限らないだろ?」
「確かに、そうね。2ついいことを教えてあげる。1つ目は私が真祖であること、もう1つは、真祖は同類の血なら誰でも見分けがつくこと。」
「そして貴方からは『白銃の死神』に殺されたはずの私の祖父の匂いがする」
「………はぁ、なるほどな。あの老害の血を浴びた性か。」
人間と亜人が再び手を取り合うきっかけとなった、一部のものしか知らない真実、それが、人亜大戦。そして、その戦いに結城は、『白銃の死神』として、政府の特殊部隊の隊員として参加していた。
「人亜大戦………あれは十年前に起こった惨劇のはず、なのに、なぜ君はここにいる?あの時の君は10歳程度だった。だが、単純に考えると君は6歳か5歳程度の計算になる。」
「まっ、コールドスリープってやつだよ。」
「驚いた……当時の人類にコールドスリープが使えるとは………」
「コールドスリープが使えるのは政府の特殊部隊に所属する部隊長と副隊長だけ。しかも、それ自体は政府にも秘密にしている。」
「ふぅん、そんな事を聞くために残した訳じゃないから本題に入るわね。結城くん、君にたのみたい事がある。」
「たのみたい事……ですか?」
フランシスカさんがいきなり真剣な表情をして俺に話しかけてきた。
「貴方に、メルシィと同じ学校、つまりここに入学してほしいのよ。」
「喜んでお受けさせてもらいます。」
俺が即答で返すと、フランシスカさんはポカーンと口を半開きにしてこちらを向いていた。
「あー……うん、ありがとう。手続きはこちらでしとくから、試験も無しよ。授業は全部メルシィと一緒。今日の夜に迎えにいかせるから、それまでに荷造りしといて。」
「え、どこ行くんですか?」
「そんなのもちろん、私達の家に決まってるじゃない。そこからなら近いし、メルシィと毎日一緒に登校できるわよ?」
「そんなんじゃなくて………はぁ、わかりました。準備しときます。」
話し終えたタイミングで扉の鍵が開き、メルシィがお茶を持ってきた。
「ありがとうメルシィ。それと、結城くんと一緒にこの学園に入学だから。」
「へ?結城くんと一緒?」
「あぁ、家も一緒らしい。」
「ふえぇぇぇぇ!?」
話の内容を伝えたとたんに部屋にはメルシィの叫びがこだました。
──────────────────────────
あれからは何事も無く、家に帰宅した。あったとすれば、帰りの途中、メルシィがうつむいたままで何も喋らなかったことだろう。
「荷造りする前に父さんと母さんに連絡しないと。」
携帯をとって、父さんに電話をかけると、すぐに『もしもし!』と帰って来た。
『あぁ!やっと電話をかけてくれたね愛しの息子よぉ!パパとママは心配したぞぉ!で、学校、どうだった!?』
電話ごしの癖にやけにテンションが高いのが俺の父親、天草修一郎。親バカである。
「あー……父さん、驚かないで聞いてくれ。」
『いやまて!パパが当ててやろう!そうだな……いくはずだった高校にいけず、違うとこに通うことになったんだろう!そうだろ!?』
……………当たってる。勘が良すぎじゃね?
「そうだよ。魔境にいくことになった。」
『なんと!実はパパもその高校の関係者なんだよ!いや~実に運がいい!まさに運め《ピッ、》』
うざかったので切った。後悔も反省もしてない。
「早めに荷造りしとくか。」
時計を見てから俺は行動を始めた。
向かう場所は自分の部屋………ではなく隣の物置部屋。
開けると少し埃臭いが気にせず、目当ての物を探す。
「確かここら辺に………あったあった。」
見つけたのは何かのメダル。俺はそれを自分の部屋に持っていくと、机の引き出しにある窪みに入れた。
カチッ、というと、部屋の真ん中に階段が現れる。下につくとそこには、何かをまつる祭壇のようなものがあった。そこにあるのは─────
───────────────────────────
時刻は変わって夜、約束の時間がせまってきたのを確認すると、外に出た。
ここら辺は街灯がなく、夜は基本、家の明かりが目印になるが、今は真夜中。こんな時間に明かりをつけているとこはないだろう。
「おまたせ致しました結城様」
「うおぉ!?」
突如声をかけられ、振り向くとそこには紫色の髪の毛でサイドテールのメイドが一人。
「お迎えにあがりました。私、フロムディアといいます。以後お見知りおきを。」
「ど、どうも、あの···どうやってここまで?」
「上をご覧くださいませ。」
上?と思いながら向くと、そこには六本足の馬が二匹、馬車に繋がられていて、窓からメルシィが手を振ってた。
「お手を拝借、『転移』」
「え、何を──」
気がついたときには馬車の中にいた。
「………魔法って便利だな。」
「そうでもないよ。魔力はいるし、イメージは疲れるしで。」
ははは……と、笑いながら会話をし、メルシィの故郷──異世界についての話を聞いた。
「僕の故郷は自然がいっぱいあるよ。技術が進歩してないからね。」
「魔物もたくさんいるし、動物だっついる。今馬車をひいてるのは、スレイ・プニル。魔物だけど人懐っこい性格で、人間で言う家畜に近いかな?」
「お二人方、到着いたしました。」
声をかけられ、外に出ると、そこには黒く禍々しい城───ではなく、白などの明るい配色の城があった。
メルシィは城の前に走り、こちらを向いて両手を広げて、
「改めて、三年間、よろしくね!」
吸血鬼のはずなのに太陽のようなまぶしい笑顔で、こちらに語りかけた。
どーも、作者です(´ー`)ノ
やっと学園に入学。でもこっから先ってあんまし決まってないんですよねぇ……
次回もよろしくですー。