美の仮面を剥がされたとき
(神成くん!早く私のものになって〜♡)
平田 夏美は体育館裏で神成の顔を思い浮かべていた。
「神成くんとたくさん遊びたい!神成くんと美味しいもの食べたい!神成くんに抱きしめられたい!神成くんの…捨てられた時の醜い表情が見たい!!」
(あら、思っていたことが思わず口に出てしまったわ)
神成 一は体育館裏に向かっていた。
(僕はどうしたらいいのだろう。やっぱり丁重にお断りするしか…)
ドキドキする胸の鼓動と下校する生徒の話し声が見事な雑音として神成の思考を邪魔している。
(考えても無駄だ。ごめんなさいとしっかり言おう)
歩を進めていると、体育館が見えてきた。
「あ…」
体育館裏に目をやると、顔だけ覗かして手を振っている。
「どうも」
「やっと来てくれたー、ずっと待ってたんだからねー!」
少し作ったような可愛い声、髪はサラサラ、スタイル抜群。こうやって話すだけでも緊張する。
「…で、さっそく本題に入るんだけどさ…」
「うん」
「私、神成くんのこと好きになっちゃたの」
「そ、そうなんだ」
(やっぱり告白だ)
「よかったら、私と付き合ってくれない?」
平田さんは頬を赤らめていた。
……
……
「…ごめんなさい」
僕は平田さんの顔が見れなかった。それは申し訳なさだけではない。一瞬だけ、彼女の顔が狂気と欲の詰まった恐ろしい顔になったような気がしたからだった。