少女の再会~桜&桃子~
寺の前にそびえ立つ門は、その寺に歴史があることを物語っているようだった。人が十人程度雨宿りできそうな幅があって、案の定そこには人が集まっていた。五、六人いた。緑の蛍光色のジャケットを着ているおじいさんが、観光客に境内の説明をしている。他にも地元の人が多くいて、年に一度のこの日を盛り上げようと必死だ。
彼らを尻目に桜は歩く。お土産を売る人、取材をしているカメラマン、墓を探しうろうろする人、喪服に身を包む人。各々の思惑が行き交い、少し騒がしい。今日でなければこうはならないだろうと思い、死者たちを不憫に思った。
桃子との待ち合わせ場所は墓地の片隅だった。まだ墓石のない、人も少ない場所で落ち合って一緒に太宰に手を合わせる約束だ。だから私は本堂や事務所に行くこともなく、両者をつなぐ通路の下を通る道を抜け、墓地に移動する。その道は小さな坂道になっていて、水が両端で小さな川を形成していた。滑り止めも敷いてあり、スニーカーのゴムが吸い付き、キュッという音が耳をくすぐりこそばゆい。その音を上書きするようにまた口ずさむ歌。あいしあうー、ふーたーありー、しーあわせのーそらー。
テンポを下げて歌うと、徐々に待ち合わせ場所が近くなり、ついに桃子が見えた。
桃子も私に気づき笑顔の花が咲く。
私が普通のテンポで、隣どおし、
桃子が続いて、あなたとあたし……、
さくらんぼ! と二人の少女が歌い、ハイタッチする。
雨は次第に強さを増し、いたいけな桜の傘を、一つ分だけ叩いている。孤独の雨音。