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“生物の正体”

 刀矢(とうや)たちは、各自武器を構えながら等間隔をあけて歩いていた。


固まって歩くよりは、一網打尽(いちもうだじん)にされにくい。



 時々アイコンタクトを取りながら、無言で歩いていく。


 すごい緊張感だ。



(一体、何がいるってんだ……)


 剣助(けんすけ)(ひたい)から汗が滴れていくのを感じた。




 辺りは見通しがよく、何かいるならすぐにわかるはずだが、今のところ何も見えない。


 すると、この緊迫した雰囲気に一番不似合いな男がもう待ちくたびれたといった感じで口を開いた。


「刀矢さん、本当に何かいるのかよ?」


槍太(そうた)、黙って歩け」


 刀矢は槍太の方を見ずに言う。


「だってぇ~なぁ? 何にも見えねぇよなぁ~?」


 と、槍太は大牙(たいが)に同意を求める。


 大牙は緊張しすぎで答える余裕もないようだ。



 すると、刀矢が立ち止まってまたハァ~とため息をついてから、


槍太(そうた)。俺たちの役目は、彼女たちを守ることだ。危険なものがありそうなら、見に行って対処するのは当たり前だろう」


 と手を腰に当てる。



 それに対し槍太は、


「あいつらを守るんなら、こんなに離れてて大丈夫なんすか? こっちに何もなくてあっちにあったら大変じゃないすか~」


 と口をとんがらせて減らず口を言う。



 また刀矢が怒るかもと、剣助(けんすけ)大牙(たいが)は心配したが、刀矢(とうや)は感心したように頷いた。


「それも一理あるな。じゃあ一人は彼女たちに合流させよう。……大牙(たいが)、行ってくれ」


 と大牙を見る。


 急に指名された大牙は体をビクつかせ、激しく首を横に振り、拒否の構えだ。


自分一人で守れるわけなんてない。



 すると、


「大牙は気乗りしないみたいなんで、じゃあ俺が!」


 槍太が勢いよく挙手。



槍太(そうた)! お前は楽な方に行きたいだけだろ!」


 とうとう刀矢が怒鳴った。



 そこで、剣助が仲裁(ちゅうさい)も兼ねて口を挟んだ。


「刀矢さん、あっちは大丈夫だと思いますよ。……闇奈(あんな)がいるから」


 不本意な言葉な為に語尾が小さくなる。


 その言葉に、刀矢はうーんと唸った。


「闇奈か。剣一郎(けんいちろう)さんも(かな)わないと言っていたぐらいだから、それなりに強いんだろうが……」


 刀矢は、闇奈の強さをどこまで信じたらいいかと(あご)に手を当てて悩んでいる。



 とその時、



 ドーンドーンドーン──



 またあの足音が大地を揺らして響く。



 一同は構えた。


 音はかなり近い。



 しかし、いまだ正体を確認できないまま、



 ドーンドーンドーンドーン──



 音だけが近づいて来る。


 陽も半分落ち、緑が鮮やかさを失った草原を必死で見回し、音の正体を探す。


(どこだ。なぜ見えない)


 刀矢は焦っていた。



 その時、大きな足音と共に、遠くの方から何かカラフルなものが近づいてくるのがやっと見えてきた。


 オレンジや黄緑、赤や黄色を(まと)った何かが、夕暮れの中を進んでくる。


 その風貌(ふうぼう)は、アレだ。


「恐竜?」


 いち早くその正体を認めた槍太が、珍しく神妙(しんみょう)面持(おもも)ちで(つぶや)いた。


槍太は、視力がいいのだ。



「は? なにい?」


 と剣助は眉をしかめ、


「やっぱりな……」


 と刀矢がげんなりしている。




 実際は遠くにいるのに、音だけが大きく響いたのは、奴が巨大すぎる為だったのだ。


 恐竜は地響きを鳴らしながらゆっくり近づいて来る。


 本などで見るのとはかなり色が違うが、間違いなく恐竜だ。そしてその恐竜といったら、



 ──でかい。



 早くも戦意喪失(せんいそうしつ)気味(ぎみ)の一同。


 前回も恐竜に遭遇したことがある刀矢も、これほど大きいのを見るのは初めてだった。


とにかく、でかい。



「ここで殺られるわけにはいかない。生きて帰りたかったら、死ぬ気で戦え!」


 刀矢がやや矛盾した(げき)を飛ばし、一同は歯を食いしばって武器を構え直した。


 実際、死ぬ気で戦ってしまったら生きて帰れないが、戦わずして負ければそれこそ死んでしまう。



 ──やるしかない。



 『地球外生命体』との初対戦が始まった。




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