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“青い瞳”


 火芽香の矢づくりを見物していた一行は、なかなかうまく作れない火芽香の不器用さを見て絶句していた。初めは「がんばれ」とか「うまくなってる」とか、皆思い思いの励ましの言葉をかけていたが、あまりに進歩しないので最終的にかける言葉が無くなってしまったのだ。


 そんな中、もはや見物にも飽きてきた槍太は、この場を動く理由を作り出す為に、おもむろに剣助を見る。


「剣助。お前も早く武器決めてこいよ~。闇奈のとこ行かねぇとよ~」


 言われた剣助はハッとして頭をかいた。


「あ、そうか」


 そこで、同じく見物に飽きていた璃光子が話に乗っかる。


「でもさ~。闇奈ほったらかして走ってきた剣助、超カッコ悪かったよね~」


 そう言って思い出し笑いをする璃光子の言葉に、剣助はバツが悪そうに苦笑いを浮かべる。


「ホントよね。まったく、このバカ助」


 風歌が怒った顔で剣助を睨む。


 意外な毒舌を披露した風歌に、大牙は苦笑いした。


 ここで、「バカ助」を使ったのは二人目になった。密月はバカ助が流行り始めたことに大爆笑している。


 色々痛い剣助はいたたまれなくなって再び武器庫へと駆け込んでいく。


「け、剣助。ゆっくり選んで来ていいからな」


 刀矢が気を遣って声をかけたが、剣助には聞こえなかっただろう。


 剣助を待つ間、もう少し練習しようと、火芽香はもう一度矢づくりに挑戦する。しかし、やはり失敗。いい加減少し落ち込んできた火芽香は、しばし矢づくりの事は忘れることにして、ジェファに話しかける。


「ジェファさん……は創魔導士(そうまどうし)なんですよね? でも、さっきのは、私と同じ魔法ですよね。赤魔導士とは違うんですか?」


 自分と同じ魔法を操るジェファが、赤魔導士と呼ばれないことに疑問を抱いた火芽香。問われたジェファは、微笑んで答えた。


「ええ。そうよ。造形技術に優れているから、創魔導士って呼ばれるだけなの。父も兄も赤魔導士よ」


 ジェファがそう言った直後、意外にも密月が口を挟んだ。


「で、月族(つきぞく)出身か」


 そう確信を持ったように言う密月の顔は試すような笑みを浮かべている。ジェファは真顔になって密月を見返した。


 『月族』という言葉が突然出てきたことが意外だったので、全員が驚いてジェファを見る。


 視線を集めたジェファは、密月をじっと見つめたまま冷たい微笑を浮かべる。


「ええ。父はハーフ。私たちはクォーターよ。あなたはハーフ?」


 密月も同じように冷たい微笑を浮かべた。見つめ合う二人の間には、まるで腹を探りあっているような視線が絡んでいる。


「ああ。月族の混血に会うのは珍しいからな。最初わかんなかったぜ」


「な、何が? どうしてわかるの?」


 水青は月族の身体的特徴を探そうとジェファと密月を交互に見ている。二人に共通しているのは白人系の顔つきだが、同じような顔ならカサスのゴロツキの中にも何人かいた。それがどこを見れば、月族の血を引いていると判別できるのだろうか。


 密月はジェファを監視するように見つめたまま答える。


「月族は純血だったら黒目だけど、血が交ざると青い目に変わるんだ。バルスもコイツらも青い目してっから、もしかしてと思ってな」


 その言葉を聞いた瞬間、火芽香の脳裏にある少女の顔が浮かび上がった。


(じゃあ、あの子も月族の?)


 怒りを携えた青い目で、何かを訴えるように見つめてきた、あの不死鳥の中にいた少女を思い出す。それと同時に蘇るのは、はっきりと感じることができた激しい憎悪。身に余る憎しみに飲み込まれるような恐怖。


 再び溢れてきた恐ろしさに、火芽香は身震いがした。


(何か意味があるのかしら。……嫌な予感がする)


 他言してしまうと予感が当たってしまうような気がして、火芽香は誰にも言えずに一人で震えていた。



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