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“武器を持てる幸せ”

 闇奈以外のメンバーは、武器を借りるべくリンクスと共に武器庫へ来ていた。さすがに武器職人の町だけあって、武器庫もかなりの広さで、内容も充実していた。ずらりと並んだ様々な武器を見て、一行は感嘆の溜め息をつく。


「ここにあるのは好きに持って行っていいぞ。ほとんどが俺とジェファで作った物だ」


 リンクスは気前よくそう言うが、


「え? バルスが作ったんじゃないの?」


 璃光子はちょっとガッカリ気味に言った。名匠と呼ばれるバルスの武器を見てみたかったのだ。


 それに、リンクスは気まずそうに鼻の頭を掻く。


「オヤジの武器はすぐ売れちまうから残らねぇんだ」


「じゃあ売れ残りなのね」


 璃光子は失言を失言と思わないところがある。当然リンクスはムッとした。


「女の護身用にはこれでも勿体ねぇぐらいだ。どうせ武器なんか使ったことねぇんだろ?」


 リンクスの売り言葉に、璃光子もムッとした。


「なによ。私がどんな気持ちで毎日毎日、あんなクソ面白くない訓練してきたと思ってんのよ。バカにすんじゃないわよ」


 リンクスは鼻で笑った。


「訓練をつまらないと言ってる時点で終わりだな。ホラ。お前にはこれで十分だ」


 そう言うと、そこにあったモップの柄のような棒を取って璃光子に突き付けた。


「な! こ、こんなの! ……っていいじゃない」


 璃光子は一瞬は怒った顔をしたものの、素直にその棒を受け取ると、扇風機のように器用にクルクル回して見せた。音黄野家(おとぎのけ)の武術は、実は棒術だ。璃光子にとってこの棒は、おあつらえ向きだった。


 リンクスは愕然とする。


「え? 棒術できんのか?」


 誤算だ。悔しい。


「そうよ。ホラ!」


 璃光子は軽く掛け声をかけると、棒を使ってリンクスの足元をすくった。


「うわ!?」


 リンクスは何の抵抗も出来ずに見事なしりもちをつく。それに、璃光子は少し驚いた。


「え。やだ、受け身取れないの? ゴメン」


「うっ」


 こんな時は謝られると余計に惨めな気持ちになるのが男だ。その心中を察した男たちは気の毒そうに一部始終を見ていた。


 一方、


「う~ん。なかなか無いなぁ」


 水青は短剣を手にとってはまた置いたりを繰り返して吟味していた。しかし、なかなか希望通りのものが見つからないらしい。


「水青さんはどういうものを探しているんですか?」


 火芽香が探すのを手伝おうと声をかける。


「う~んと、こんな感じのがもう一つ欲しいんだけど」


 そう言って水青が差し出したものは、三日月型で、中国風の薄っぺらい短剣だった。ジャッキー・チェンが使っていそうな剣だ。天蒼家(てんそうけ)の武術は双剣術(そうけんじゅつ)なので、剣は2本いる。


 火芽香は同じような剣が無いかとそこら辺を探してみたが、どれも微妙に形や長さが違ってお揃いとは言えない。


「ここには無いみたいですね。聞いてみましょうか」


 火芽香はリンクスに聞くことにして、歩いて行く。


「リンクスさん。これと同じ物ってありませんか?」


 と、普通に質問をする火芽香。しりもちをついているリンクスに何の疑問も抱かないようだ。


 リンクスは引きつった笑いを浮かべて火芽香を見上げた。


「ああコレ? 簡単だから作っといてやるよ」


 そう早口で言って、リンクスは剣をパッと受け取ると、逃げるように武器庫から出て行った。


「あんなに急いで。いい人なんですね」


 リンクスが逃げる理由を知らない火芽香は、そこにいた璃光子にニコッと笑いかける。


「そうね~ホントね~」


 ウソのうまい璃光子は自然に返した。


 そんな璃光子に、槍太は警戒心を抱く。


(アイツは敵に回せねぇな)


 あの手の本音を隠すのがうまい女は、なんだかんだで男を悪者にして逃げる傾向がある。槍太は経験からそう判断していた。


 そこへ、無事にお目当ての武器を見つけた風歌がやって来た。


薙刀(なぎなた)ひとつしか無かった~。あれ、火芽香まだ決めてないの?」


 風歌は何も持っていない火芽香を不思議そうに見る。火芽香は困ったように眉を下げた。


「実は、ちょっと迷ってて」


「なにが?」


「私は弓を使うんですけど、矢は消耗品ですから、こういう旅ではあまり役に立たないんじゃないかと思って」


「そっか。たくさん矢を持ち歩くのも大変だもんね」


「ええ。一人だけ役立たずで申し訳ないんですけど」


 すると、刀矢が口を挟んだ。


「確か、矢を作る魔法があったと思うぞ」


 火芽香は目をしばたく。


「え? どうやってですか?」


 刀矢は記憶を手繰り寄せながらしゃがんで地面に手をついた。


「え~と、確かこんな風に地面に手をついて……あれ、どうだったかな」


 思い出そうとして天井を仰いだ。すると、その顔を笑顔で覗き込むジェファと目が合った。


「! うわあ!」


 苦手な小悪魔から慌てて逃げる刀矢。


 ジェファは心外だといった感じで眉をしかめた。


「何よ。人をオバケみたいに。どうかした? なんか悩んでたみたいだけど」


 ジェファは火芽香にニコッと笑いかける。


「ええ。実は──」


 火芽香が事情を説明すると、ジェファは「ああ」と言って微笑んだ。


「矢を作る魔法ね。簡単よ。来て」


 ジェファはそう言うと、火芽香に手招きして外へ出て行った。

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