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“魔法剣の秘密”

「武器庫いくか。こっちだ」


 武器を貸してくれると言うリンクスに、一行は浮き足立ってついて行く。大牙、槍太、刀矢は自前の武器があったが、武器職人の作品を是非とも見たいと同行していった。


 しかし、一人だけ残っている。


「ん? 姉ちゃん、オメーさんは行かねぇんで?」


 バルスは今だ椅子に座って項垂れている闇奈に問う。


「いや……私は……武器使わねぇから……」


 闇奈は具合悪そうに途切れ途切れで答えた。


「そうかい」


 気のない返事をして、バルスは闇奈の顔を見ながら、ある人物のことをじっと考えていた。


(やっぱ、ちょっと似てんな)


「大丈夫? 横になったら?」


 ジェファが休憩を促し、闇奈はベッドのある部屋へ向かおうとゆっくり立ち上がる。その時、


「姉ちゃん、黒陽(こくよう)って男知らねぇか?」


 バルスが呼び止めるように言った。


「ああ。反乱軍……のリーダー……だろ?」


 闇奈が答えると、バルスは少し思案したように間を空けて、探るように闇奈を見る。


「知ってんのはそれだけかい?」


「ああ……」


 闇奈は不審に思いながらも、今は聞き返す力はなかった。


「そうかい。おお! 早く寝とけ寝とけ!」


 バルスは急にテンションを上げてシッシッと手を振る。


 自分から話をふっといて、大した説明もなく勝手に切り上げるバルスの身勝手さに不愉快さを感じながらも、とにかく今は休みたい闇奈は反論することもなく、大人しく部屋へと引っ込んで行った。


 一人になったバルスは新しいタバコに火をつけて、ぼんやり宙を眺めている。


 そこへ、闇奈を部屋へ置いたジェファが戻ってきた。


「父さん、いいの? あんなこと言って」


 ジェファは腕を組んで父を見下ろす。バルスは相変わらずぼんやりした表情のまま答えた。


「だ~ってよ。魔法剣は修理きかねぇんだから、作るしかねえだろ?」


「だからって、あんな安請け合いしちゃって。もしあの女の子の血が不適合だったらどうするの? 昔成功したのだって、その時の提供者の血がたまたま適合したからでしょ?」


 するとバルスはフッと薄く笑った。


「今回も適合するさ」


「なんでそう言えるの?」


「ジェファ。オメーもまだまだだなぁ。乳や尻ばっか成長してもいい鍛冶屋にはなれねぇぜ」


 ジェファは少し頬をふくらませて、腕組みを解く。


「とにかく、説明してよ」


 不機嫌そうに言いながら、ジェファはバルスの真正面の椅子に座り、足を組んだ。


 バルスはニヤリと笑みを浮かべると、声のトーンを落として説明を始める。


「おそらくだ。あの姉ちゃんは黒陽(こくよう)の落とし種よ」


「え!? どうして?」


「剣が姉ちゃんの血に反応して魔力を上げたってことは、剣と姉ちゃんの相性がバツグンってことよ。……それは血縁者じゃねぇとありえねぇ」


 そう言う事か。とジェファは納得した。あの折れた剣を作った時の血は、闇奈と血が繋がってるのだ。


「あの剣を作るときに使ったのは黒陽の血だったわね」


「おうよ。魔法剣は、どの魔導士の血でも作れるってもんじゃねぇ。成功する可能性は低いが、あの男の血は完璧だった」


「そうね。あの子が黒陽の子孫なら、絶対成功するわね。あの剣助って男の子も、剣秀(けんしゅう)の子孫かしら?」


「だな。魔導士と使用主の血の相性も、合わせねぇといけねぇぐれぇ絶妙なのが魔法剣だが、今回は役者が揃ってるねぇ。……奇妙なぐらいな」


 ジェファは頷いた。魔法剣は、まず、剣に魔法の力を与える魔導士の血が必要だ。適合する魔導士は少なく、ほとんど成功しない。しかも尚且つ、その剣を他の人間が使う場合、つまり『使用主』をもうける場合、提供者の魔導士と、その使用主との相性も重要になってくる。これだけの条件をクリアする組み合わせは、そうそういない。しかし、500年前に成功したのだ。あの二人の血で。


「黒陽の子孫と、剣秀の子孫。その二人がまた魔法剣を作るなんて、ホントに不思議ね」


「これだから、長生きと鍛冶屋はやめらんねぇな」


 バルスは心底楽しそうに、フッと笑った。

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