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“カサス盗賊団”

 緑が波打つ大草原のど真ん中。男が二人、とある町を目指して足早に歩いていた。


 二人とも頭にバンダナを巻いていて、ピーターパンの海賊を思わせる風貌をしている。


 肩には何か大きな荷物を担いでおり、ぱっと見た感じでは凹凸のあるサンドバッグといった形状をしている。


 二人は無言でせっせと歩いていたが、前を歩いていた男が何か嫌な臭いでも嗅ぎつけたように鼻を鳴らし、立ち止まって荷物を見上げた。


「おい。こいつ、黒魔導士(くろまどうし)じゃねぇ?」


 その言葉に、後ろにいた男は「え?」と言ってサンドバッグ風の荷物に意識を集中させる。


「ホントだ! うわ~気持ちわりぃ!」

 

 男は気色悪そうに担いでいた荷物を投げ捨てた。


 ドサッと無残に転がる大きな荷物。音からすると、軽くは無さそうだ。


「おいおい。別になんか感染(うつ)るわけじゃねぇんだから投げることないだろう?」


 前方の男は呆れ顔で荷物を拾い、再び抱き抱える。


 後方の男は汚い物でも避けるように一歩下がり、激しく首を振る。


「いや! 俺は黒魔導士なんか大っ嫌いだ!」


「じゃあ、殺すか?」


「いや! 黒魔導士の血を浴びると、俺らは溶けるらしいぜ!」


 根拠のない都市伝説を主張する後方の男。


 前方の男は、はぁ? と眉をしかめる。


「じゃあ、ここに捨ててくか?」


「いや! ここは町から近すぎる。目ぇ覚めて来られでもしたら俺らのせいだってバレるだろ! なぁ、さっきのとこに捨てに行こうぜ」


「もうここまで来てんのにか? カンベンしてくれよ」


 前方の男はもううんざりだといった表情で荷物を地面に置くと、そこにあった大岩の上に腰掛けた。


 後方の男がすがるように話を続ける。


「こんなの連れてっても何にも使えねぇじゃねぇか。誰も黒魔導士の女なんか欲しくねぇって」


「でも、こいつまだ黒魔導士なりかけみたいだぜ。オーラが弱いだろ。まだ修験洞(しゅげんどう)行ってないんじゃねぇか?」


 そう言って前方の男は岩から降り、荷物の口を少し開けて、中身を覗き見る。


 直後、グッと息を呑んだ。


「おい。こんな美人見たことあるか?」


 意外な言葉に、黒魔導士嫌いの男も覗く。


 そして、だらしなく口をポカンと開けた。


「いや、ない……」



 荷物の中身は、さっき拉致(らち)された闇奈。気を失って静かにしている闇奈は、確かに綺麗だった。



 二人はしばらく見惚れ、やがてハッと我に返ったように一人が口を開いた。


「これ、密月(みつき)さんに見せてみるか?」


 その提案は余程危険なのだろうか。黒魔導士嫌いの男の方はひどく驚いている。


「え!? 確かに密月(みつき)さんはどの色にも理解があるよな。でも、ボスより先に密月(みつき)さんに持ってったのがバレたら……」



 二人は黙り、考え込む。



「でも、なんかもったいねぇよ。とりあえず運ぼうぜ。このぐらいのオーラなら、誰も気付かないさ」



 決心を固めた二人は、再び闇奈を抱え、密月(みつき)なる人物がいる町へと足早に向かった。



ーー



 一方──。


 心地よい風で波立つ緑の中、四色(よしき)たちは闇奈を探して歩いていた。



「どこへ行ったかもわからんからな~。しらみ潰しに探すしかない。みんな頑張れよ!」


 皆、寝不足にも関わらず四方八方を見渡し、必死に探している。


 闇奈には、たくさん助けてもらった。死なせるわけにはいかない。



 一面の緑の中に、闇奈の紺色の制服姿を探す。


それは大して難しい事では無いように思える。これだけ緑一色なら、違う色があれば目立つ筈だからだ。


にも関わらず中々見つける事が出来ず、みな焦りを感じてきた時。視力のいい槍太(そうた)が、緑以外の異色の落とし物を見つけた。


「あ! あれ! なんだろう。変なのが落ちてるぜ」


 すぐに走って行ってみると、それは靴だった。


 それを見てすぐ、水青(みさお)が声を上げる。


「こ、これ! 闇奈のだよ!」


 それは間違いなく闇奈の靴だった。が、そこは川ではない。ただの草原だ。


 四色は靴を手に取り表情を引き締める。


「ここを通ったということだな。何か手がかりが無いか探すんだ!」


 四色が言うのと同時に、みな這いつくばって警察の鑑識のように辺りを調べ始める。


並々ならぬ連帯感だ。


 まだ一日にも満たない付き合いなのに、もう既に仲間意識が根付いている。


何故か、初対面だとは思えないのだ。


火芽香(ひめか)は、それが不思議だとは思ったが、違和感は感じなかった。



 手掛かりは、割りとすぐ得られた。


「これ、足跡じゃない?」


 璃光子(りみこ)が地面を指差してそう言うと、全員が集まってきた。


 見ると、草が踏まれた痕跡が一定方向に向かって並んでいる。恐らく、足跡だ。数からすると、一人分では無さそうだ。ということは、闇奈以外にも人がいたということか。



 四色は足跡が続いている方向を見つめ、一人で納得したように一つ頷く。


「あっちはアジトのある方角だ。やはり闇奈はそこに。よし行こう。急ぐんだ」



 一行は(はや)る気持ちで足跡を辿り始めた。




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