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story5

 ゴールデンウイーク3日目


 あの日、部活動から帰ってきた長期休暇しかあった記憶のない義兄の多賀武たが たけしがリビングのドアを開けすごい勢いで驚いていた。

 義兄は結構な美形だ。

 どちらかと言えば越後江と同じ感じのクール系で部活は確かサッカー部だったはず。

 一瞬私を誰かも認識してくれず軽くすねて見た。

 母が私の料理を食べたいと言うので料理をすることにした。

 昔はお手伝いさんがいたが母が2年前から秘書の仕事を引退して家事をこなすようになった。

 夕食時には父も帰宅して抱きしめられた。 

 何でも娘成分が足りなかったらしい。

 何だそれは。と思いながらも記憶にある家族の好物を作った。

 武はギャップだが甘いものに基本目がないのでロールケーキを作った。

 楽しく一家だんらんをすごし、二日目は母に色々な所へ連れまわされ洋服や着物を買ってもらった。あと、念のためと言う名目で紅王学園の女子の制服を。

 一応、どうにか説得し高校卒業までどうにか『素敵な殿方』については延期してもらえることになった。

 それと学校を卒業したらもう一生男の真似事は辞めろと釘を刺された。

 後、親しい人にはちゃんと説明しなさいとのこと。

 それはちゃんとするつもりだ。

 ともあれ、今日はゴールデンウィークの3日目金曜日。

 私は女らしい格好でそよかぜ園へ来ていた。

 あの豪雨の災害で川が増水して元々私たちが住んでいた教会は駄目になってしまい、別の教会へ移動した。

 家から近くのバス停まで武が送ってくれた。

 義兄といっても同い年で誕生日が2カ月ほど違うだけだ。

 多賀家に来た時も武は快く受け入れてくれてとてもうれしかったことを今でも覚えている。

 そしてバス停でバスが来るまで話をしていて、

「気づかなくて悪かったな、しばらく見ないうちにまた綺麗になってるもんだからさ」

 なんてことを唐突に言ってきた。しかも顔を赤く染め上げ、そっぽ向いて。

 確かに長期休暇は大抵、武はサッカーの合宿やらなんやらで入れ違いで1年くらいあってなかったけど。

「自分ではそんなことまるで分らない」

 と言っておいた。

 


 色々あって、新しくできたそよかぜ園の前に着いた。

 それなりに立派な教会でそこの前では小さい子供たちが燥ぎまくってた。

 その光景を眺めていると一人の少女が走ってよって来た。

「きれーなお姉さん、ここに何かようなの?」

「んーとね、浜井先生って居るかな?シスターの」

「いるよ!案内してあげる!」

 そう言って私の手を引いて教会の仲へ連れて行った。

 長い廊下の途中で一人の少女にあった。服装的に高校生なのだろう。

「アイリ、その人は?」

「瑞希お姉ちゃん、このお姉さんが浜井先生に用事があるんだって」

「すみません。アイリが燥いでしまって。えっとあなたは?」

 何か5年合わないとずいぶん成長するんだな……

 たぶん一つ歳下の瑞希ちゃん。

 いつも端っこでモジモジしてたあの瑞希ちゃんが立派になったものだ。

「私のこと覚えてないかな?」

「すみません。心当たりがないんです」

「泣き虫で本を読むのが大好きだった瑞希ちゃんに忘れられてるなんて!?」

 よよよ、とちょっとオーバーリアクションをとってみる。

「え!?なんで昔の私のことを……まさかストーカー!?」

 ……妹ポジションの瑞希ちゃんが思い込みの激しい子になってる。

「そんな訳ないでしょうが。知ってる?ストーカーってゆうのは8割以上が恋愛感情のもつれなんだから同姓でそんなこと起さいなよ私は」

「じゃ、じゃあ誰なんですか!?」

 昔っからのチャームポイントのツインテールを揺らしながら言って来る。

「5年前までそよかぜ園にいて一つ年上の明日香って名前なんだけど憶えてないか……」

「え、ちょっと待って、明日香お姉ちゃん?本当に明日香お姉ちゃんなの?」

「まぁ、たぶんね」

「………先生ぇー!?」

 全力ダッシュでどこかの部屋に入っていった。

「……瑞希お姉ちゃんどうしたんだろ?」

「サ、サァネ」

「お姉さんのその喋り方『片言』って言うんだよね!」

 外見予想年齢12歳くらいの少女に無邪気な笑みで突込みを食らう。

「え、明日香さん!?」

「浜井先生お久しぶりです。……老けました?」

「……(無言で頭を殴る)」

「すみません。まだぴちぴちのアラサ―ですもんね!」

「相変わらず、無駄に口は達者のようですね」

 アイアンクロー、もといブレインクローを食らいながら笑う。

 昔と変わらない、無駄な冗談から始まる会話。

 いつも先生をからかって遊んでいた。

 先生が来たのが私がこの孤児院に来て3年目……つまり7歳の時のことだ。やたら若いピチピチの綺麗な人だと思ったらそのまんま年齢20。今年でちょうど30だ。

 先生が来た理由としてはお伯母さんの仕事に興味を持ち、自分もこんなところで生活をしたいと思ったのがきっかけだそうだ。

「本当に5年も会わないうちにこんなに綺麗になっちゃって……」

「大して変わりませんよ。先生の老けっぷりほどでは」

「まだ言うか。私はまだアラサ―だ」

「大丈夫ですって。先生美人なんでお相手も見つかりますって!アイリちゃんもそう思うでしょ?」

「うん、せんせーまだまだ若いよ。25歳にしか見えない!」

 ……アイリちゃん大人びてないか?言うこと上手だし。

「ほら」

「ほらじゃありません!まったく、内面は変わってないんですね」

「ええ、それはもう先生をからかい、からかいぬいたこの性格はいつになっても消えることはありません。……先生の前では!」

「はぁ、少し話をしましょう」

「分かりました。アイリちゃん、瑞希、また後でね」

「ありがと、明日香お姉ちゃん」

「それで結局、お姉さんって何者?」

「それは説明してあげるから、あっち行ってよっか」

 そう言って二人と離れて浜井先生とどこか懐かしい部屋に入っていった。


「本当にしばらく会わないうちに綺麗になったわね」

「ありがとうございます、浜井先生」

 この五年間でそよかぜ園であったことを聞いた。

 もうアルバム出して語り始めるものだから苦笑い。

 同い年の悠馬は去年有名な学者に引き取られ、たまに顔を出してくれるそうだ。

 それから何人かは有名な高校へ特待生で入ったり、中学校の全国大会で優秀な成績を残した子もいるらしい。

 先生はものすごく鼻が高い気分らしい。でも、がんばったのは本人たちだから少しでも支えになってあげることが出来てたならそれが一番幸せだと言っていた。

「それも、これも、明日香さんが中学校、高等学校で常に上位の成績を取っていると聞いて根性見せてやるよって、悠馬君が意気込んだ結果、いい成績を残して後に続いて行っただけなんですけどね」

「その成績云々は誰が?」

「麻耶さんに決まってるじゃない」

「……お義母さん何やってくれちゃってるの!?」

「ホント幸せそうでよかった」

「先生も早く幸せになってほしいものだとこの孤児院の年長者的には言いたいです」

「それについては………」

 そこで言いどよんでしまう先生。

 ……頑張れ。心の底から応援しています。

「そういえば玲奈を覚えていますか?瑞希と仲の良かった」

「はい、あの銀髪が特徴の…………ちょっと待ってください。まさか、紅王学園に進学したとかないですよね?特待で」

「知ってたんですか?よかった、たしか悠馬君もその学校についこの間転向したと言ってますし、たしか明日香さんもその学校でしたよね?」

 ………………………………………ちょっとまって、思考がオーバーヒートしてるから。

 え?あの浜井玲奈ちゃんはここでの子で、悠馬は有名な学者に引き取られ、紅王学園に転校してきた………。 

 何か色々やらかしてる私!?

 ヤバいです、完全に浜井ファミリーを騙してしまっています。

 ちゃんと説明しないと……どう説明したものか……。

「大丈夫ですか?明日香さん」

「大丈夫です。そろそろ、瑞希とかに挨拶して帰ります。あ、後ケーキ焼いて来たのでよかったら食べてください」

「それは残念ですが、あの子たちも喜びます」

 そう言って、瑞希とかと軽く話をして、夏休み頃また来るように約束を括り付けられてしまった。




 帰路に立っても、一つのことで頭がいっぱいだった。

 あの親友みたいによく遊んだ悠馬が転校してきた?

 つまり越後江があの悠馬なのか?

 ぼーっとあるっていると誰かにぶつかった。

「すす、すみませんでした」

「……あ…………」

「え?」

 ぶつかった人に頭を下げ、謝るが、罵声とかは飛んでこなく、何か驚いたような声が見こえた。

 ふと顔を見上げれば、そこには現在の悩みの種、越後江悠馬がいた。


微妙な展開ナウ

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