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story4

愚だ愚だ感が拭えない。


取りあえずこの後から主人公が少しずつ女らしくなっていく予定です。


 ゴールデンウィーク初日。

 実家まで帰ってきた。周辺にそれと言った住宅はなく、ちょっと山の中に入ったところに大きな和風な屋敷があった。

 それ今、家の前でぽつんと立っている。

 何と言うか、嫌な予感がする。

「どうしたのかしら。明日香さん」

 ゾクッ、背中から嫌な汗が流れ始めてきた。

 油の切れたロボットのようにぎこちない動きで後ろを向くと、着物を着た美熟女。またの名を我が家の絶対的君主。つまりお義母さんの麻耶さんがいた。

「ただいま、お義母さん」

「お帰りなさい、明日香さん。5月の始めとといえ冷えてしまいます。」

 お義母様、目が笑っておりませんがどうしたのでしょうか?

 気が付けば私の体はガタガタと震えていた。


「明日香さん。そのやたら短い髪はどうしたのかしら」

 我が家のリビングと言うべき部屋。大きなテーブルが置いてあるが足が低く、その周りに座布団が引かれている。

「これはウイッグ、俗に言うかつらです」

 そう言ってウイッグとネットを外す。

 最近のウイッグはそれなりに通気性がいいから楽だ。

 長い髪が正座をしている足の裏までかかる。

「髪の手入れはしっかりとしているようですね」

「ええ、一応は女子なので」

「はぁ、明日香さん。このような休暇には帰省していただいていますし、その度に申しあげていますがあんたは立派な女の子。わかっていますか?」

「自覚はあります」

「無いからこういっているのですよ?そもそも毎度毎度繰り返し申し上げていますがあなたは殿方の様な格好をし、友人たちを騙しているのですよ?」

「それは……」

「何も言い返せないのですね。私は貴女の熱意で渋々了承しました。あの学校も私立ですし、私の従姉弟が経営してる私立こともあり、そのような横暴が聞いているのです。公立ではこうはいきませんよ?」

 ……毎回の如くお義母さんの行っていることは正論だ。

「私はそろそろ本気で殿方の装い辞めさせようと思っています。それが嫌ならば夏の長期休暇までに立派な殿方を捕まえてきなさい」







 ……What?






「お義母さん、今何と……」

「幸い、あの学園は家柄的にもよい殿方が多い事でしょう。別に特待生として入学してくるような優秀な一般家庭の方でも構いません。私は娘の将来が心配で仕方がないのです。わかってくれますか?」

「確かに将来このまま独身と言う線もありますが、別に私はそれでも構わないと思っていr「つまり私たちが生きているうちに孫の顔は拝めないと」いえ、人間どう転ぶのかわからないので私のような女をもらってくれる物好きがいると思います」

 私はある意味傷物だし(背中の傷)、神経も普通に男子としてやっていけるような図太さを持っている。

 顔はそこそこ良いとは思うがあの有名企業の御坊ちゃん御嬢さんがいる学校では精々真ん中の方だと思う。

 たぶん、ブス専とか心優しい物好きがいるだろう。

 そもそも『恋』と言うものをいたことがないのでいまいちそういうことが判らない。

「はぁ、今あなた自分の容姿についてどう思っているんですか?まさか紅王学園で精々高く見積もっても中くらいと思っていませんよね?」

「まさにその通りだと考えておりますが……」

「あなたの頭は小学生以下ですか?あなたはたとえ殿方の真似事をしていたとはいえ、顔立ちはしっかりと女性へとなっているのですよ。それと勘違いしてる様なので言っておきますが、あなたは娘と言う贔屓目を除いても美人と言う部類に入りますよ」

 殿方の真似事って……

 あれ?美人と言う部類?

「あなた冬休みに家に帰省した時ナンパにあったと言ってましたよね。その時あなたは『困ったモノ好きもいるんだね』と言ってたけれどもその声をかけた殿方の目が惜しかった訳ではありません」

 そういえば、少し前にお姉さんぽいとか、美形とか、女顔とか、女装したらこの学校で一番人気位になれるだろとか………思い当たる節が多すぎるのだけれども。

「あなたはもう少し自分に自信を持ちなさい。そもそもあなたはなんで殿方の様な格好をしてるのです?」

「それは成績で1位になるため、女子に対して男子の方が有利だと」

「この際だから言っておきます。愚だ愚だと言えなかった私たちにも責任がありますが、別にそよかぜ園を運営していくうえで別にあなたが成績上位でいる必要は無いのよ」

「……それってどういうことですか?」

「確か私たち夫婦はこういったはずです。『高等学校卒業まで、必ず成績1位でいること。それが出来なくなったらこちらの言うことを聞いてもらう』と。私たちは遅くとも中学卒業間際にはもう一位を取れなくなると思ってたのです」

 

 え?


「そうしたら、『もっと甘えなさい。家族なんだから』と言うはずだったのです。それがあなたは今現在までちゃっかりと成績は常に一位を取り続けています。そのせいで言うタイミングがなく、こんな残念な説教紛いで伝えることになってしまってごめんなさい」

 つまり、私が常に一位でいることは私の勝手な勘違いであって、途中で挫折していても何らそよかぜ園には影響がなかったと?

 …確かにお義父さんとお母さんは『高等学校卒業まで、必ず成績1位でいること。それが出来なくなったらこちらの言うことを聞いてもらう』と言っていた。確かに言うことを聞いてもらうと言う言葉に具体的な指定はなかった。

「一応、聞かせていただきますがその具体的な言うことを聞いてもらうと言うことの指定は?」

「もちろん決まっているじゃない。本当の家族のように甘えてくれとか、もう少し楽をするということを覚えなさいとか、パパ、ママと呼びなさいとかに決まってるじゃない」

 その言葉を聞いた後、目から涙が出ていた。

 俯いてボタボタと涙を流してしまう。

「え、あ、ああ、明日香さん?本当にごめんなさい、今の今まで言えずにいて」

「そのことは私が勘違いしてただけなのでいいんです。ただ、私がもし失敗してもそよかぜ園が無くなることがない事だけがうれしくて」

 本当にそれだけだ。

 この明日香と言う少女にとって掛け替えのない場所であってたくさんの家族と過ごした思い出の場所なのだ。

 自分の家が、今まで過ごしていた記録が、場所がなくなる。それだけは嫌だったからだ。

 ―――何か言葉を続けようとしたんだ。けれども女性特有の柔らかさでそれは言えなかった。

 後ろからお義母さんに抱きしめられた。

 小さい頃、そよかぜ園の年上と喧嘩をして泣いてことがあった。

 その度にいつもシスターの浜井先生が頭を撫でてくれた。ちゃんと怒ってくれた。

 その時と同じ暖かさなんだ。

「ありがとう、お義母さん」

「ええ。ごめんなさい、明日香」

 昼近く、義兄が帰ってくるまでこれは続いた。

今度はGW3日目です。

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