出会い
私は昔から動物が好きで、友達や近所の人が犬や猫を飼っているのを見て、いつか私も飼いたいと思っていた。
母親と出がけに動物達を見かけるとわざとらしく、可愛いなあ、良いなあ、と言ってからこれまたわざとらしく母親を見上げたものだ。
そうして何年か経った春過ぎ、私の十数度目の誕生日を目前に漸く両親が根負けした。犬を飼うことを肯んじたのである。
彼女と私が出会ったのは大阪北摂、能勢という山奥にあるブリーダーショップだった。
ブリーダーショップにはいろんな種類の犬がいた。ダックスに限っても色違いで4匹ほどいたと思う。それでも私は直感した。一目でこの子だ、と思った。
前述の通り犬種はダックス。カラーはブラックタン。由緒正しい血統書付きの女の子だ。
知らない人間が怖くて震えているくせして、それでも好奇心が勝りこちらを矯めつ眇めつしている。
その様がとても可笑しくて、可愛らしくて、父も母も直ぐにその仔犬の虜になった。
言葉は必要無かった。私は両親を見上げ目で問う。両親は微苦笑を浮かべながらただ頷く。この子で決まりだ。
「これからよろしくね」しゃがみ込んで掌をそっと仔犬の口元へ持っていく。
仔犬はゆっくり臭いを嗅いでから、そろっと指先を舐めた。