第7話:ダブルマイナス1デート?
多忙でやっと続きを書くことが出来ました。
「そこの2人、何をしている?」
やばい! この声はさつき先輩だ! 女の子と腕を組んで歩いているのみならず、
その女の子がさくらなんだから、生命の危機が危ない!
「おにぃちゃん…危機…危ない…カブってる」
「冷静すぎ! つか心を読むな!」
などとコソコソと話をしている間に、さつき先輩が近くまで歩いてきた気配を感じる。
「どうした? こちらを向きたまえ!」
「…はい」
「それから、生徒手帳を出…!?」
振り返った俺たちを見たさつき先輩の動きが停止した。
しばらくしてグギギという感じで再起動したさつき先輩の額に、青筋が数本浮かんで来たのが見えた。
これは逃げるべきか…いやさくらがいるから逃げ切れる自信がない…。
何かうまい言い訳が……都合よく出てくる訳もない…。
「き、きさま…!」
今度は入院コースかも知れない…仕方なく罰を受ける覚悟を決めて、目を瞑った。
「ずるい!」
「ごめんなさ……は?」
勢い良く下げかけた頭を止め、顔を上げるとかわいらしく頬を膨らましたさつき先輩がいた…。
「純…を独り占めはずるいぞ! さくら!」
「あの…もしもし?」
「おにぃちゃんは…まだ…誰のものでも…ない! 呼び捨て…ダメ!」
さくらは俺の腕を離し、さつき先輩と対峙する。っていうか俺を置き去りにしないで!
「私は先輩だぞ? 呼び捨ての何が悪い?」
「先輩…後輩なら…苗字で呼ぶ…べき」
「ぐっ! きょ、今日は随分と反抗的では無いか?」
「ちょっと…2人とも?」
「わたしは…お姉ちゃんの…奴隷じゃない!」
「…」
すげぇ、さつき先輩を押しきった!
「いこ…おにぃちゃん」
さくらは再び腕を組むと先導するかのように歩き始める。
数メートル歩いたところで、停止していたさつき先輩は再び再起動を果たした。
「ふふん…そういうことなら…」
さつき先輩がなにやら呟いた、そしてこちらに向かって走って来るなう!
嫌な予感しかしないなう!
「私はこっちだ!」
そう言うと、さつき先輩はさくらが居ないほうの腕を取り、自分の腕を絡めてくる。
「えーと…」
左右からの柔らかい感触に、思考が追いつかない!
これが伝説の胸"で"揉まれるというやつですか?
「これがさえちゃんが言ってた、胸で挟むというやつだな!」
「違うから!」
…
「おにぃちゃん…あのお店…かわいいね?」
「そうだね」
さくらが指差したのは、女子ウケが良さそうな綺麗なカフェだった。
「純くん、あの店…か、かわいいね」
「そ、そうですね…」
さつき先輩が指差したのは、普通の居酒屋…。
「あ…あれ…おいしそうだね…おにぃちゃん」
さくらが指差したのは、たこ焼きの屋台だった。
「おぉ! 今度食べにこようか?」
「うん!」
さくらは勢い良くコクンと頷いた。
「純くんあれ、お、おいしそうだね」
さつき先輩が指差したのは、焼き鳥屋……っておっさんか!
「そ、そうですね…」
「むぅ! 何故私には、食べに行こうと誘わないのだ?」
高校生が焼き鳥屋って…普通行かないだろ!
「い、いつか食べに行きましょう」
「うん!」
さつき先輩は勢い良くコクンと頷いた。 これ絶対さくらに対抗してるよね?
「おにぃちゃん…向こうに…行きたいお店…ある」
「ん? じゃあそっちに…」
「んん、私はあっちに、純くんを連れて行きたいお店がある」
えーと…なんだこれ? 新手の拷問だよね?
「わたし…向こう…行きたい!」
「私は、あっちだ!」
「いだだだ!」
見事に左右に方向が分かれていて、体が引き裂かれそうだ!
「向こう!」
「あっち!」
「いだぁああ!」
これあれでしょ? 最後どっちかが腕を離し、結局腕を離したほうを取るってやつ。
「向こう!」
「あっち!」
「ひぎゃあぁああ!」
「向こう!」
「あっち!」
「もぎゃあぁああ!」
一向に離れる気配も無く、俺の腕だけが千切れそう…。
「っていいかげん離せ!」
「きゃ!」
「わ!」
突然強く引っ張ったので、転びそうになる2人。
「危ないではないか!」
さつき先輩の後ろではさくらもうんうん頷いている。
「今日はさくらの行きたい店に行く」
さつき先輩の後ろでさくらがガッツポーズをとっている。
「なっ!」
対象的にさつき先輩は憤怒の表情。
「この次は、さ、さつきの行きたい店に行く」
「…」
命がけの名前呼び捨て作戦が功を奏して、さつき先輩を黙らせることに成功!
「分かったな? さつき? 返事はどうした?」
調子に乗ってみた!
「はい…あなた…」
やりすぎちゃった!
…
「おじゃまします」
さつき先輩たちと行った店は雑貨屋で、さくらは何が気に入ったのか、
お酒を入れるとっくりの形をしたキーホルダーを買った。
それを早速カバンに装着して、ご満悦の表情を浮かべている。
さくらが買い物している間、さつき先輩はうっとりと俺の顔をずっと見つめていた。
そしてそのまま、さくらたちの家に遊びに来たという流れです。
ここに来る間にさつき先輩も正気?に戻って一安心。
「さぁ、入りたまえ」
促されるまま招き入れられた部屋を見渡すと、ぬいぐるみがそこら中に飾ってあり、
えらくかわいらしい女の子の部屋だった。
こんな女の子らしい部屋は、どう考えてもさくらの部屋だろう。
「そんなに女の子の部屋をジロジロ見るな、恥ずかしいではないか」
妹の部屋をジロジロ見られて、姉として恥ずかしいということかな?
「まぁ適当に座ってくれ、私の部屋だから遠慮は要らない」
そうね、さつき先輩の部屋だし、遠慮は…
「えぇぇええええっ!」
「何をそんなに驚いている?」
「だってこの部屋…」
「私だって女子高生なのだから、別に驚くこともなかろう?」
似合わないと言ったら命が無くなる!
「そそそそそうですよね」
「ちなみに隣がさくらの部屋だ」
隣の部屋はドアが開いていて中が見えていたけど、あの殺風景な部屋がさくらの…。
なんだろう、親から引継ぐ"分量"間違ってるよね?
「ちょっとお茶でも持ってくるから、待っててくれ」
「あ、お構いなく」
「ふふ、あ、そのタンスの一番下の引き出しは開けるなよ?」
「はい…」
何そのピンポイントの注意事項。
まぁ、下着が入っているのでしょうが。
「いいな、絶対だぞ、絶対開けるなよ?」
はぁ…開けろってことか…つーか普通恥ずかしいだろうに、まぁ開けたていにしておけば分かんないよね。
ちなみにさくらは一旦この部屋に来たあと、着替えてくると言って出て行った。
「お姉ちゃん…自分の部屋の前で…何してるの?」
「ばか! さくら、しずかに!」
「変なの…おにぃちゃん…お茶…持ってきた…よ」
さくらはトレイに3つのコーヒーカップと、お茶菓子を乗せて部屋に入ってきた。
ははん! さつき先輩は俺が引き出しを開けるかどうか、覗いて確認していたんだな。
さくらの後ろから、顔を赤くしたさつき先輩がしれっと入ってきた。
「何故…開けない?」
「…」
え? なんでこんなとこだけ精神力強いの?
「健全な男子なら、美少女の下着を漁るだろ? そしてコッソリ持って帰るだろ?」
「自分で美少女って言っちゃいますか…」
「おにぃちゃん…ツッこむの…そこ?」
「だって…」
健全な男子は、開けて漁ったりしないだろ…。
少なくとも俺は、普通なら開けて見るだけで、漁らないと思う。開けるんかい。
今回は小動物的な危機探知能力が働いたというべきだろう。
まぁ、さくらのなら間違いなく漁って、コッソリ持って帰るけどな!
「おにぃちゃん…さくらの…パンツ……欲しいの?」
やべぇ、顔に出てたか。
「いや、その…」
「いま……脱ぐ?」
「脱がない!」
「脱ぎたてで温かいパンツとか………そんなのダメだよ」
「純くん今少し想像したな?」
傍観していたさつき先輩がチャチャを入れてきた。
「ソ、ソンナコトナイデスヨ」
「正直なやつだ」
さつき先輩はいやらしい感じで、ニヤニヤしている。
「っていうかさくらをそういう目で見たくないなって思って」
「そうだな…では、私が脱ごう」
「脱ぐなぁ!」
なんでこの姉妹はこうすぐ脱ぎたがるのか…露出狂の気でもあるの?
しかも本当に脱ごうとするから、ちょっと白いのが見えちゃったよ!