第7話:体育祭3
次の競技は障害物競走で、エントリーされているさくらが何故か嬉々として入場門に向かって行った。
今のところさえちゃん先輩の策略(陰謀?)は感じない。
障害物競走では、まず最初に無難な感じで網を潜るトラップがある。
普通はすんなり通れるトラップなのだが、目の前には綺麗に網に絡まる恍惚の表情のさくらがいる。
「やぁ…」
『やぁ…』じゃねーよ! どうやったらそんなに綺麗に整った絡まり方になるんだよ!?
「さくら! 早く次行け! 負けるぞ!」
「…あい」
そこからコンマ数秒で網のトラップを抜けるさくらのスペックに脱帽です。
次は3m四方で深さは30cmに掘られた穴に水が満たされていて、そこに橋のような感じで平均台が置いてあるトラップだ。。
颯爽と走ってきたさくらは平均台の数m手前からジャンプして平均台の上に着地。
いや平均台の高さは40cmくらいだから、別にジャンプしなくても乗れるんだけどね。
でもあの感じなら落ちることは…。
「ひゃあ…」
『ひゃあ…』じゃねーよ! 一旦平均台から水の中に降りてそこからワザとらしく転ぶなよ!
体操服が透けてブラが…見えねーじゃねーか! 良く見ると学校指定のスクール水着が透けていた…。
「さくら! 早く次行け!」
「…あい」
さくらは平均台の上に再び上がると、危なげなく走っていった。むしろまったく落ちそうにない。
次は3m四方で深さは10cmに掘られた穴に白い粉が敷き詰められていて、そこに橋のような感じで平均台が置いてあるトラップだ。
もうどうなるか誰でも予測できるな…。
颯爽と走ってきたさくらは平均台の数m手前からジャンプして、白い粉にヘッドスライディングした。
「ってなんでやねん!」
「~~っ!」
さくらは粉まみれになりながら嬉々として白い粉の上でゴロゴロ転がっている・
「さくら!」
「…あい」
ピタッと動きを止めたさくらは、平均台の上に再び上がると、やはり危なげなく走っていった。
続いてのトラップは15段の跳び箱。ってどこからそんなの持ってきた!
これは踏み切り板をうまく使って飛ぶ必要があり、さくら以外の競技者はここで苦戦していた。
だがさくらは驚異的な身体能力でこのトラップを1回でクリアして行く。胸の2個の重りも何のそのだ。
次の2mの壁登りも難なくクリアする。 さすがさつき先輩の妹だ。
続いてのトラップは、ローションが敷き詰めてある5mの床だ、ってこれ何の番組ですか?
水に濡れ、白い粉まみれになったさくらは、当然今はローションまみれです。
白い粉とローションが混ざって、白いヌルヌルまみれのさくらがなんとも言えないくらいエロい。
ローション床に併設するように足湯が設けてあるが、これは足のローションを取ってヌルヌルによる転倒を防ぐためだ。
そして最後のトラップは、何故か体育教師たち3人。
「織手先生、摩周先生、教師ジェットアタックを仕掛けるぞ!」
さくらはジャンプし、迫りくる体育教師たちの最初の凱野先生の顔を踏みつけて進む。
「おれを踏み台に…!」
次の摩周先生の伸ばした手を潜り抜け、最後の織手先生のどてっぱらに正拳突きを食らわせて倒した。
「いや倒すなよ!」
さくらは後続が来ていないのを確認して悠々と1位でゴールテープを切った。
…
先の障害物競走に出ていたさくらは、学校側で用意したシャワー室でシャワーを浴びてさっぱりした顔で戻ってきた。
「おにぃちゃん…頑張って…きた」
「そうだな、頑張ったな」
俺は髪がまだ乾ききっていないさくらの頭を撫ぜてあげた。
「…えへ」
「次は二人三脚か、千歳とさくらもだろ?」
「「うん」」
男女ペアの場合、誰の目も憚ることなく女の子と密着できる夢のような競技だ。
男男ペアの場合は、地獄でしかないが。
「じゅ、純くん、そんなの押しつけないで!」
千歳は頬を真っ赤に染めて恥じらいながらも抗議してくる。
「いやいや、脚をくっ付けただけだし! それにこうしないと結べないから!」
千歳は立ったままで、俺だけしゃがんで2人の脚を赤い布製の紐で結ぶ。ちなみに俺が右側です。
「よし、スタートラインとこまで行こうぜ」
「うん、あ、ちょっ…きゃあ!」
俺は脚が結ばれていることを忘れて普通に歩き出したら、千歳が大股開きになってました。
「千歳、はしたないな!」
「純くんのせいでしょ!」
しょうがないので千歳の横に戻って、決め事を行う。秘め事じゃないよ?
「じゃあイチで結んでないほうの足を前にだして、二で結んでいるほうの足を前に出す」
「う、うん」
「とりあえずゆっくり進んでみるから、じゃあ、腰というか脇腹に手を回すぞ?」
「え…?」
何故か驚いた顔をする千歳。
「いや、そうしたほうが安定するし…」
「そ、そか…」
千歳が緊張なのか身体を固くするので、こっちも何か緊張する…。
「ひゃん!」
「お、おい、変な声だすなよ!」
「だ、だって、くすぐったいし…」
そう言って頬を染める千歳がなんか可愛い!
「じゃあここで休憩して行こうか?」
俺は校舎を指差しながら千歳に囁く。
「はぁ!?」
「いや、ラブホごっこ…」
「すな!」
「いてぇ!」
千歳の左の拳が俺の腹にめり込んだ。
「じ、じゃ、ゆっくりな?」
「うん…」
「イチ…二…」「イチ…二…」「イチ…二…」
「よし、じゃあ少しずつ早くな?」
「イチ…ニ…」「イチ、ニ…」「イチ、ニ」「イチ、ニ」
「こんなもんかな」
『第1走者の方々はスタート地点まで移動してください』
ちょうどアナウンスがあり、スタート地点までそのまま移動する。
「あら、純ちゃん」
「おー、よしじゅん、来たな?」
「千代先輩いぃ!?」
なんと千代先輩を抱えあげたさえちゃん先輩が居た。
しかも千代先輩の足首と、さえちゃん先輩の艶めく太ももが結びつけてある。
「え? それ反則では?」
これだと千代先輩を抱えてるとは言え、さえちゃん先輩は普通に走るだけじゃん!
「違うわよ? 脚が地面に設置していなけれないけないなんてルールは無いもの」
「それは…そうでしょうが」
千代先輩は規格外に小さいから、そういうの考慮されてないんだろうな。
「よしじゅん、せいぜいがんばりたまえよ」
「あんた何もしないじゃん!」
っていうか色んな意味で浮いてるじゃん!
「失礼だぞ、落ちないようにしがみついたり…………………お、落ちないようにしがみついたりするんだぞ!」
「はぁ…」
何か頭痛がしてきた。
そしていざスタートしたが、千代先輩たちはそれほど早くない、むしろどっこいどっこいだ。
そりゃそうか、いくら軽い千代先輩とはいえ、人1人抱えて走るのはかなりの重労働のはずだ。
ちなみに白組の選手は、1歩踏み出すごとに転んでいるので、最下位はほぼ決まりだ。
「ふん、なかなかやるな」
「そっちこそ」
ほぼ同列のまま進んで行く俺たちに周りから歓声が上がる。
誰が悪いということはなく、些細な事が勝敗を決した。
「よし、さえ! ラストスパート!」
と言って千代先輩はさえちゃん先輩のおっぱいをぽよんと叩いた。
その揺れに一瞬目を奪われたのがいけなかった、リズムが乱れたのだ。
「うお!」
「きゃあ!」
俺は千歳と一緒に前のめりに盛大に転んだ。
そして気が付くと何がどうしてそうなったのか、千歳の股間部分に顔を埋めていた。
「ちょっ…やぁ! 変態!」
「んばっ! 誰が変態だ! いつか千歳にも普通のことだと分かる…」
「何が!?」
…
結局俺たちは2位でゴールテープを切った。
「もう最悪…」
俺がてへって顔したら、もの凄い睨まれた。
「でもさ、セクハラは私にしろとか言ってなかったっけ?」
「言ったけど、場所を選びなさいよ! ひ、人気のないとことか…」
それもうセクハラじゃなく、する気マンマンなときだよね? とは怖いから言わない。
「おにぃちゃん…次…私…早く」
「お、おう」
そうだった、第2走者も俺だった!
「おにぃちゃん…もっと…キツく…」
「いやいや、これ以上キツくしたら、脚がうっ血しちゃうから!」
さくらは立ったままで、俺だけしゃがんで2人の脚を赤い布製の紐で結ぶ。ちなみに俺が右側です。
一瞬、ラッキースケベ狙いで肩に手を置くか、脇腹に置くか迷い、結局脇腹に置いた。
「ひゃ…安定…しない…もっと…ギュって」
「いやいや、それは理性がやばくなるから」
さくらとのペアだと自然に歩いていけるから、相性が良いのかと思ったけど、
さくらが俺の歩調に合わせていることに気が付いた。なんというスペックの高さだ。
スタート地点に行くと、唯先輩と結衣先輩の生徒会庶務コンビがすでに準備万端で待っていた。
「「よしじゅんくん、夜のお誘いはまだですか?」」
「ねーよ! つーかハモるな! 愛称にくんをつけるな!」
「「それを言われても…」」
「いや、それ、キリがなくなるからやめて…」
「「負けないからね」」
「はいはい」
唯先輩たちは息ぴったりだけど、こっちにはさくらというウェポンを搭載しているからな。
長くなりそうなので、一旦、ここで切ります。
なんかさくらが人間離れしていっている気がしないでもない^^;