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In Girls Interval  作者: Satch
第1部
17/33

第17話:履かないは都市伝説

最後の花火が夜空から消えると、夏祭りもお開きムードが漂い、

浴衣姿のお姉さんたちも三々五々帰り始める。


「んじゃ、俺らも帰りますか?」


「ああ、そうだな、私もいい加減コレを背負ってるのがキツくなってきたし…」


コレというのは爆睡している千代先輩のことだ。


「ぬー! ならば同士になれ! あれ? 夢?」


前半のセリフが意味不明だけど、千代先輩がお目覚めになられた!


「よしじゅん、次どこ回る? 近所すくい?」


「何をすくうつもりだ! それを言うなら金魚ですよ?」


「お腹空いたぞ!」


「聞けよ!」


千代先輩はさつき先輩の背中から降りると、目を輝かせ俺の手を引っ張る。


「いやいや、もう帰りますよ?」


「んなっ! まだ来たばかりだぞ?」


「いやいや、もうだいぶ経ちますよ?」


「っ!?」


千代先輩は千歳の携帯の時計を見て愕然としている。


「私、記憶喪失になっちゃった…」


千代先輩は目に涙をいっぱい溜めてブルブル震えている。


「千代先輩? 着いた早々から寝てましたよ?」


「私は寝てなんかない!」


「いやいや、さっき『夢?』って言ってましたよ!」


「あ…」


ようやく寝てて夢まで見ていたことを思い出したみたい。


「なぜ奴は同士にならなかった?」


夢と現実が混同してる!


「いや俺に聞かれても…」


「とにかくお腹すいた!」


「…」


「お姉ちゃん、はい、フランクフルトとわたあめとりんご飴」


千歳がこうなると予想して買っていてくれたようだ。


「おお! やきそばは?」


「う、そ、それは、売り切れてた…」


千歳はチラっとさつき先輩を見てお互い顔を赤くしている。

そういえば何故か2人で食べさせあってたよね。


「そっか…じゃああきらめよう…」


信じちゃった!?


「あ、ねぇねぇ、このまま帰るのも寂しいし、家でお茶しない」


千歳が珍しくまともな提案をしてきた。明日は雪が降るかもしれない。


「さくらちゃんたちは、帰りはそこの単細胞が送っていけば大丈夫でしょ?」


ははは、俺がもし単細胞って言われてたら泣くよ? 泣いていい?


「そうだな、か弱い乙女2人では心細いしな」


「か弱い!?」


さつき先輩が? ってかさつき先輩1人で、1個小隊なみだと思うけどね。


「よし! 新しい属性が目覚めるまで、竹刀で叩くとしようかな…」


「やめて! ごめんなさい!」





「お、おじゃましまーす」


いつ来てもこの執事さんと、メイドさんたちの整列に慣れないな…。


「純くん!」


「綾乃ちゃん! 会いたかっ…おぶっ!」


綾乃ちゃんに抱き付こうとしたら、正面からさつき先輩の踵落とし、

その下で千代先輩の正拳突き、左から千歳のストレートパンチ、

右からはさくらの腰へのキックが決まっていた。


っていうか何この絶妙なコンビネーション、練習でもしてるの?


「じゅ、純くん大丈夫!?」


崩れ落ちる俺に綾乃ちゃんが心配そうに声をかけてくれる。


「お姉ちゃん…パンツ…履いて…無い…」


「そうだった! 純くん? 見てないよな?」


「見て…ません」


見えてたかも知れないけど、そのあとの脳への衝撃で覚えていない。

それに千代先輩のパンチがもう少し下だったら、今ごろオネエ言葉を使ってるとこだよ!





千代先輩の部屋のソファーで寛いでいると、綾乃ちゃんが紅茶とクッキーを持ってきた。


テーブルを挟む形で置かれているソファーには、千歳と千代先輩、

さくらとさつき先輩が座っていて、俺は1人がけのソファーで所謂お誕生席に座っている。


綾乃ちゃんはテーブルの中央にクッキーの乗った皿を置くと、

慣れた手付きでカップに紅茶を注いで、1人1人の前のテーブルに置いていく。


最後に俺のカップを置いたとき、フワフワと揺れる綾乃ちゃんのスカートが気になった。


「っ!?」


気になったので捲ってみた!

期待を裏切るようで悪いが(誰の?)、綾乃ちゃんはスパッツを履いていた…。


(こら! なにするんですか…!)


小声で叱る綾乃ちゃんに、幸い他の4人は紅茶とクッキーに夢中で気付いてなかった。


(スパッツはないわー)


(何で!?)


「何をコソコソ話してるのよ?」


千歳がそんな俺たちにいち早く気がついた。何か特殊な訓練をしているに違いない。


「別に? 綾乃ちゃんがスパッツを履いてたからさ」


「それ言っちゃうんですか!?」


綾乃ちゃんは呆れた表情で俺を見る。


「ふうん、で、どうして純くんは綾乃がスパッツ履いているって知ってる訳?」


千歳は絶対零度の冷たい視線でジロリと睨む。


「あ! え、えーと…と、透視?」


(苦しい!)


綾乃ちゃんは目をバッテンにして身悶える。


「ふうん、じゃあ他の人も透視してみてよ?」


「い、いいよ、えー…さつき先輩は履いてない」


さつき先輩は手で胸と下半身を隠すようにして真っ赤になっている。


「それさっき聞いてたじゃん!」


「い、いま、本当かどうか透視したんだよ! 次、さくらは…」


さくらを見ると、さくらはさつき先輩の袖をそっと触った。


「さくらも履いてない!」


「えぇ!? さくらちゃんどうなの?」


さくらはコクンと頷いた。って本当に履いてなかったの!?


「お、お姉ちゃんは?」


「白!」


「即答!?」


千代先輩は裾を気にしないから、さっきからチラチラ見えてました!


「じ、じゃあ私は?」


この嬢ちゃん少し信じてきてない?


「えー…」


ここが一番の難関だ!


チラっと千代先輩を見ると、幸せそうにクッキーを頬張っているし、

綾乃を見ると困った顔でフルフルと首を振った。


救いの手なしか…。


ジーっと千歳の下半身を凝視していると、だんだん千歳の顔が赤くなっていく。


「…」(じー)


「っ…」


さらに赤くなる千歳の顔。なんか楽しい。


「…」(じー)


「ゃ…」


これ以上ないってくらいに赤くなる千歳の顔。


「…」(じー)


「やぁ…」


「履いてない!」


「きゃあ!」


「おぶぅ!」


千歳の飛び蹴りが俺の顔面を捉えた。っていうか当たりかい!





「すみませんでした!」


「私は履いてるわよ?」


いやいや履いてるんじゃなく、履いてきた…だよね。

俺に飛び蹴りしたあと、部屋を飛び出してしばらくして戻ってきたからね。


「始めから透視なんて出来ないって分かってたわ!」


完全に信じてたように見えたけど、こればっかりは証拠が無いしね。


「はい、綾乃の場合はスカートを捲りました!」


「…」


「本来なら『やぁあ!』とか言って恥らう姿が見たかったですが、素で叱られました!」


「…そんなこと聞いてない」


「ひぃ! ごめんなさい!」


千歳の声は地獄の底から響いてくるようだ。


「お、お代官様…綾乃のスパッツ着用を禁止してくだされ!

わしら農民にはそんな税金払えねーだよ!」


「ご、ごめんよお前さん、私がスパッツを履いていたばっかりに…」


「誰がお代官様よ! それからその小芝居をやめなさい! 綾乃…」


「はい…」


「あんたも乗らないの」


「はい…すみません」


「それから今度からスパッツ禁止ね」


「えぇ!?」


「お代官様ぁ! ありがたや! これで年が越せますだ!」


「あまいな」


「あまい…」


さつき先輩とさくらが呆れた顔で見ている。


「…が、外野は黙ってて!」


ちなみに千代先輩はクッキーを頬張りすぎてハムスターのようになっていた。

この話を書いた後に調べたら、浴衣で下着を着けないというのは、

現代ではあまり無いということを知りました。てへ。

ですが話が成り立たなくなってしまうので、そのまま投稿しました。

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