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In Girls Interval  作者: Satch
第1部
14/33

第14話:夢オチ

「せんぱーい!」


綾乃ちゃんは夏の日差しを浴びて、キラキラ輝きながら小走りで走ってくる。


「あれ? 綾乃ちゃんどうしたの?」


ってあれ? 俺プールにいたような気がするんだけど…?


「どうしたのって酷い! せんぱいからデートに誘って来たのに…」


綾乃ちゃんは目の端に涙をためて、頬を膨らまして上目使いに睨む。

プールにいた気がするが、そんな些細なことより綾乃ちゃんの笑顔が見たい。


「今日はいつにも増して可愛いね、俺のためにおめかししてきたのかい?(キリッ)」


なんだこれ? なんで俺こんなホストみたいなこと言ってんだろ?


「いつもそうやって誤魔化すんだもん!」


今度は拗ねた仕草をするけど、本気で拗ねている訳ではなさそう。


「ほら笑って! 綾乃は笑った顔が世界で一番可愛いよ!(キリッ)」


綾乃ちゃんの両頬を両手で軽く摘む。


「しょうがないから許してあげます」


「ありがとう、優しいね、君は僕の天使だ!(キリッ)」


キザもいいとこじゃね?


「だったら、せんぱいは私の王子様ですよ」


「俺は君の王子様でもヒーローでも何にでもなってあげるよ!(キリッ)」


俺は綾乃ちゃんの頬に指先で触れて、あご先まで滑らすと、あごを少しだけ上に向ける。


「せんぱい…」


綾乃ちゃんは目を閉じて俺の次の行動を待っている。


俺と綾乃ちゃんの距離が近づく、そして唇と唇が触れ…なかった。


「いだあああ!」


強烈なお腹の痛みで思わず目が覚める…目が覚める?


「ゆ…め?」


ふと見ると、千代先輩、さつき先輩、千歳、さくらが、俺のお腹にエルボーした体勢になっていた。


4人でお腹にエルボーって、下手したら内臓破裂するよ?


「純くん、随分楽しそうな夢見てたのね?」


千歳は起き上がりながらめっちゃ笑顔なんだけど、目が据わってる!

って他の3人も起き上がって半眼で睨んでるし!


「え、えっと、な、なんのこと?」


確信ありげな千歳の表情に、無駄と知りつつもとぼけてみる。


「ほう…とぼけるのか…」


さつき先輩はどこから出したのか竹刀を握っていた。って本当にどこから出したの?


「ごめんなさい! 綾乃ちゃんとデートしている夢見てました!」


ここでてへっていう顔でもしようものなら、さつき先輩の竹刀が一閃して、

また夢の世界にダイブしちゅうから、真面目な顔をしてみました!


するとさつき先輩の竹刀が一閃して俺の頭に振り下ろされた。


「な…ぜ…?」


打ち込まれた痛みを感じる間も無く、夢の世界へ逆戻りです!

後で聞いた話だと、真面目な顔がイラっとしたそうです。どないせーいうねん!





「純くん」


誰かが俺の名前を呼んでいる。


「純くん、起きて!」


強く身体を揺さぶられて俺は目を覚ます。


「ん…ここは?」


目が覚めるとそこはプールサイドだった。

プールサイドってことは夢じゃないよね?


「純くん、大丈夫?」


仰向けで寝ている俺の顔を覗き込むさつき先輩の顔があった。


「あれ、俺気絶してたんですか?」


「うん、そうよ、ごめんね痛かった?」


さつき先輩は優しい笑顔で、俺の頭を抱えて膝枕をすると優しく頭を撫でてくれるが、何か違和感がある。


「痛みは無いから大丈夫そうです」


「良かった、純くんにもしものことがあったら、私…」


そう言うとさつき先輩は急に涙ぐむ。ってあんたがやったんだけどな!

でもこんなしおらしいさつき先輩を見たこと無い。


「俺がさつきを置いてどこにも行くわけないだろ?(キリッ)」


あー…これ周りに誰もいないし、たぶん夢だわ。


「純…」


「さつき…」


俺は上半身を起こし、さつき先輩の唇と俺の唇が触れ…なかった。


「いだあああ!」


強烈なお腹の痛みで思わず目が覚める。


「ゆめですね!」


下を見ると、千代先輩、千歳、さくらが、俺のお腹にエルボーした体勢になっていた。


「だから内蔵破裂するから! ってさつき先輩は何してんすか!」


さつき先輩は顔を赤くしながら、もじもじというか、なにやら不思議な踊りを踊っていた…。

MPを吸い取る気か! MP無いけどね!


っていうか俺の夢の内容分かるの? 寝言で状況説明してるとか?


「はい! 私もキスする!」


千代先輩は元気に手を上げると、こちらに向かって猛然とダッシュして来た!


「!」


キスってそんなダッシュいらないよね!?

1mくらい手前でジャンプした千代先輩は、ダイビングヘッドよろしくこちらに向かって飛んでくる。


それを見て俺は回避運動をしたけど、間に合わなかった!

ゴツっという鈍い音と共に、俺の意識が遠ざかる。


「よしじゅんとキスしたぞ!」


違う! そりゃ頭突きだっていうかどんだけ丈夫な頭なんだよ!

なんて心の中でツッコミをいれたところで、夢の世界へダイブです!





「にーたん」


誰かの声が聞こえる。


「にーたん、起きて!」


強く身体を揺さぶられて目を覚ます。


「ん…ここは?」


目が覚めるとそこはやっぱりプールサイドだった。そして周りに誰も居ない。

はいはい、夢ですねこれ…。


「にーたん?」


にーたんって俺のことか?

見ると千代先輩が心配そうな顔で俺を見ていた。


「にーたん!」


すると千代先輩は覆いかぶさるように抱きついてきた!


「ちょ、千代先輩? 落ち着いて!」


「にーたん急に倒れたから、千代、にーたんが死んじゃったと思って、すごきゅ怖かった…」


じゃっかん噛みながら千代先輩は、ポロポロ涙を流して泣いていた。ってあんたのせいだけどな!


でもさっきのさつき先輩もそうだけど、千代先輩もキャラ違ってるよね?

千代先輩ににーたんとか呼ばれてないし…っていうか呼ばれてみたい願望はあるけどね?


「…」


もしや、さつき先輩と千代先輩に対する理想像なのか?


さつき先輩は優しいお姉さん風だったし、実際は残念なお姉さんだけど。

千代先輩は見た目も中身も可愛い子供風だし、実際は…あんま変わらないか…。


こうであって欲しい的な、俺の願望が夢の中で具現化してるのかもね。


「にーたん…千代を置いて死んじゃやだよ?」


「千代が望むなら、俺は殺されても死なないよ!(キリッ)」


「にーたん…」


「千代…」


俺は上半身を起こし、千代先輩の唇と俺の唇が触れ…なかった。

俺は瞬間的にお腹に力を入れたが遅かった。


「いだあああ!」


強烈なお腹の痛みで思わず目が覚め、飛び起きる。


「いでっ!」「あぎゅ!」


俺の顔を覗きこんでいた千代先輩の頭と俺の頭がぶつかったっぽい。

千代先輩は、目をぐるぐる状態にして気絶していた、不意打ちには弱いらしい。


そして案の上、千歳とさくらが、俺のお腹にエルボーした体勢になっていた。


「だから内蔵破裂するって!」


さすがにもういいでしょ? この流れだと後2回同じことが起きそうな気がするし!


「では次の選手前へ!」


選手ってなんだよ…つーかこのままだと脳へ深刻なダメージを食らいそうだよ!


「いやいや! これ以上はさすがに、ねぇ?」


俺は立ち上がり逃げ出そうと一歩踏み出したとき、そこになぜかバナナの皮が落ちてた…。

当然のようにそのバナナの皮で足を滑らせ、ひっくり返り、その拍子に地面に頭を強打!


薄れ行く意識の中、千歳とさくらのVサインが見えた。


「そんな…ベタ…な」


俺の意識は瞬時に刈り取られた。





「すごーい! こんなにおっきくなったー!

それにもっと固いのかと思ったけど、それほどでもないね?」


千歳がつんつんと指で押してくる。


「うん…ふにふに…してる」


さくらも一緒になって、指でふにふにと押してきた。


「そんなに触らないほうがいいんじゃない?」


「でも…苦しそう…」


「そうだね、出してあげたほうが楽になるのかな?」


「どう…やったら…出る?」


「私も経験ないしな、握ってみたら?」


「うん…」


とそこでそーっと手を伸ばしていたさくらの手を掴む。


「ひぅ!」


さくらの身体がビクっと震えた。


「握ったらだめ!」


「えー!」


千歳とさくらは口を尖らせて抗議する。


「えーじゃない! たんこぶを握ったら痛いから!

それからたんこぶから膿は出ないから!」


勘違いさせる会話があったことを深くお詫びします。


「純くん? 誰に何を言ってるの?」


「え? いや…うん、はは…」


「…変なの」


千歳は軽くため息をつく。

千歳とさくらは特にキャラが変わっている様子がない。


「まぁ千歳とさくらは、それぞれそのままで十分魅力的だからだな」


あれ? キメ顔にならないな…。


「ななな何を言ってるのよ!」


「打ちどころ…悪かった…?」


「正気だよ!」


おかしいな、流れで言うとキスに向かうはずなんだけど?

っていうか3人でどういうキスの流れになるんだろ?


試しに千歳を抱きしめてみる。


「~~っ!」


うん、千歳の動きが止まったから、ここでキスをすればいいんだね。

少し身体を離し、千歳の両肩を掴んだまま、顔を近づけていく。


あと数センチで唇が触れる瞬間、千歳が再起動を果たした。


「人前で何すんのよ!」


「いだあああ!」


千歳の張り手が俺の顔面に炸裂した。


「人前?」


そーっと周りを見渡してみると、千代先輩とさつき先輩は呆れ顔だった。

そのほか好奇の目が複数俺たちを見ていた。


「これ夢だよな?」


泣きそうになりながら千歳に確認してみる。


「はぁ? 純くん…本当に打ちどころが…」


悲しげな顔された!


これ現実じゃん! おかしいじゃん! 普通3回目も夢オチでしゃんしゃんじゃん。


「おにぃちゃん…早く…ん~」


「しないから!」

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