第12話:機能してますよ!
「あのさ純くん、夏休みにプ…」
「プ?」
いつになく歯切れの悪い千歳さん。
「夏休みにプ…」
「夏休みにプロレスラーになる?」
「違うわよ! っていうか何でよ!」
すごく似合うと思うんだが…じゃあ何だろう?
「おにぃちゃん…夏休み…プール…行こ?」
「おお、プールか、いいね」
さくらの水着姿はさぞかし魅力的で魅惑的だろう、特に胸の辺りが!
「そうよ! それを言いたかったの!」
「…2人で」
「2人で!?」
さくらと2人で行くプールを少し想像してみる……やばい鼻血出そう!
「ちょ! さくらちゃん? 違うでしょ!」
「おにぃちゃん…いい?」
「もちろんOKだよ! どこのプール行こっか?」
「5人でよ! ちょっと…私を無視しないでよ!」
「冗談だよ千歳、で5人って誰と誰?」
「私とさくらちゃん、さつき先輩にうちのお姉ちゃんと、ゴミ虫の5人!」
ゴミ虫って俺ですよね? 泣きそう。
「って男って俺だけ?」
「そうよ、純くんだけじゃないと、さくらちゃんが行きたくないって言うし」
「そっか」
さくらはそんなに俺を信頼してくれてるんだな。思わず顔がニヤけそうになる。
「でもさ5人ってハンパじゃね? ここは綾乃ちゃんを入れて6人で…」
「却下!」「…却下」
…ですよねー。
…
そして時は少し流れてプールに行く日がやってきた。
雲ひとつない青空に、灼熱の太陽の光が降り注ぐ、絶好のプール日和だ。
待ち合わせの駅に行くと、少し時間が早いせいかまだ誰も居なかった。
喫茶店とか入って待つほどでもないので、最近ハマっているモバゲーで時間を潰す。
しばらくすると、千歳と千代先輩が待ち合わせ場所にやって来た。
千歳はサマーセーターにデニムの短パンとニーソックスという服装で、
活発な彼女に似合っている。
一方、千代先輩は短めの白いワンピースで生足の太ももが眩しく、
幼い容姿の彼女は、変に背伸びせず自然に子供服を着こなしている。
「エロい目で見るな!」
「そんな目で見てねーわ!」
「え…よしじゅん、わたしをそんな目で見てたのか?」
千代先輩は無い胸を庇うように、自分で自分を抱きしめる仕草をする。
「だから! 聞いてました? 見てませんって」
「こんなことなら、勝負下着とかいうのにすればよかった……でもなんの勝負なんだ?」
うん、そっとしとこう。
「なんかさ、綾乃がいつに無く食い下がって『連れてってください』って懇願してきたけど、
純くん何か入れ知恵でもした?」
「し、してねーよ…」
「ふーん…?」
めっちゃ疑いの眼差しで見られてます! めっちゃ怖いです! チビりそうです!
実はきのう綾乃ちゃんに、連れてって貰うように頼んでみなよ、ってメールしたんだよね。
でもさっき作戦失敗の連絡が来てた。不憫な娘だ。
「何してるんだ?」
そこへさつき先輩とさくらが待ち合わせ場所にやって来た。
さつき先輩はジーンズにTシャツという、まったく飾り気のない感じだけど、
女子高生らしからぬどこか色香の漂う大人の女性のような印象で、悪く言えば老けている。
と思った瞬間さつき先輩が一瞬睨んだような気がする。
さくらは膝までの長さの青いワンピースで、腰のところのベルトがアクセントになっていて、
健康的な夏の少女のイメージを作り出している。
共通して言える事は、どちらもはち切れんばかりに自己主張する大きな胸だった。
「ふふ、慌てなくても、後でじっくり見せてやるからな?」
「ハイ? ナニヲデスカ?」
ぎゃあ! 思いっきり視線の先を見られてた!
「言わなくても分かっているだろう? 私とさくらを交互に見て比べていたものな?」
「く、比べてはいないです…」
バレバレやん!
「比べる必要など無いぞ、私とさくらはGカップでサイズもほぼ同じだ」
「へ、へぇー」
Gカップ! そりゃ揺れるハズだ! そりゃ目が釘付けにされるハズだ!
ふと見ると、千歳と千代先輩は、しゃがんで地面に「G」の字を書いていた。
うん、そこは「の」の字を書こうや!
…
そんなこんなでプールに到着!
所謂市民プールではなく、ウォータースライダーなどの大型施設のあるレジャープールだ。
なんでもチケットが偶然5枚手に入ったとの事だった。
「偶然ねぇ…」
「な、何が言いたいのよ!」
偶然手に入るとしても、普通偶数枚にならない? でもまぁ好意に甘えることにしよう。
そして入場後、男女に分かれてそれぞれの更衣室で水着に着替える。
男の俺は当然数分で着替えを終え、女子たちが着替えて出てくるのを待つ。
待つこと数10分、飲み物でも買って来ようかと思っていたら、
ようやく着替えを終えた女子たちが出てきた。
最初に出てきたのはさつき先輩だ、周りの男どもの視線など気にせず颯爽とやってくる。
さつき先輩は黒いビキニで、健全な男子高校生には目に毒な、大きな物体が2つ揺れているのが悩ましい!
うーん、何か腰に巻くもの持ってくれば良かった、もちろん隠すために……何を隠すかは聞くな!
「待たせたね」
「いえいえ全然…」
「ど、どうかな? 私の水着姿は?」
そういうとさつき先輩は俺に迫るように水着を見せてくる。近い近い!
「えっと…健康的というのか…魅惑的というか」
「歯切れが悪いな、はっきり言ってみろ」
「はい…えっと、めっちゃエロいです!」
「エ…エロ…!?」
さつき先輩の頭から湯気が出ている錯覚が見える! っていうか自覚無かったんかい!
正気に戻ったさつき先輩は、何故か俺の股間のあたりをじーっと見ている気がした。
ちなみに俺の水着は別に競泳タイプのちっさいやつではないので、
そんなじーっと見るような代物ではない。
っていうか水着のタイプに限らず、女の子が男の股間部分をじーっと見るのはどうかと思う。
「チッ!」
「!?」
何の舌打ち!?
続いて出てきたのは千代先輩だった、水着も背伸びせずにシンプルなワンピースタイプだ。
周りの視線…は無く、満面の笑顔で特に揺れるものもなく、とてとてと走ってくる。
「よしじゅん、お待たせ」
「一人でお着替え偉いねぇ」
「私は高校生だ!」
千代先輩は両腕を突き上げるようにして抗議する。
「そんなことより、よしじゅん、私の水着姿は興奮する?」
「しねーよ!」
「なん…だと!」
見た目幼女の水着姿に興奮してたら、それはそれでいろいろヤバいから!
ひとしきり拗ねたあと千代先輩も、俺の股間のあたりをじーと見ている気がした。
「…」
千代先輩は何故かしょんぼりとした顔をしていた。って何なのこれ!?
続いて出てきたのは千歳だ、なんとなくビキニを想像してたけど、
予想に反してワンピースタイプの、寒色系の色合いをした水着だった。
「ひっかかりが無いから、ビキニはダメなのだ」
千代先輩が、いらぬ解説をしてくれる。
「な、なるほど…」
「お、お待たせ」
千歳は何で顔真っ赤にして緊張してんだろ?
「まぁがんばれ! はい次!」
「励まされた!? って早いわよ! もう少し…その、じ、じっくり見なさいよ!」
え? そこは普通あんまり見ないでぇ、って言うところじゃないの?
千歳も先輩たちと同様に、俺の股間のあたりをじーと見ている気がした。
「くそ…」
いやいや、何を悔しがっているのか知らないけど、その呟きは女の子としてどうなのよ?
続いてお待ちかねのさくらの登場だ。主に待っているのは俺だけどな!
さくらは顔だけちょこんとだして、こちらの様子を伺っている。もう何をやっても可愛いな!
しばらく何かと葛藤しているようだったけど、意を決したようにようやく姿を現した。
さくらは可愛らしいピンクのワンピースなんだけど、可愛い顔立ちだから余計に胸の迫力が凶悪すぎる!
がんばれ俺! がんばれ俺の肉体! がんばれ俺の理性!
最後は念仏を唱えて、何とか諸々の感情を押さえ込むことに成功!
「…お待た…せ」
「!」
かはっ! アブねー!
頬は真っ赤、目の端にはうっすら涙が浮かび、上目使いでさらに小首を傾げるとか、
いつもは『パンツ…脱ぐ?』とか無表情で言ってるのに、こんなときだけヤバすぎだろ!
「どお…?」
「可愛いよ! エロいよ! 可愛いよ!」
「…どっち」
「エロ可愛いよ!」
最後に綾乃ちゃんでも出てきた日には、流石に俺の理性も決壊してたかもね!
最後は4人で、俺の股間のあたりをじーと見ている気がした。
気がしたじゃねー! 思いっきし見てるね!
そんなに見たって反応はしない…あ、股間の反応見てやがったな!
すると4人は俺から少し離れると、なにやら密談を始めた!
時々『BL』とか『でも綾乃』とか『不能』とか聞こえてくるけど、ごく普通です!
密談を終えた4人は気の毒そうな顔で戻ってきたかと思うと、千歳が俺の肩に手をおいた。
「私達は見捨てないから! ちゃんと治してあげるからね?」
「何が!? 俺はいたって普通だよ?」
「そうだね、男としてのプライドがあるし、機能しないなんて認めたくないよね?」
「だから! 本当に普通だって! 機能もするよ!」
「ふーん、証明できる?」
「出来るよ! でもここではダメだよ!」
「やっぱり…」
「あのなぁ、こんな公衆の面前で証明できる訳無いだろ? 通報されるよ?
ってだからその気の毒そうな顔をやめろ!」
女の子の服装の描写が難しくて必要最低限に留めました。
高校生はそんな服は着ないなどありましたら、ご指摘ください。
それと水着も。