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In Girls Interval  作者: Satch
第1部
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第1話:ファーストコンタクト

特に特別なことはしていません、いつもの感じです。

入学式初日に盛大に遅刻した俺は、前もって通知の来ていた自分のクラスに向かって校舎内を歩いていた。

っていうか迷っていた…。


「しかし分かりずらい学校だな…」


校舎は普通の学校のそれとは違い、増築に増築を繰り返したのか、もの凄い入り組んだ作りとなっている。

いい加減疲れてきてどこかその辺で休もうかと考えながら角を曲がると、

小学生くらいの小さな女の子が勢い良くぶつかって来た。


「うお!」


「ふにゃん!?」


女の子がぶつかった勢いのまま弾かれて倒れる前に、何とか抱きとめることが出来た。


「あぶねぇ…」


何で高校にこんな娘がいるんだろう? 今日は入学式があったから誰かの父兄かな?

なんて考えていると腕の中の女の子がジタバタともがいていたので、柔らかな感触が名残惜しいが手を緩める。


勢い良く離れた女の子は、少し涙目で顔を真っ赤に染めて俺を睨む。


「何をする!」


こっちを指差し何か怒っているようだけど、アニメ声なので和み要素しかない。


「えっと…君は迷子かな?」


「んなっ!?」


迷子が恥ずかしい年頃なのか、耳まで真っ赤にしながらまた睨まれた。


どうしよう…街中なら交番に連れて行くって手があるけど、高校の校内だとやっぱ職員室か?


「あ! こんなとこにいた!」


その時、急に声がしたので驚いてそっちを見ると、背が高くスタイルの良い女子生徒がいた。

上級生だということはネクタイの色で分かる。


「良かったね、お姉さんが迎えに来たみたいだよ?」


「会長、今度は逃がしませんよ?」


かいちょー? 変わった名前だな、っていうかなぜ敬語?


「だから私は生徒会長などやりたくないと言っている!」


ああ、生徒会長のかいちょーね…「って生徒会長!?」


「そんなこと言われても、前会長からの直々のご指名じゃないですか!」


「ふみゅ…」


「このちびっ子が、生徒会長なんですか?」


話が途切れたタイミングで、先輩の女子生徒に確認してみる。


「誰がちびっ子か!」


ちびっ子生徒会長は、手をグーにして両腕を突き上げて威嚇?してくる。


「ええ、これでも生徒会長なのよ?」


「本当に?」


「ええ」


「本当に本当?」


「ほ、本当よ」


「わたしはこれでも16歳の女子高生だ!」


「えっ!? 年上!?」


ちびっ子生徒会長は、美少女だが身長は140cmくらいで、黒髪ツインテールの残念な胸、

どう見ても小学生にしか見えない…。


「?…??」


困惑して上級生の女生徒に顔を向けると、嘘じゃないよという感じで苦笑いで頷いた。





「あー、びっくりしたあんな小さな高校生もいるんだな…」


ちびっ子生徒会長は、先輩の女子生徒に襟首を捉まれて子猫のように連れて行かれた。


「あ…クラスの場所聞けばよかった…」


自分のクラスが分からず、またフラフラきょろきょろしていると、後ろから声をかけられた。


「そこのお前、何をしている?」


振り返ると長い黒髪をポニーテールにした、ちょっとキツイ感じのする美少女がいた。

スタイル抜群で背も高く胸も大きい、さっきのちびっ子と相反するような容姿。


「えーと…俺…」


「新入生か?」


「あ、はい、教室が分からなくて…」


するとその女生徒は、なぜかはぁっとため息をつく。


「お前、クラス発表の通知と一緒に入っていた案内書は見たか?」


「え? 見て…無いと思います」


「やはりな、その案内書には迷わないよう校内の見取り図がついていたはずだが?」


「は?」


慌てて鞄を開けてクラス通知の封筒を出し、案内を確認すると確かに校内の見取り図があった。


「…ありました」


「だろう? 今いる場所は分かるか?」


自分の位置と見取り図を確認するが、目立った目印もないので、皆目見当がつかなかった。


「えっと…わかりません…」


「ふむ」


そういうと女生徒は見取り図を覗き込む、すぐ近くに美少女の顔が迫って来たのでちょっとドキドキ。

長いまつげと吸い込まれそうな瞳が印象的で、知らないうちに見惚れていると、不意に目が合った。


「聞いているのか?」


「は、はい、見惚れています」


「み、見惚れて…!」


「あああ! ま、間違えました! すみません、聞いてませんでした!」


ま、まぁ、この先輩なら言われ慣れてるだろうし、軽くあしらってくれるだろう。


「ふ、ふむ、でで、ではもう1度説明するじょ?」


めっちゃ動揺していらっしゃる!! 顔もほんのり赤い感じがするし!


噛み噛みの先輩の説明を、脳内補正しながら理解する。

っていうかまだ動揺してるのか?


「わ、分かったか…?」


「はい! 今度はばっちりです!」


「な、なんなら、私が連れて行ってやろうか?」


「いえ、先輩にそんなお手間を取らせる訳に行きませんので」


「そ、そうか…もっと君のことが知りたかったのだが…」


「え? なんですか?」


途中から何を言っているのか聞き取れなかった。


「な、なんでもない! 気を付けて行くのだぞ?」


「はい…失礼します」





「はぁ、変わった先輩が多いな、ま、学年が違うし滅多に合わないだろう」


ようやく自分のクラスに辿り着いて戸を開けると、当然のことながらクラスの注目を浴びる。


「すんません、遅れました…」


教壇に立つ女性教師に声をかけると、ぽかんとしていた先生は我に返ると、こちらに小走りで向かってきた。


「うぉ!」


俺の手前30cmのところで急停止した先生は涙目で俺を見上げてくる。


「だめじゃない! めっ!」


「す、すみません、っていうか近いっす」


20代と思わしき先生は、黒髪ボブのショートカットで眼鏡を装着した可愛らしい先生だった。

そんな先生の顔がものすごい近くにあるので、またまたドキっとする。


「先生、初日から登校拒否かと思ったわ!」


入学初日から登校拒否ってどんだけ社会不適合!?


「まぁいいわ、あそこの空いている席に座りなさい」


「はい」


指定された1番後ろの席に座ると両サイドが女の子だった。

って当たりまえか、良く見ると女子の列、男子の列で交互に並んでいる。


左隣は少し赤みがかったショートカットで明るい印象の活発そうな美少女だった。


「よろしく」と挨拶すると、「よろしくー」と笑顔を向けてくれた。


右隣は長い黒髪で、あまり表情の無い、印象の薄い感じの女子だった、でも美少女の部類には入ると思う。


「よろしく」と挨拶すると、こちらを一瞥してすぐ正面を向いてしまった…。ま、まぁ初対面だからだと思わないと悲しすぎる。


ちょうど自己紹介に入るところだったらしく、まず担任の先生が自己紹介をする。


「えー名前は、津田みどりです。実は初めての担任を持ちました。

ですので至らないところがあったらどんどん言って下さい。ちなみに彼氏は募集中よ」


みどり先生は最後こっちにウィンクしたような気がしたが、たまたまこっち方面を向いただけかもしれない。


その後は生徒1人1人が名前と出身中学を言うくらいの簡単な自己紹介をしていく。

そこで分かったのが、左の女子は小林千歳、右の女子は影山さくらということが分かった。


そして俺の番だ「吉岡純です、小奈川中学出身です。学校名は略したらダメです」


数人の男子の笑いを取って着席する。先生はぽかーんとしてるし、女子は何人か笑いを堪えているように見えた。

生徒全員の自己紹介が終わり、休憩に入ると小林千歳が話しかけてきた。


「吉岡くんって小奈中だったんだ?」


「だから略すなと」


「えー? あれは押すなよっていう前フリでしょ?」


「ちげーよ、えーと、こ、小林さんだっけ?」


「うん、千歳って呼び捨てでいーよ、もしくはちーちゃん」


「ち、千歳は、どこ出身だったっけ?」


ちーちゃんはスルーして呼び捨てにしたけど、女子の名前を呼び捨てってちょっと照れる。


「ひどーい、聞いてなかったの?」


「え、うん、まぁ」


「まいっか、名前は聞いていたみたいだしね、私は小奈川第二中学よ」


「千歳は小奈二中じゃねーか!」


「ちょっと、声大きいよ、私がえろぃ娘みたいに思われるじゃん!」


千歳はプンスカ怒りながら教室を出て行ったけど、本気で怒っている感じではなかったな、トイレか?。

そこでふと右側から視線を感じたので、顔を向けると影山さんがジーとこっちを見ていた。


「え、何? 影山さん?」


「…さくら」


「ん? かげや…」「さくら」


「かげ…」「さくら」


「か…」「さくら」


「…」「さくら」


「まだ言ってねーし! もうわかったよ、さ、さくら?」


「…えへ」


さくらは嬉しそうに少しだけ笑うと、席を立って教室を出て行った、トイレか?

入れ替わりのように千歳が戻って来たので、一応声をかけておく。


「ちゃんとキレイに拭いてきたか?」


「んなっ!? お、お客様の中に警察関係者の方はいらっしゃいますか!」


「学校にいるわけねーだろ? それにお客様じゃねーし…」


「ちょっと純くん? いきなりセクハラ発言ってどうなの?」


「ちょっとした冗談だが…それより急にファーストネームで呼ぶな!」


「純って名前のわりに不純だね!」


「いやいやドヤ顔してるけど、そんなにウマくないから!」


そこでさくらも戻って来たので、こっちにも声をかけておく。


「ちゃんとキレイに拭いてきたか?」


「ちょ…!?」


なぜか千歳が焦っているけど、さくらは無表情のままVサインを出して来た。


「…確認…する?」


さくらはスカートの両脇に手を入れてパンツを脱ごうとしていた。


「あ、いや、ごめんなさい…、今は確認しないから脱がないで!」


いやあのね確認したいのはやまやまなんだけど、衆人環視の前ではマズイと思うんだ僕。


「ちょっと、今はってことは後で確認するつもり?」


「うぐっ!?」


そりゃ俺だって1男子高生として確認したいよ! いやじっくり確認したいよ! できれば触診も食診もしたいよ!


「変態発言禁止!」


「えぇ!?」


千歳さん心を読む能力ハンパないっすね!


「っていうか、影山さんにその冗談はヤバくない?」


千歳は顔を寄せてきて息のかかりそうな距離でひそひそと話しかけてきた。またまた美少女の接近に本日3度目のドキドキ。


「う、うん、俺もいまそう思った」


「そういう冗談は、わ、私だけにしなさい?」


「なぜだ! 他の女子にもセクハラしたいじゃんか!」


「セクハラって言っちゃった!? 自覚あったんだ! っていうか純くんは変態野郎として高校生活を送る気?」


「…さすがにそれは嫌だなぁ」


「でしょ? だから私だけで我慢しなさい、わかった?」


なぜこいつは弟に言い聞かせるお姉さん風なんだ?


「わかった、千歳が変態だということがわかった」


「誰が変態か! 私にセクハラして良いのは純くんだけだよ?」


「それって…え、まさか!」


千歳が真っ赤な顔をしているけど、まさかの告白?


「ち、違うわよ、高校でできた最初の友達だからだよ!」


ですよねー、たった数分で告白とか有り得ないし、でも最初の友達だからセクハラOKって変じゃね?


「って、え? 俺らもう友達だったんだ」


「友達じゃなきゃ何なの?」


「えーと…クラスメイト?」


「あー…それでいいやもう…」


千歳は何か色々なものを諦めたような、疲れた女の顔をしていた。


「あ、ごめん、やっぱ友達で」


ガールフレンドは多いにこしたことないからな!


「おっけぃ」


そう言うと千歳は、にぱぁっと笑った。くぱぁっとじゃないぞ?


そこでまた右側から強い視線を感じたので、顔を向けるとやはりさくらがジーとこっちを見ていた。

「さくらも友達だよ」と頭を撫でる。


「…えへ」


さくらはコクンと頷いて嬉しそうに少しだけ笑った。

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