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〜62章〜 君は誰だ

黒神「ゼロ、余興にと思ってチェスを用意させたんだ。どうかな?一年ぶりに、私と対戦してくれないか?」



ゼロ「・・・」



黒神は、秘書にチェスを持ってこさせテーブルに置かせた。


一年ぶり、・・・一年前には、ホストはゼロであり、民間の中からアマチュアのチャンピオンを呼び勝負した。結果、ゼロは勝利した。


その時の相手の言葉が特に有名だ。


『世界というのを語るなら、貴方はその籠の中では満足できないんでしょうね』


この言葉を専門家は後にこう分析した。


この言葉で、ゼロという男の本質が見えた気がした。それはあの時一戦を交えた者だけが垣間見た一筋の光のようなものだろう。


ーーー自由を渇望し、この世界で嘆き、その中で足掻こうとする、翼をもがれた鳥だ。ーーー




一年前



ゼロ「・・・私の翼がもがれたか」



響「貴方と戦えて光栄でした」



アマチュアチャンピオンの響は、敗北した人間とは思えないほどの面構えでかえっていった。その表情は満足気で何かを見つけた子どものようだった。



クイーン「・・・」



ゼロ「どうした?」



クイーン「なんでもない」



あの人は、ゼロの深層心理にあるソレに気づいたのかもしれない。


私には伝える事が怖くて、ソレを知ると彼が全てを終わらせてしまうようで・・・



ゼロ「俺は変わらない。アイデンティティの喪失は俺の死を意味する。・・・だから!」








時は戻り現在ーーー



ゼロ「そんな事もありましたね。随分と前のように思ってましたよ」



黒神「・・・君はあの時の男を覚えているか?」



ゼロ「えぇ、覚えていますよ」



黒神「・・・そぅか」








洋館内部



雄大「・・・君は!?」



雄大は自分の目を疑った。自分の対戦相手が彼だという現実。それは彼の人質が彼女だということを意味する。


それは雄大にとって戦慄の恐怖を覚えた。数年前、二度と犯したくはない過ちを再び犯そうとしている現実。


自分の心が揺れ動いた事を数秒後に猛省する事となった。



秀人「君はあの時の・・・」



『向こうは本気だから』



その言葉の意味する事、何故彼がこの場所にいるのか、その全ては馬鹿でも分かる簡単な事だった。


画面に映し出される痛々しい姿の鳴。その横に画面を割って映し出される結衣の姿があった。彼女の身体にも複数のチューブが突き刺さっていた。



秀人「ごめん・・・負けてくれないかな」



雄大「・・・」



身体が凍りつき動かない。思考が止まって吐き気がする。自分の顔が引き剥がされてる感覚。


嫌な感覚が雄大を襲って理知的で冷静沈着な雄大を狂わす。彼の思考は狂想曲となりけたたましい旋律を奏で始めた。



雄大「うぁあああああああああああ!!!」



『あたしを守ってくれるよね』



『信じてるからね、雄大』



『・・・助けて』



雄大「結衣・・・ごめん、俺はぁ・・・俺がぁあああ」



その場に崩れ落ちる雄大、それを秀人はただ見ていた。濁流のように記憶の欠片が溢れ出て来た。


雄大の謝罪はこの場にいる誰にも分からない。秀人にも、画面越しにこちらを観察しているメフィストにも成美にも・・・ただ一人、結衣を除いて・・・。










ゼロ「さて、お招き頂いた本当の理由を話して頂きたい」



黒神「・・・」



黒神が隣の秘書に耳打ちすると黒神とゼロを残し壇上から全員が退席した。その後周りの四方を囲うように壁がせりあがり外界とは完全にシャットアウトされた。



ゼロ「こんなサプライズがあるとは知りませんでしたよ」



黒神「まぁ、君と忌憚なく話そうと思えばこれぐらいはしないとなぁ。この壁は完全防音で、この中の会話が外部に漏れることはない。・・・ようやく一年ぶりに君と本音で話ができる」



ゼロ「・・・」



黒神王界首相、その力で日本を復興させ経済基盤を盤石なものにし日本再興に尽力した英雄



ゼロ、その力で世界を破壊させ全人類抹殺を語り人々に恐怖と絶望を植え付けた死神



黒神が聞きたい事はたった一つだった・・・



黒神「ゼロ・・・、君は誰だ?」


















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