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〜61章〜 対峙の時

黒神「一年ぶりだな、ゼロ」



椅子に腰掛けて、最愛の人との再会が待ち遠しかったかのような笑み。



ゼロ「黒神首相、貴方もお変わりなく安心しましたよ」



黒神「ははは、そうか」



テーブルを挟み、二人は向き合っていた。実にこの再会がなにを意味するのか、そんな事は双方とも理解している。



黒神「前置きはいいだろう。我々はそんな仲ではないだろうしな。・・・ゼロ、君はなにがしたいんだ」



ゼロ「・・・一年前と変わりませんよ。人間の愚行を許せない。ただ、それだけです」



黒神「だが、その善悪の基準はゼロ、君自身の価値観一つで決まっているものだ。それを世間はどうとるだろうか?考えた事はないのか?」



ゼロ「無論、考えましたよ。個人が他者を粛正ではなく、粛清することをどう思うのか。・・・だが、答えはでなかった。しかし、民衆は答えをくれた。先の行動で私の正当性が民衆に認められた。これについては、どうお考えか?」



黒神「・・・それは、一部の利する人間の意見であろう?君が起こした行動で被害を受けた人もいるんだぞ」



ゼロ「だがその中で救われた人もいる。・・・これは、紛れもない事実ですよ。この今の世界では、社会的多数派が正義でありマイノリティな人々は悪だという考えが根付いている。それは、学校、社会、友人、家族、どれにでも当てはまる事です。黒神首相、貴方は社会的少数者は悪だと仰るおつもりか?」



黒神「そうは言わん。だが、話し合いをする中で双方の落としどころ見つけるのが大人の解決策だというんだよ。若い君には分からんだろうがな」



ゼロ「・・・落としどころ。フフッ、聞こえは良いがつまりは妥協だという事ですね?人生において、時には妥協が必要ですが信念を曲げて生きる事を生きているとは言わない。自身の信念を曲げたその瞬間から、その人の人生は死んだと同義だ!!」



黒神「・・・君は、」



黒神は、言おうとした言葉を抑えゼロを見つめた。お互いに用意された椅子に座り互いを見据えている。







その行動は、すぐに止められた。誰かに力づくで止められたわけではない。人を止める事は意外と簡単にできる。そう、今みたいに鳴の首元に鋭利なナイフを突きつければ止まるのだ。



雄大「!!」



メフィスト「ま、動くなって事だよ。この女がお前にとって大事なのは分かったよ」



メフィスト・フェレスは、ナイフをしまうと雄大を見ながら言った。



メフィスト「雄大、久方ぶりにゲームをしないか?」



雄大「・・・ゲームだ?お前・・・、俺に何か言うことがあるんじゃねぇのかよ!!」



メフィスト「・・・別になにも?」



雄大「ーーーくっ!?貴様ぁああ!!」



成美「落ち着けよ、雄大!!」



成美は暴れる雄大を必死に羽交い締めにした



成美「お前がなんで暴れるのか知らないが、今は鳴を助けることが先決だろ?」



雄大「・・・くっそぉ!!」



メフィスト「じゃ、話を戻そうか。雄大、お前には向こうの部屋で戦ってほしい人物がいる」



雄大「・・・なにを企んでる」



メフィスト「クハハハッ、別に?まぁ、手加減してやってくれよ?お前には大した事ない相手だろうが、向こうは本気だぜ?」



雄大「ゲームなんてどうでもいいんだよ、鳴を助けることが今の俺のやる事だ」



メフィスト「じゃ、移動したまえ」



メフィストは、雄大と成美が入ってきた扉を指さした



雄大「・・・成美、鳴の事を見ててくれ」



成美「任せとけ!」



雄大は、急ぎ足で向こうの部屋へと向かう


そういえば、あの女がやけに注意していたな。あの女の事を今だに思いだせない。過去の何処かであったのだろうが、やはり駄目だな。



雄大は、その扉の前までいき扉に手をやった。 重々しい音と共に、扉が開く。雄大は、その暗い室内に目を凝らした。



雄大「・・・誰もいないのか?」



「ゲヒヒヒ!?あ・・・、誰?」



雄大「誰かいるのか?向こうの部屋へ来てくれと頼まれてきたんだ。おい、時夜!!俺はここだぞ!!この後どうすればいいんだ!!」



雄大のポケットの中の携帯が振動した。着信相手は成美だった。



雄大「どうした、成美」



成美『雄大、今すぐ戻ってきてくれ!!あの野郎はとんだクソ野郎だ!!とにかく、ーーーぐぁ』



電話の向こうで、大きな音がした。おそらく、ケータイが落ちた音だろう。



雄大「成美?おい、成美!!」



雄大は急いで先ほどの部屋へ戻ろうとするが、入ってきた扉には鍵がかかっていた。



メフィスト『聞いたとおりだ、とんだクソ野郎らしいな俺様は』



電話越しにあの男の声が聞こえてくる



雄大「貴様、成美になにしやがった!!」



メフィスト「ん?別になにも?そんな事より、進めようか。ゲームをね」



雄大「お前は本当に最低だな!!」



メフィスト『ありがとう、最高の賛辞だよ』



「じゃあ、はじめよっか!?」



雄大「・・・」



その声の主に振り向き、相手を見ようとするが、暗くてよくわからない。



雄大「ゲームだと言うが、こんな暗くてなにができるんだよ」



「あー、そぅですねぇ!?ちょっと待ってよね、いちいちうるさいなぁ」



雄大「・・・」



暗い室内が、上部に吊るされたシャンデリアで照らされた。



「どーも、どーもん」



雄大「・・・」



暗い時は気づかなかったが、机の上にシートが被されており、壁には大きなテレビが置かれていた。そこに、鳴の姿がうつっている。



雄大「貴様、何者だ?」



「・・・うるさいなぁ、君はわかっちゃいなくないか?この部屋の主は僕なんだよ!!質問するのは僕で、君は黙ってそれに従えよ!?」



雄大「・・・」



駄目だな、こいつは感情的になりすぎる。こいつを口説くのは不可能だろうな。成美なら、俺と違ってこんな相手でも器用にやってのけるんだろうが・・・



「ゲーム内容は、黒ひげ危機一髪ぅうう!!」



雄大「・・・」



「よしよし、素直にしておけよ?僕に逆らうとあの女が悪魔に殺されるんだからな?ゲヒヒヒ、そしてこれがその勝負だ!!」



机上のシートに隠されたものはチェスだった。



雄大「・・・チェス?」



「ゲヒヒヒ、その前に君の大事な女の身体を見たまえよ?」



雄大「・・・なんなんだ、あれは?」



さっきまではなかったモノが鳴の身体に突き刺さっていた。鳴の身体には数本のチューブが突き刺さっていた。



雄大「なんなんだ、あれは!!」



メフィスト「雄大、お前が間違った選択をすればこの女の体内にアレが流れる」



メフィストが鳴の横に映る。



雄大「間違った選択?アレだと?時夜、テメェさっきからなにいってんだ!?」



メフィスト「そのチェスでお前が間違えば、この女の体内に・・・エンジェル・ダストが流入する」



雄大「ーーー!!?」



メフィスト「その恐ろしさは、貴様が一年前に嫌というほど経験したはずだぜ?」



「まったく、僕の見せ場とらないでよね」



・・・時夜は、間違えばと言った。


どういう意味だ?チェスに間違いもなにもない。勝つか負けるか、ただそれだけだ。



「君には対戦相手と戦って、負けた側が大事なモノを亡くす。ここまでは、よくありそうなデスゲームだ。だが、このチェスは少し特殊でね、ある駒を取られると自動的に装置が起動するんだ。その装置が起動しても、双方の大事なモノを亡くす。これが、さっきあの悪魔が言ってた間違った選択の事さ」



雄大「・・・ふざけてやがる、」



雄大は、この説明で全てを理解した



「つまり、ジョーカー駒を取られないように相手に勝つんだよ。簡単だろ?」



雄大「勿論、どの駒がジョーカーかは教えてはくれねぇよな」



「とうぜんだねぇ」



雄大「・・・」



・・・不可能だ


チェスの駒は計十六、その中の一つを絶対に相手に取られずに勝たなければならない。


一見、なんとかなるようなところがこのゲームのたちの悪さだ。


王なら守りやすく、また取られる事は敗北を意味するため、勝つリスクと取られるリスクの二つのリスクが一つになった分やりやすい。だが、その駒がもしクイーンやナイトなら?それ以前に、最前列のポーンなら最初の段階で戦略のための捨ての一手が即終末へ繋がる。



・・・あの時夜が考えそうな、下種なルールだ。


ちくしょう、どの駒が分かるまでどれも取られるわけにはいかない。だが、取られる覚悟がなければ確実に俺が負ける。



何かを失う覚悟がない奴に、なにも手にすることはできない・・・


随分と昔に、友が俺に言ってくれた言葉だ。もっとも、友と思ってたのは俺だけだったのかもしれないが・・・



だが、今回は違う。失う覚悟云々の話ではない、失うことそのものが目的の消滅を意味する。



・・・行くも地獄、戻るも地獄、俺に選択権はない。まさに、ツークツワンクか。



・・・ちくしょう、



雄大「その勝負、必ず勝つ!!!」









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