〜60章〜 あの男
雄大「以上だ」
「・・・ふーん、相変わらずいい推理ね。確かに、人を隠しておける場所で、人目につかず、なおかつ多くの人間を隠せる場所・・・ここが最適よねぇ」
幸い、残りの怪しい所は既に成美と鳴が調査してくれた。結局、残ったのはここだった。
「さて、この鍋の中身・・・なんだと思う?」
成美「・・・」
成美は、鼻を覆いながらソレに目をやる
成美「わかんねぇよ」
雄大「・・・」
「これはね、美食を極めし悪魔が食す最高の食材なのよ」
雄大「・・・」
「答えは、人肉よ」
成美「ーーーヒッ!?」
雄大「・・・人類のタブーを犯したってのか」
成美「ぉおい、こいつ異常だぜ!?早い所ここから逃げようぜ!!鳴を探すんだろ?」
雄大「・・・あぁ、そうだな。・・・ただ、一つ聞きたい」
「答えないかもしれないけどなにかしら?」
雄大「その鍋の中身に鳴は入ってないんだろうな」
「クスクスクスクス、さぁどうかしらね」
十中八九、あの中身が攫われた女性の肉だというのは間違いないはずだ。鳴がまだ無事な可能性は十分あったはずだった。
だが、もしあの中身に鳴が・・・
「嘘よ」
雄大「ーーー!?」
「冗談だって言ってんのよ、この中身が人肉なのも嘘よ。そんなの大昔じゃあるまいし、そんな悪趣味な事するわけないでしょ?」
女はクスっと笑い雄大に言った
「階段を登って突き当たりを左に行きなさい。その先の扉に彼がいるわ」
雄大「彼?俺達が探してるのは女だぞ?」
「行けば分かるわよ」
雄大は、もう一度その鍋を見てその部屋を出ようとした時だった。
「あぁ、そぅそぅ。突き当たりを左よ?決して右に行かないようにね」
成美「バーカ!間違えるかっつうの」
バタン
「・・・ふふふ」
「相変わらず悪趣味やなお前」
物陰からぬっと現れたのは、憤怒の悪魔だった。そのままテーブルに腰を落ち着けると、踏ん反り返って女を見た
「貴方は協力しないの?」
サタン「あ?あーはいはい。今は無理なんだよ」
「あらそう」
聞いたくせに興味なさそうに、再び鍋をかきまわす女。それを見ながらつぶやくように言う悪魔
サタン「・・・ゼロのレセプションが終わるまではな」
「・・・ん?なんか言った?」
サタン「・・・その鍋の中身、なんなんだ?」
「・・・ふふふ」
薄暗いキッチンから出ると、成美は汗だくになっていた。それほど、あの空間は苦痛だったのだろう。
成美「あの中身なんだったんだろうな」
雄大「さぁな」
言葉と同時に走り出す雄大
既に雄大に迷いは消えていた
それは、鳴の命が危険にさらされてる事への限界からきているのだろうか
一気に階段を駆け上がり、左に突き進む雄大。扉を開けて目に入ったのは、血の色のような真っ赤な絨毯。
そして、その絨毯の上に椅子に縛られ身動きのとれない鳴がいた。
鳴が雄大に気づき、その後遅れてきた成美に気づく。
鳴「雄大!!成美!!」
成美「鳴!!」
最初に声を発したのは鳴、その後が成美だった。普通なら、先に扉を開けた雄大が鳴に声をかけてもおかしくないのだが、この時雄大は鳴を見てはいなかった。
鳴の隣にはもう一人いた。
金髪で両耳にピアスを開け、口は不敵に笑っている。
二度と会う事はないと思っていた。
いや、二度と会いたくはなかった。
雄大は、その男を見たその瞬間硬直し、成美が鳴に声をかけた刹那、成美の横から既に雄大は消えていた。
結婚式会場で、猫語愛再と戦った時と同じ速度。雄大自身の本気の全力のその速さで、その金髪へ向かって走りだした。
この時、鳴と成美は状況把握ができていなかった。鳴の隣に立っているのだから、十中八九誘拐犯で間違いないだろう。だが、論理的に相手を追い詰め、不確実な事がないようにするのが成美と鳴の知る田辺雄大である。
だから、いきなり相手に襲いかかった雄大の行動をこの二人は理解できていない。
だが、一つはっきりと分かる事があった。
雄大の瞳は確実に相手を見据え、怒りの炎に包まれた瞳をしていた。
二人は理解する。
この金髪はーーーーーーー危険だと。
雄大「時夜ぁぁぁああああああああああああああ!!!」
メフィスト・フェレス「久しぶりだな、雄大!」
東京レセプション会場
黒い漆黒のマントを羽織る男が静かにその会場に入った。辺りは静まり返り、その男を黙視する。それは、恐れからではなくゼロという男のカリスマ性がそうさせたのだろう。
黒神「ようこそ、ゼロ」
ゼロ「・・・」
今日この日この瞬間、世界は再び動きだした
世界は・・・
人は・・・
真実が蘇るその日まであと少しと迫っていた