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〜59章〜 焦り

暗い室内で、自身の呼吸だけが聞こえる



鳴「・・・ん、ここは」



分かる事は、自身の自由が椅子に固定されて身動きがとれないことだけだった。動こうとしても、糸がそれを遮る。無理に動けば皮膚が切れそうな鋭さを持っている事を鳴は理解した。



そんな事に頭をまわしていると、燭台の炎がまるで魔法のように灯されていく。その炎をつけている人物は鳴には見えない。だが、確かに炎はついていく。



鳴を囲むように燭台は設置されており、その明かりのおかげで、ここが室内である事を認識した。



鳴「・・・」



鳴は、無表情で辺りを見渡す。大きな鏡に、使われてるとは思えない暖炉。壁一面にかかっているのは、黄色の麦畑の中に悲しみの表情を浮かべた少女が一人いる絵画。



「落ちついているね」



一人の男の声が聞こえ、室内に入ってくる



鳴「・・・誰」



「・・・言えない。有名人だからね、ある意味」



鳴「あたしを誘拐してなにが目的?」



「いや、君に用があるのはそこにいる奴だ」



男は、鳴の後ろを指さした



鳴「ーーー!?」



鳴が振り返ると、そこには一人いた。


鳴は、全身の血の気がひいた。さっきまで、暗闇には自分しかいなかった・・・はず。だが、その後ろにいる男は絶対にそこには存在できないのにいる。扉からは鳴の位置は一番遠くにある。その男がいる場所も必然的に遠くなる。扉から入ってきたなら必ず気づく。だが、その男は急に気配がし、そこに存在した。



メフィスト・フェレス「・・・怖がらないでほしい。君には危害を加えるつもりはない」



「じゃ、僕は向こうに行ってるよ。新しいモノが手に入ったからね」



鳴「・・・」



上手い手だ・・・。


鳴は、かなり動揺していた。先程までは、平静を装う事ができていた。だが、この男の演出は恐怖を助長させた。不可解な燭台の炎の点火、この男の不可能な所からの出現、人間の心理を上手く掌握する術を持っているいやらしい男だ。



メフィスト・フェレス「田辺雄大」



不意にその男が口を開いた。知った名が聞こえ、少しホッとした鳴だったが、それはすぐに恐怖へと変貌した。



メフィスト・フェレス「奴を壊すのは・・・私だ」



これほどまでに、人は恐ろしく狂気な笑みを浮かべる事ができるのか。鳴は、今まで数多くの犯罪者を見てきた。その中には、大量殺人鬼もいた。だが、こいつのソレはそのどれとも違う。結婚式会場で見たあの怪物も恐ろしかった。だが、この男はそれすらを軽く上回る恐ろしさを持っているように鳴は思った



鳴「雄大を壊すですって?・・・無理だわ、あなたじゃ雄大を倒せない」



メフィスト・フェレスの瞳だけが動き鳴を見た



メフィスト・フェレス「・・・今回はそうはならないよ」



鳴「今回・・・?」











成美「おい雄大!!」



雄大の後ろを成美が追いかけていた。しばらくすると、雄大に追いつき肩に手をやり雄大を止める



成美「ハァハァ、急にどうしたんだよ、何だってんだ」



雄大「・・・鳴が危険だ」



成美「そいつは、わかってる!だが、らしくねーぞ!!もっと落ち着けよ」



雄大「・・・」



成美の話によると、成美と鳴が失踪事件を調査中に背後から何者かに襲われ成美はその場で気絶し、鳴が消えていた。



成美「なぁ、お前おかしくねぇか?警察のとこ行った時も変だったしよ」



雄大「・・・もう、失いたくないんだ」



成美「・・・雄大」



雄大「自分に期待してくれていた人が、失望し去って行く・・・あんな思い二度としてたまるか」



成美に向けた言葉だったが、それは自分自身に言い聞かせているようでもあった



雄大「あの洋館へ行く」



成美「だから待てって!先ずは警察に連絡しようぜ」



雄大「無理だ、今この東京の警察はゼロのレセプションに動いている。残ってるのはほんの一部。それを動かすのは治安を脅かすのと同義だ」



・・・!?


ちょっと待てよ?


これは偶然か?


鳴が失踪したこのタイミングと、ゼロのレセプション・・・。おかしい、なにか引っかかる。


警察が動けない事を見越した上での作戦・・・



雄大「いゃ、考えてる暇はない」



成美「しゃあねぇや、行くか」



成美と雄大が車に乗って洋館へ向かった







親友がそんな大変な事にまきこまれてるなんて、全く知らない奴がここにいた



終夜「・・・」



幼稚園の手伝いは、他の三人が腹痛の為欠席している。終夜一人が園内の作業をしていた。壊れた道具の修理、道具の手入れ、掃除、草むしり、それ等を一人で黙々とこなしていた。逃げたい気持ちもあったが、一度受けた事を放り投げるのは好きてはなく、さすがに一人では申し訳ないとバイト代が出る事等が終夜を動かしていた。


幼稚園の入り口のガラス掃除をしていると一人の小柄な女の子が話しかけてきた



「・・・あの、」



終夜「・・・はい?」



その子は、瞳がオッドアイで少し深く帽子を被っていた。ボーイッシュな服装とは裏腹に、その態度はおどおどしていた。



終夜「あの?」



「あ、・・・はぃ!ぇと、ぇと、・・・真夜って子いるかなぁ?」



終夜「あー、すこし待っーーーっげふっ」



終夜がガラス掃除を止めて、園内にいる真夜を呼びに行こうとしたら、後ろから終夜を突き飛ばし嫌味女が現れた



真夜「不和じゃないか、どうした?」



不和「あ、真夜ちゃん」



終夜を無視して話を進めようとする真夜。



終夜「おぃ、こら待て!!」



真夜「ん?なんだ貴様、いたのか」



終夜「いたのかじゃねーよ!!今お前が突き飛ばしたんだろうが!!」



真夜「あぁ、小さくて見えなんだ。すまんな」



終夜「俺の方が身長でかいっつーの!!」



真夜「器が小さいと実際の身長も小さく見えるのかもな」



終夜「ぐぎぎぎぎぎぎ!!!」



終夜は、小さくため息を漏らして、その場を去った



終夜「ごゆっくり~」



真夜「フンッ」



不和「ふふふっ」



真夜「ん?なにかおかしかったか?」



不和「真夜ちゃんが、男の子とあれだけ長く話してるのなんか面白かったなぁ」



真夜「そぅか?」



不和「そぅだよぉ、大学でのあだ名忘れたの?雪女だよ?つけたの男子だけど」



真夜「あぁ、一部ではそんな事を言っておったな」



不和「男の子と全く喋らない真夜ちゃんがあれだけ長く喋ってるの新鮮だぁ」



真夜「まぁ、私は基本男子とは喋らないからな」



不和「ははは、怖くて向こうが避けてるんだよぉ」



真夜「わたしが怖い?」



不和「いっつも無表情だからねぇ」



二人が仲良さげに話してる声が聞こえてくる。あの嫌味女にも友達っていたんだな。



そーいや、雄大元気にしてっかな・・・


無事退院してるといいんだけど・・・





成美「着いたぞ」



雄大は静かに、だが急いで降りた。以前来た時よりもはっきりと分かる禍々しさ。



雄大「・・・行くぞ」



成美「・・・ここに鳴がいる保証はねぇけどよ」



二人は、足音を殺して玄関まで忍び寄った。汗が顔をつたって地面に落ちる。季節は夏、二人は顔を見合わせると扉を開けた。


鍵はかかっていなかった。まず目についたのが、中央の階段だった。その階段を挟んだ両脇に燭台が置かれ寂しく炎が灯っていた。



雄大「・・・」



扉の隙間から中を確認した雄大は、俊敏に近くの柱の影まで隠れた。遅れて成美がいそいそとやってくる。



成美「ちょ、早いって」



雄大「シッ!!なにか聞こえないか?」



雄大の視線の先には、扉があった。ちょうど玄関から見て、右手にあった扉だ。雄大と成美はその扉に近づき、ゆっくりと開けて中を見た。



「ふ~ふ~ふ~ん」



鼻歌?

一人の女が鼻歌を歌いながら、鍋をかきまわしていた。



雄大「・・・」



なんだ!?この匂いは!?



成美「・・く、・・せぇ」



異臭を放つその室内だが、女は心地よい風に鍋をかきまわす。その中身がなんなのか、雄大は考えて少しゾッとした。



「・・・覗き見するなんて、褒められた趣味じゃないわねぇ」



雄大・成美「・・・!?」



雄大「・・・その鍋の中身も知りたいが、この洋館には失踪した女性がいるはずだ」



成美「答えてもらうぜ」



「・・・あら、貴方。ふふふ、久しぶりね」



雄大「・・・はぁ?」



女は雄大の方へ向きそう言った。雄大にはなんの事かさっぱり分からなかった。見た事もないこんな女は。



「覚えてないかしら?あの事件の時にあたしもいたんだけど・・・・まぁ、無理もないわね。あれから六年も経ってるし」



雄大「六年前・・・」



成美「雄大!!今はそんな事どうでもいいんだよ!!この洋館に鳴がいるはずだ!!」



「・・・どうしてそう思うの?」



雄大「説明してやるよ」



薄暗いキッチンで、雄大は説明しはじめた。








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