〜58章〜 ボランティア
ボランティアの内容はたくさんあったが、まずは草むしりをしてほしいとの事だった。園内は、園児が遊ぶ所は綺麗にしてあるのだが、周りの隅は草が生え散らかしていた
終夜「たく、業者に頼めよなぁ」
水葬「んな、ぶーぶー言うなって!それよりさ、あの子とどうなったんだよ?」
水葬の言うあの子とは、今冷房の効いた室内で涼しげに園児を寝かしつけている黒髪嫌味上から物言い蔑み女の事だ。
終夜「別に、ていうかよ。なんなんだよ、この待遇の差は!!」
俺達は軍手をして貸してもらった麦わら帽子を被り炎天下の中草むしり
あの嫌味女は冷房の効いた室内
終夜「暴動が起きるぞくそっ!」
水葬「でもさ、本当美人だよなぁあの子」
終夜「中身は腐ってるけどな」
水葬「え?なんでわかるんだよ」
終夜「あのくそ女、自分本位で他人の事なんてカス程度にしか考えてねぇよ。たしかに顔は可愛いよ?けどな、性格は破滅してるぜ!!どうせ彼氏もいない暗い学園生活を送ってることだろうよ」
真夜「貴様に言われる筋合いはない」
終夜「げっ!?」
水葬「失礼しましたぁ~」
水葬はそそくさと、今馬達の所へ逃げて行った
終夜「・・・」
真夜「・・・」
終夜←草むしり中
真夜←それを上から見てる
終夜「あの、気が散るんだけど」
真夜「ほぉ、貴様はこの程度で気が散るのか?フンッ、とんだ集中力だな」
終夜「・・・はぁ」
真夜「さっさと済ませろよ」
終夜「・・・」
真夜は、また室内へと戻って行った
終夜「・・・くそっ」
ー大阪府警ー
「どうなってんだよ、犯罪者を招くとかよ!」
「あの首相、頭おかしいのか?」
「しかし、国民の半数以上からの賛成多数で可決した事だ」
前原「やばいっすね」
氷夜「・・・」
氷夜は、自分の椅子に座りインスタントコーヒーを飲みながら外を見ていた
ゼロが世界に向けて放送があってから警察には苦情や抗議の電話が飛び交っていた。あれからほとんどの仕事が、その電話の対応という事務仕事だった。
当然ストレスが溜まるその作業にはかなりの疲労がでており、そこへきて今回のゼロへのレセプションときた。
警察内部でも、苛立ちがピークにきているその光景は自らの非を覚えない愚か者が多くいるように氷夜には映っていた
氷夜「レセプションか、開催日時はまだ分からないんだよな」
前原「そうですね、まだなんとも」
氷夜「そぅか」
前原「なんか、余裕ですね氷夜さん。以前は、ゼロに対してはかなり感情的だったのに」
氷夜「・・・」
氷夜を冷静にさせたものはビルでの一件だった。自分の作戦の甘さが部下の命を奪った。その事が、今も氷夜の中でヘドロのように心に染みついている
終夜「ふぅ、終わったぁ」
園長「お疲れ様でした!あちらに、ご飯を用意しましたので食べていってくださいな」
鎌足「よっしゃあ!!」
今馬「すみません、いただきます」
時刻はすでに夕方ぐらいで園児はいつのまにか帰っていた。それだけ集中してたってことだ。
終夜「俺の集中力たいしたもんじゃねぇか」
室内に用意されたのは、おにぎりとお吸い物で腹が減りすぎた俺たちにとってはご馳走だった・・・一部を除いて
水葬「あの、この端にあるぐちゃっとしたものは」
園長「これはね、真夜さんが作ってくれたのよ!!」
手を合わせて嬉しそうに喜ぶ園長
終夜「・・・」
ぐちゃっとしたもの、これは食べ物なのか?
鎌足「これ結局なんなの?」
ぐちゃっとしたものを指さして言う
真夜「おにぎりだ」
今馬「・・・独創的なおにぎりだね」
水葬「・・・まぁ、美味そうかな」
終夜「・・・」
ここで余計な事を言えば再び罵詈雑言を浴びせられるだけだ。黙っとこう。
園長「さぁ、いただきましょう!」
皆でいろいろ話しながら食べた。鎌足と嫌味女が話をしていた。といっても、鎌足が一方的に話をして嫌味女はそれを無表情で頷くだけ。園長と水葬と今馬は最近の少子化について話していた。難しい事は俺は分からないから端のほうで座って食べていた。
結果、鎌足・今馬・水葬の三人は翌日腹痛で学校を休んだ。理由は言うまでもない。
園長も食べたはずだが、胃袋が屈強なのか元気にしているらしい。
レセプション当日
会場には、数百人の警察が取り囲んでいた。その中央には黒神王界が鎮座している。
黒神「・・・」
「来るでしょうか、ゼロは」
黒神は深く目を閉じ、そこから数秒たってから口を開いた。聞いた男は、黒神王界と共に内閣を構成する大臣の一人。
黒神「・・・ふふっ、見ものだな」
「・・・?」
この会場には、銃器機の持ち込みは禁じられている。その場に、テロリストのトップが来る事は普通なら考えられない。
だが、黒神王界という男は気づいていた。相手はゼロ。常軌を逸脱した人間であり、パンドラを率いる事ができるカリスマ性を兼ね備えた人物。
それは、黒神王界と似ていた。
長く低迷していた日本経済を改革させ、低所得者層の賃金を増やし、雇用を生み、人々は気持ちから世間に対して明るくなっていった。
一年前にゼロが指摘した所を、黒神王界は政策として実行し見事成功させた。無論、たかだか一年では効果などほとんどでない。だが、人々が未来に対して明るくなる政策としては申し分ない事だった。
黒神王界とゼロ
この二つの黒は、似ているようで正反対に位置してる黒なのかもしれない。
時を同じくして、東京中央大学
雄大「・・・嘘だろ」
成美「・・・雄大すまない」
レセプションが始まるのを、失踪事件を解きながらテレビで監視しようとしていた矢先の事だった
成美の言葉は、雄大を酷く動揺させた
成美「鳴が失踪した・・・」