〜56章〜 黒・再誕
東京第一警察署、鳴と成美は先についてあの洋館のことについて熊谷さんと話しているみたいだった
成美「雄大~!こっちこっち」
人がたくさん業務を行っている閑静な職場で、成美の声は酷く響いた。その横で、鳴が嫌そうな顔をしていた
鳴「うるさい」
雄大「悪い悪い、遅くなった」
俺は、結衣と会って心ここにあらずのような感じだったのだろう。鳴が俺の顔を凝視して視線で「なにかあの女とあったの」と聞いているのが分かったが俺はあえてなにも言わなかった
熊谷「さ、話を戻そうか。あぁ、この二人は雄大君の友人だという事で話を聞いてるよ」
雄大「はい、その通りです」
良かった、自己紹介が既にすんでるなら手間が省けた
成美「そうなんすよ、あの洋館はおかしい!」
熊谷「ん~、おかしいとはいってもあそこがあの事件となにか関係があるとは思えないしねぇ」
雄大「いいんですか?あんまり大声でこの事件について喋らないほうがいいって熊谷さんが・・・」
熊谷「ま、そうだったんだけどね。つい先ほど、うちの管轄になったんだよ。見てみな、」
熊谷は、首だけを奥の人達にやった
雄大「・・・なるほどな」
皆の嫌そうな態度が露骨にでている。この辺は正直なんだな。
熊谷「雄大君は、どう思う?」
雄大「・・・そうですね、あそこが関わってるという確証はありませんが、一つはっきり言えます。あそこは、おかしい」
成美「俺と同じ~!」
鳴「成美、うるさい」
熊谷「どう怪しかったんだい?」
雄大「あの洋館には、正式な書類上人は住んでいません。だが、人がいる形跡があった」
熊谷「なるほど、しかしそれだけじゃ怪しいとまではいかないだろう?鳴さんからその時の事は聞いたけどもさ、不穏な感じだが調べてみるほどじゃないと僕は思うけどなぁ」
成美「うし、もう一回行こうぜ!」
鳴「そうね、今度はそれ相応の準備をしてね」
雄大「駄目だ!!」
怒鳴るように止めた為に、あたりが静止する。俺は、ハッと我に返ると頭を下げた
雄大「あの場所には、言葉じゃ説明できない嫌な感じがしたんだ。俺はあの場所に行く事に賛成できない」
鳴「・・・珍しいね。雄大が事件に感情を持ち込むなんて」
成美「あぁ、らしくねーよな」
雄大「・・・そぅかな」
自分でも、変だと思った
何故だ?確かにあの場所は嫌な感じがした。ドス黒い・・・そう、舞花の結婚式にいたアイツと同じ感覚が・・・
ハァ、
確かに、人を説得させるには不十分な説明だよな。ただ行きたくない・・・なんて、ガキじゃあるまいしな。
たが、理解してもらうしかない。あの洋館には行ってほしくない。
成美「わっーたよ、あそこには行かない。他の所を調べよう」
鳴「そうね、他にも怪しい場所はあるんだし」
皆が席を立とうとした時だった
「熊谷さん!テレビを見てください!!」
熊谷「うるさいなぁ、どうした?」
「いいから、早く!!」
熊谷と俺達三人は皆がテレビの方へ集まっている場所へ行った
そのテレビ画面に映っていた男
漆黒のマントを羽織り、偽りの仮面をつけ、テレビの向こうで足を組んでこちらに向かっていた
ゼロ『久しぶりだな、全国民の方々』
熊谷「なんなんだ!?これは!!」
成美「ゼロって、一年前のあいつか!?」
鳴「・・・捕まったんじゃ」
鳴は、雄大の方をチラッと見た
雄大「・・・ゼロ!!」
ー東京中央大学ー
「ゼロって、あのテロリストかよ!?」
「なんで?テレビ局はなにしてんの?」
いつもなら学生で賑わう食堂が、今日は悲鳴が飛び交っていた
テレビの前に多くの学生が集まり、ほとんどの学食の席が空いている。その後ろで一人で電話する男
西「あぁ、動きだしたみたいやな。お前等もせいぜい気ぃ抜かん事やな」
ー大阪ー
氷夜「ーーー!?」
前原「な!?」
下町の食堂でテレビの放送に手が止まる二人
渡部「氷夜さん!前原さん!テレビをみてくださいよ!!」
前原「今見てる!!」
渡部が勢いよく店の扉を開け、店内にいる人間が驚いたように振り向く。その言葉に怒るように前原は怒鳴った
前原「これやばいっすよ!!また、一年前みたいな事に!!」
氷夜「それよりも、問題がある」
今まで隠してきたゼロの脱獄をどう弁明する気だ?
やはり、公に公表すべきだったんだ!!
クロノスが脱獄してから、警察上層部はこれを秘匿すべきと言ってきた
つまり、国民は檻に入ってるはずの犯罪者が何故世間に出ているのか?という疑問を持つ事になる。
氷夜「行き着く先は、警察の信頼の瓦解」
ー京園寺邸宅ー
大空「ハハハ!!ついに動き出したか!!」
星蘭「あら、お兄様。嬉しそう」
二人はテーブルを挟んでテレビを見ながら会話していた
大空「そういえば、躯流楽の奴は最近見かけんなぁ。どこでなにをしてるのやら」
星蘭「ふふふ、自由な子ですからねぇ」
そんな会話をしているとふと扉が開く。京園寺財閥の芸能部門会長がそのテレビ画面を見て固まった
大空「おぉ、帰ってたのか。テレビを見て見なさい。あのテロ組織が映ってるぞ」
星蘭「いけませんわお兄様。椎名にあのテロ組織の事は・・・」
椎名「ゼロ・・・許さない」
あの男は、裏切ったんだ!!
ーとあるホテルの一室ー
ルシファー「ぁあ?あいつの抹殺は取り消しだ?」
なめてんのか、という顔で真城の顔を見るルシファー
真城「申し訳ありません、クライアントがそれを中止されたので」
ルシファーは、舌打ちするとテレビをつけた
そこにはもちろん仮面のあの男が映る
真城「ーーーなっ!?」
ルシファー「あぁ?」
真城は、驚き後ろに倒れる
真城「・・・パンドラが動くのか」
ルシファー「・・・こいつが、ゼロ」
ー雑居ビルの地下ー
殺し屋はコーヒーを飲みながら、テレビ画面を見つめていた
狩真「・・・」
ゼロ、貴様は再び俺達と戦うってのか
ーとある暴力団事務所ー
「猫語さん!!テレビを!!」
猫語「んにゃ!?」
猫語は、頬を赤らめ目を輝かせていた
猫語「んにゃ~!!一年前の時みたいだぁ!!」
ー名花女学院ー
「なんでこいつが!?」
「警察に捕まったんじゃないの?」
「警察は駄目ね」
「怖いね、綾乃」
綾乃「・・・どうなるの、世界は」
ー七つ星幼稚園ー
幼稚園内では、テレビの時間だったのだろう。急に画面が変わり園児達が怖がる
「テレビ変わったぁ」
「なにこれぇ?」
園長「まぁ、怖いわぁ。警察はなにしてるのよねぇ。真夜さんも、怖いわよねぇ」
真夜は、園児が真夜が座っている膝の上に乗っかかってきたが、真夜は憤怒の目で画面を見ていた
真夜「・・・えぇ、」
ゼロ・・・
貴様さえいなければ!!
貴様がいるから世界は変わらんのだ!!
陸「・・・ふーん、パンドラねぇ」
ー建立大学ー
昼時の食堂のテレビが強制的に移り変わる
今馬「なんだ!!」
鎌足「おぃおぃ、こりゃやべえって!!」
水葬「・・・」
今馬「なぁ、終夜はどう思う?」
終夜「・・・」
鎌足「おい!終夜!」
終夜「・・・え?あぁ悪ぃ」
こいつが、ゼロ
俺の事をゼロは、知ってるのだろうか
いや、知ってるはずだ!!死山先生の言う事が事実なら俺はゼロと一年前に必ず接触してるはずなんだ
ー黒神邸宅ー
黒神「・・・」
「いきなり出てきて生意気な奴だ」
黒神は声がした後ろを振り向かずに言う
黒神「挑戦、だろうかねぇ」
貘亞「だが、生意気だからこそいい。人間は、適度にスパイスがかかってるほうが面白いものだ」
黒神「ふんっ、お前が言うと重みがあるな」
貘亞「どの口が言う」
二人は、親友同士であり、仲も良い
ゼロ『我々は、再び世界に異を唱える!!』
ゼロは、手を胸にあてて言う
ゼロ『全てが、戻ってしまった。我々が決起し行動した筈の世界が忌まわしい人間の欲の巣窟へと逆流している!嘆かわしい、こんな事があっていいのか?いいや、あってはならない!』
マントを翻し決意を示す
ゼロ『この欲の蔓延した腐敗した世界に我々は反逆しよう!!全ての欲に踏みにじられた人々よ、これよりこの先我々が人の皮を被りし悪魔に裁きを下す!!!』
その放送が終わってから世界が混乱した事は必然であった