〜54章〜 封印した過去
ー洋館内ー
「帰ったみたいだよ」
「・・・ふぅ、そぅか。」
「あの老人何者?」
「・・・入れ」
その男の声とともに、扉が開く
「どうも、どうも」
「・・・ん?あんた誰だよ」
「私の顔をお忘れかしら?」
老人の口から妖艶な女の声が聞こえた。その老人は自らの顔を引き剥がすとその調整していた身長を直す
「お久しぶりね、」
「はは、なんだあんたかよ。しかし、これはどういう事ですか?ここには俺とあんた以外に人を入れないって約束でしょう?それが分かってーーー!?」
「ハハハ、彼女は千の顔を持つ魔女。君は知らないだろうが別名、レッド・ヴァンパイア」
「・・・秘中の秘ってやつですか」
不適に笑うと再びその悪魔を見た」
「相変わらず、秘密主義か。メフィストフェレス」
メフィストフェレス「フンッ、悪魔だよ俺様は・・・」
選民思想が強く、独善的であり、弱者は敗者という生き方を貫いてきたこの男が敗北した唯一の人間。
田辺雄大
メフィストフェレスという仮の名を語る悪魔の心には、その時の記憶が色濃く残っていた
東京大学法律サークル
洋館に行った日から、一日たった。あの日の不気味さがとれない雄大は、あの日の事を三人で整理していた。
鳴「やっぱり、」
雄大「だから、あの場にい続けるのは危険だったんだ」
成美「けどさ、問題は解決したわけじゃないぞ?」
雄大「もう一度警察に行って来るよ」
成美「今度は俺達もいくぜ」
鳴「えぇ、行くよ」
雄大「ありがとう、俺一人で行くよりもきっと効果があるよ」
実際、雄大一人よりも多角的な視野で物事を見る事が可能な観察眼の異名を持つ鳴、チャラチャラした見た目で相手を油断させて引き出すべき情報は必ず引き出す成美、オールスターの雄大、この三人なら腐敗した警察の統制をどうにかできるだろう。
雄大「まずは、熊谷さんを紹介するよ」
鳴「確か、雄大の知り合いの刑事よね」
成美「ほぉー、そりゃ力になってくれるだろうなぁ」
この三人が東京中央大学の門前から出た数秒後の事だった
人には必ず過去という影がつきまとう。それは、実際の影同様に拭い去る事はできない。じぶんが生きてきた証として必ず自分の後ろに刻まれている。雄大にも勿論過去がある。楽しかった思い出、悔しかった思い出、悲しい思い出、様々な思い出が人にはあるだろう。だが、得てして人には封印している思い出がある。
いや、この場合は記憶というほうが正しいのだろうかーーー
「・・・雄大?」
その声がした刹那、雄大はその声に振り向いた
封印していた記憶、眠らせていた軌跡、思い出したくない思い出、決して開けてはならない禁忌の箱がこの時開いた瞬間だった
雄大「・・・お前、・・・結衣か?」
その物語は、中学まで遡る。まだ、雄大と終夜が共に机を並べていた頃の話し・・・