〜50章〜 爆炎渦中
ルシファー「で、今回は何の用だよ。」
雨が降り、車の窓には雨雫が垂れる
黒塗りの車の後部座席で話す二人
といっても、猫目の執事は真摯にルシファーの方を向いているがルシファーは顎に手をあてて、窓を見ていた
真城「はい、今回貴方様にはこの男の抹殺を依頼されております。」
真城は、写真と数枚の紙を渡した
ルシファー「・・・あ?・・・こいつは確か・・・あの時の。」
真城「名前は夜羽終夜。今回のターゲットです。」
ルシファー「こいつが、」
メフィストフェレスの野郎はこの男の事を言ってやがったのか。
あの日ーーー、
メフィストフェレス「無論、夜羽終夜です。」
ここは、地獄の黙示録の会議に使用されている塔の最上階
アスモデウス「ン?なんでよ、そいつがいったいなんだってのさ。」
メフィストフェレス「お忘れでしょうか?夜羽終夜は一年前にあの島にいた。」
マモン「しかし、彼は確か田辺雄大の隣にいるただそれだけの存在じゃ?」
メフィストフェレス「・・・えぇ、確かに。あいつにはその程度の価値しかありませんよ。」
ベルゼビュート「その男を知ってる風な口ぶりだな。」
メフィストフェレス「・・・。」
ルシファー「つーかよ、ンなもん、俺がわざわざやらねぇと駄目なのか?殺しならレヴィアタンにでもやらせろよ。」
真城「レヴィアタン様は以前彼に敗北しております。」
ルシファー「ほぉー、そりゃ初耳だな。」
真城「やっていただけますね?」
ルシファー「クソジジィの命令ならその下の俺はそれに従うしかねぇだろ。」
ルシファーはため息まじりに外を見続けていた
真城「プロメテウス・・・」
ルシファー「・・・あ?」
真城「彼の所在をご所望していらっしゃるのなら、私どもでーーーぐっ!?」
ルシファーは真城の胸ぐらを掴み睨みつけた
ルシファー「あぁ?なんの事だ?」
真城「・・・、ルシファー様の私怨の方プロメテウス。彼はパンドラの一人であり地獄の黙示録の目論見と同じなのでは?」
ルシファー「・・・テメェ、何が言いテェンだ?」
真城「パンドラを掃討する事が地獄の黙示録内の意見と伺いました。でしたら、その目的とルシファー様の目的はなにも食い違いはないのではありませんか?」
ルシファー「・・・」
真城「ルシファー様が私怨で動かれては、他の大罪の方々に弱みを付け込まれる恐れがある。そうなっては、せっかくの地位がなくなる可能性すらでてきます。・・・よってーーー」
ルシファー「あぁアア?つまりテメェは、この俺が私怨で動いて足元掬われるかもってビビってる腰抜けに見えんのかぁああ!?」
真城「捉え方はお任せします。ですが、貴方様もプロメテウスの所在を気にはしているはずです。」
ルシファー「・・・」
確かにな、あの日京園寺邸で見た野郎の顔
そして、アリスと名乗るあの女
居場所さえ掴めれば、俺が乗り込んで殺す事は簡単だ。だが、あの野郎の居場所は分からねぇ。そもそも、こいつの言ったとおり、地獄の黙示録のネットワークを使えば見つかるかもしれねぇが、あの中には俺を忌み嫌う連中がいる。俺の過去を調べてそれを使い俺を失脚させる事が可能だ。
俺は、自分の保身欲しさに恐れてるってのか?
ルシファー「・・・この件は、俺一個人の問題だ。俺一人でかたをつける。テメェらはひっこんでろ。」
そうだ・・・
保身なんて関係ねぇ!!
俺の過去とは俺自身がケリをつける!!
ルシファーは遠くを見るように窓を見た
『こんにちわ~!!』
『こら~~~~!!なんで、閉めるのよ!!あたしは、協力者だぞー!!』
『う・・れ・・・・しぃ。』
・・・
俺には、目的ができた。
惰性で続けていたこの組織にも価値ができたのかもな。必ずあの男を・・・今度こそ・・・
「うわ!!!」
ギャィーーーーー
急ブレーキがかかり車が止まった
真城「・・・なんなんですか、いったい。」
「申し訳ありません。人が目の前に急に現れて・・・」
真城「・・・あの男は、」
少し前
ここは黒神王界の所有する邸宅
広すぎるその敷地に大きすぎる建物、しかし、その邸宅に住んでる人間はあまりに少ない
そんな大きな家の一室
コンコン
黒神「入れ。」
真夜「父上、失礼します。」
黒神「おぉ、真夜か!どうした?」
黒神は、書物を読んでいたのを止め、真夜の方へ向く
真夜「今日、パンドラについて知っている男がいました。」
黒神「・・・ほぅ、それで?」
真夜「父上は、パンドラは一年前にこの日本と我々黒神家の命を奪おうとした憎き相手だと仰いました。そして、パンドラの事は警察内部でもごく一部しか知らないと。」
そう、警察はパンドラの事は知らない
一年前に戦争に参加した警察は軽く見積もっても、全国の警察の十分の一は参加した。それに加えて、自衛隊や特殊部隊等日本の精鋭が集められた。
だが、ほとんどはその組織についてなにも聞かされてはいなかった。ただの、テロ組織という事だけで具体的な詳細は結局分からないというのが警察上層部の公式見解だった
つまり、全国の人間が知ってるのは、ゼロというテロの指導者と、ゼロが率いる謎のテロ組織についてだけである。
また、白幻島の屋敷に入った人間の一部だけがパンドラについて少しばかり知っている程度である。もちろん、その一部の連中は個人でパンドラを調べ上げた
真夜「・・・その男は、私と同い年ぐらいでした。・・・奴はパンドラかもしれません。・・・私は憎い。」
黒神「確かに、その年でパンドラについて知っているのは妙だ。・・・だけどね、真夜。」
黒神は真夜の方へ行き頭をゆっくりと撫でた
黒神「それだけで人を疑ってはいけないよ。私は、真夜に疑問を持ち物事に取り組める人間になりなさいと言ったが、人を疑えとは言ってない。・・・いいね?」
真夜「ですが、・・・」
黒神「もう寝なさい、真夜には危ない事をしてほしくはないんだよ。」
真夜「・・・はい、父上。」
黒神「そぅそう、最近幼稚園に行ってるそうじゃないか?」
真夜「はい!社会勉強を兼ねて行ってます!」
笑顔で答える真夜、人を土下座させた時とは全く違った顔だった
手を胸元で組み、顔を赤らめ照れるように喋っていた
黒神「楽しいかい?」
真夜「はい!!私の最近の生きる目的です!!」
黒神「生きる目的とは、オーバーだな。はっはっはっ!!」
黒神は笑いながら再び書物に手をやった
黒神「しかし~、あれだな。お前の護衛を更に増やしたほうがよいかもしれんな。」
真夜「え?何故ですか?」
黒神「おぃおぃ、決まってるじゃないか。最近、物騒になってるからね。私のコネでなんとかしておこう。」
真夜「はい、父上!」
時は戻りーーー、
真城「・・・あの男は、」
その男は、髪が逆立ち筋肉質な上半身をむき出しにして、鮫並みの鋭利な牙を持った化物
アレス「ギャィアアアアアアアアア!!」
真城「・・・まさか、パンドラ!?」
ルシファー「・・・」
真城「いけません、ルシファー様急いでお逃げ下さい!!」
ルシファー「いや、無理だな。」
ルシファーは怠そうに外を見た
真城「そんな、囲まれている!!?」
ルシファー達の車両を四方で塞いでいた
ゴーゴン「フフフッ」
グライアイ「・・・」
サイクロプス「よしっ」
真城「くっ、いったいどうすれば!!」
ルシファー「おぃ、運転手!!このままあのデカブツに突っ込め!!」
無茶な話である
アレスは肩からRPGを装備していて、近づけば間違いなくクルマは灰になる
「・・そそ、そんな事をしたら中にいる私達は・・・」
ルシファー「アァ、ペシャンコだ!!だがな、俺はここから出てあのクソ野郎共をぶち殺す!!スクランブルエッグになるのはお前だけだ。」
「ま、待ってくださいよ。私には、家族が・・・」
ルシファー「・・なぁ、今ここでミンチになるのとあっちで潰れるのとどっちがいぃ?」
「・・・そ、そんな、」
ルシファー「あぁ、駄目だ駄目だ。お前みたいな甘ちゃんにはこれか?・・・お前は、地獄の黙示録の下っ端だ。テメェの家族調べ上げてお前の後をすぐに追いかけてもらう事もできんだぜ?」
アレス「・・・ア。」
「うぉぉおおおおおお!!!」
車は白い煙を上げてアレス目掛けて突撃してきた
アレス「煙?・・・だが、愚かな、」
ドッという音とともに、アレスはRPGをぶちかました
「う、うぁぁぁぁああああああああああ!」
一人の男の悲鳴と共に車が勢いよく燃え上がる
アレス「任務完了だ。」
ゴーゴン「アレス様!!後ろです!!」
アレス「ーーー!?」
ルシファー「調子に乗ってんじゃねぇぞぉおおおおお!!!」
アレス「なー!?」
ルシファーは、アレスの心臓目掛けて腕を突っ込んだ
致命傷は確実になる
ルシファー「ハンッ!!」
ゴーゴン「チッ、やられた!!早く!!アレス様の援護に!!」
上手い手だ!!
車の中から白煙を上げ、四方に散らばった私達の視界を遮った
サイクロプス「くそ!!結構距離があるぞ!!」
そして、車をアレス様の近くまで引きつけRPGで狙いを定めた一瞬の隙をついて車内から脱出した
グライアイ「ヤバイよ!!遠い!!アレス様ーーーー!!」
全員の視覚を奪いつつ、この離れた位置での陣形への最善手段をあの危機的状況から考え抜く頭脳、そして、並外れた身体能力、そしてーーー
真城「それを、やり抜くだけの覚悟!!ルシファー様、やはり貴方は・・・」
ルシファー「死ね、クソ野郎。」
アレス「うっ、が・・・ぇ、」
ドサッ
アレスがその場に倒れこむ
真城「悪魔だ・・・。」
ルシファー「あー、怠ぃ。」
ー七つ星幼稚園ー
子供の声で賑やかな園内
「お姉ちゃんが鬼ね!!」
「うああ、逃げろ!!」
二人のやんちゃそうな園児が真夜のお尻を触って逃げる
真夜「おい、貴様達!!・・・たくっ。」
幼稚園児に軽くあしらわれるその姿は、先日の終夜を土下座させた人と同一人物とは思えなかった
園長「ふふふ、ごめんなさいねぇ真夜さん。子供の相手は疲れるでしょう?」
真夜「いえ、私は将来先生になりたいので」
園長「あなたみたいな素敵な方が先生なら、父兄の方々もさぞ安心なさるでしょうね。」
真夜「いえ、そんな。」
真夜は照れたように頬を赤らめる
園長「あー、そぅそぅ。門前にあなたのお客さんが来てたわよ。」
真夜「・・・お客さん?」
真夜は急ぎ足で門前に向かうとそこに一人、黒いハット帽子を被った奴がたっていた
真夜が来るなり、手紙を渡した
その手紙を読むと真夜は、
真夜「・・・そうか、貴様が新たに動員されたボディガードか。愛再とは、もう会ったのか?仲良くしてくれよ、お互いに私を守るナイトなのだからな。・・・あぁ、そぅそぅ。名前を聞いてなかったな。貴様、名は何と言う?」
その男は、黒いハット帽子をとり、薄っすらと笑った
陸「京園寺陸・・・と申します。」
真夜「うむ、我が身を守るため精進せよ。」