〜42章〜 二人と二人
ロシア大手企業ビッグファイブの内のひとつ
『Lonely Six』
世界でも有数の製薬品会社
有名な投資家がこの企業の株を多く保有している。
それだけ人気も高ければ信用度も高い。
ー待合室ー
一人の男がコーヒーを飲みながらパソコンにでている世界の景気指数に目を光らせていた。
スーツ姿のそのロシア人は四十ぐらいの男
「・・・、いつになったらまともにこの部屋に入ってくるんだい?」
男はパソコンから目を逸らさずに言った
猫語「僕は自由な猫さ。入り口は僕が決めるにゃ。」
「愛再、君はいつもどこから入ってきてるんだい?僕はそれが永遠の謎だよ。」
猫語「ハハッ、まあねゃ~。・・・ダニール、僕は無駄話をしにきたんじゃないんだ。」
ダニール「ほぉぅ、いったい何しに私のところまで足を伸ばしたんだい猫さん?」
猫語「新しい奴をくれ。」
ダニールがパソコンから猫語に目線をうつした
ダニール「駄目だ、まだあれは試作品。実験がまだ進んでない。今は副作用の危険がありすぎるくらいだ。だいたい愛再、君程の暗殺者なら薬物投与しなくてもーーー、」
猫語「いたんだにゃ~、一人。この僕以上の逸材が。」
ダニール「ルシファーの事かい?」
猫語「んーん、まぁルシファーも僕よりずっと強い。一般人でいたんだ。」
ダニールはコーヒーを飲みながら笑った
ダニール「それは面白いジョークだ。」
猫語は、自らの身体を見せた
ダニール「なんだ、熊とでも戦ったのか?」
猫語「信じろよ。相手はパンドラを追い詰めた奴だよ。」
ダニール「ほぉぅ、あのパンドラをねぇ。何者だい?その男?」
猫語は、ニコッと言った
猫語「あれ?僕、男って言ったっけ?」
ダニールは、一瞬眉を細めた
そして、ため息混じりに答えた
ダニール「田辺雄大。警察内部では英雄扱いされている大学生だ。」
猫語「知ってんじゃん。相変わらずだねぇ。」
ダニール「やめておけ、相手が悪い。」
猫語「この僕に、それを言うかい?」
ダニール「はぁー、お前よほど興味があるんだな。」
猫語「もち!」
パンドラ内部
クイーン「ゼロ、入るわよ。」
ゼロ「三四か。なんだ?」
クイーンは、ため息をついて言った
クイーン「いいかげん・・・はぁ~。いえ、いいわ。それより、地獄の黙示録の動きが活発化してるわ。どうするの?」
ゼロは、片手で仮面を外す
それにあわせてクイーンも顔を隠すフードをとった。
パンドラのトップゼロは仮面をかぶり、その付き人であるクイーンはフードで顔を隠す。
お互い世間にも組織内にも顔を見せられないもの同士。
クロノス「ん~、どうしようかなぁ。」
三四「世界は動いてる。私達パンドラの力で世界を・・・」
クロノス「分かってるよ。」
いずれ全てを終わらせなければならない。
それまでに、連中との戦争は避けなければな
地獄の黙示録の規模は我々パンドラの数十倍
三四「そういえば、以前のアジトをリークした奴分かったの?」
クロノス「ぁあ。大方ね。間違いなく、ファントム・エンジェルだろう。」
三四「何者なの?そいつ。」
クロノスは、窓から見える海を眺めながら答えた。
クロノス「謎の多い人でね。そう言う意味では、あの『レディ・ヴァンパイア』と肩を並べる。」
まぁ、レディの方は俺がよく知ってるからな
三四「あのねぇ、あたしにも分かるように説明してよ。誰なのよその二人。そもそもそれ人の名前じゃないよね?」
クロノス「もちろん。これはまぁ~、通り名ってやつかな。二人とも世界中から指名手配されている犯罪者だ。その素姓は分からず、噂だけが一人歩きしてる。」
三四「なんでそんな得体の知れないものにあたし達パンドラが狙われるのよ。・・・てか、暑い~。」
三四は、そう言うと上着を脱ぎ水色のタンクトップに短パン姿になった。
三四も年頃の女の子であり成熟しかけの身体が露わになる。
クロノス「まぁ、あの人は昔からわけの分からない人だったからねぇ。今回の件もただの暇つぶし程度にしか考えてないだろう。」
三四「ふーん。まぁ、あたしはパンドラが生きてさえいればいいけど。・・・ところでさ、クロノス。」
クロノス「なんだい?」
クイーンは、身体をぐいっとクロノスの前に持っていった
三四「年頃の女の子が肌をだしてるのになんにも感じないの?」
三四は、ニヤニヤしながら言った
クロノス「クスッ、襲ってほしいのかい?」
三四「ぁ~あ、あんたじゃつまんない。」
クロノスは、小さく笑うと席につく
ゼロ専用の椅子に。
クロノス「まぁ、君も年頃の女の子なんだからそういうのに興味があるのは分かるけど、僕は勘弁してくれ。」
三四「はいはい。」
クロノス「終夜だったら、違う反応を見せてくれるだろうにって思ったかい?」
クロノスは、笑いながら言った
三四「ばば、馬鹿じゃない?そんなの期待してないし!!」
三四は、顔を真っ赤にして手をブンブン振り回して否定した
クロノス「君の心と態度、どちらが本心かな?」
三四「・・・ふん。じゃーね。」
三四は、スタスタと出て行った
クロノス「ふぅ。女って追い出すのに苦労しないな。」
ま、あいつが特別分かりやすいってだけなのかもしれないが。
ーとある病院ー
白髪の男がベッドから窓の外を眺めていた
病院の入院服のようなものを着て大人しく腕を頭に回して、しかめっ面のそいつは「ぁ~」とため息をついた。
ルシファー「・・・アリス。」
あいつが俺が殺したアリスの妹ってんなら、俺はどうすればいい?
あいつは俺を殺そうとしたあのアリスは、・・・俺を憎んでんだろうなぁ
ルシファー「ケッ、当然か。」
猫語「なにが当然なの?」
ルシファー「どぁぁぁあああ!!」
猫語は、ひょこっとルシファーのベッドの下から出てきた
ルシファー「テメェ、んでこんなとこにいやがる!?」
猫語「僕はルシファーのパートナーだよ?いて当然!!」
ルシファー「チッ、んどくせぇ。」
ルシファーは、首は窓を向いていたが目だけ猫語の方に向けた
ルシファー「おぃ猫語。テメェ、その傷どうした?」
猫語「やられた。」
ルシファー「はぁ?お前がそんなボコボコにやられるような奴か?」
猫語「いやぁ、照れるなぁ。ルシファーは知ってる?田辺雄大って。」
ルシファー「いや、聞いた事ねぇ。んだ?そいつにやられたのか?」
猫語は、ルシファーのベッドに顔だけ乗せて、にゃ~っと小さく言った
ルシファーの前では、本当の猫のように甘える愛再。
彼の居心地の良いところはここなのかもしれない。
ルシファー「ぁ~、猫語。お前、パンドラについて知ってる事教えろ。」
アリスの妹かどうか、確かめる必要があるからな。
こいつなら何か知ってるだろ。
猫語「知らない!」
ルシファー「もうちょっと考えてから答えろよ。」
猫語「なんでにゃ?」
ルシファー「俺がここにいる理由を見つけれそうだからだ。」
猫語「分かったよ。僕の方でも調べてみるよ。その代わりーーー。」
ルシファー「・・・あ?」
えー、コホンッ。
俺は夜羽終夜。
普通の学生だ。今は、とあるショッピングモールに来ている。
え?今更こんな前置きいらないって?
ですよね~。
・・・ぃや、あれなんですよ。
ちょっとでも考えごとしてないと落ち着かない。
どこにいるかって?
フッ、そりゃ~決まってるさ。
男の楽園と言えば分かるだろう?
・・・すんません、調子のりました。
三四「ねぇ、終夜!?なに一人でブツブツ言ってんの?」
綾乃「あ!!ねぇ、三四!!こっちこっち!!ほら、すんごく可愛いぃ~!!」
三四「え!?あ、本当だー!!可愛いぃ~!」
正解、ランジェリーショップです。
女の下着売り場に男一人
世の中の男子諸君、分かってくれるだろうか?
さっきは男の楽園なんてカッコつけたけど、ここは地獄ですよ。
そもそも男一人で手持ち無沙汰を隠す感が半端ないわ!!
ぁ~、帰りたい・・・わけにもいかねぇんだろうなぁ。
なんでこんな事になってるか。
あの結婚式の事件の後に帰ってくると三四が久々に遊ぼうと言い出した。
麗の事で俺を励ましてくれるって言ってくれた。
綾乃さんもその事を気にしてくれてたみたいだ。
・・・。俺には、励まされる資格なんてねぇのになぁ。
最初は断ったのだが三四が無理矢理連れてきた。
男なら絶対喜ぶ場所って言ってたから少し期待してたのは事実だけどさ。
あ、下の方じゃなくてだよ?
で、着いた場所がここ。
綾乃さんはこういうの男に見られると恥かしい性格してそうなのになぁ。
意外と平気なんだ。
説明終わりです。
だから、誰でもいい。
助けてーーーーー!!
なんでこんなに派手なの?
いゃいゃ、だってだよ?もうちょっと地味でもいいじゃんねぇ~。
黒と白で統一!!
あ!!これいい!!
ちょうど黒白って俺の好きな色だしね!!
・・・派手すぎる。
全体ほぼピンク。
その中に、紫・緑・赤・黒・etc…
こんなのはいたらお父さん悲しむよ!?
しかも、なんか良い匂いするし。
・・・あれ?
俺ちょっと、変態みたいじゃね?
匂いとか感想とか言っちゃってさぁ!!
あれだな、変な事考えない!
うん、そうしよう。
そういえば、雄大怪我したって聞いたけど大丈夫かな。
あの時病院寄ってればよかったかな。
いや、今も集中治療室かもしれないし迷惑だろうな。
けど、あの関西弁の男が言ってたのが事実なら雄大は戦って倒れたって。
けど、あの雄大が負けるか?
いったい、なにが。
雄大の為になにかできないかな・・・。
俺はーーー。
三四「ねぇ終夜!!」
終夜「ん?」
三四「この緑と赤、どっちがいいかな?」
・・・俺の心を折ってくるなよなぁぁぁあああああ!!
終夜「てか、派手だな。どっちでもいいと思うよ。」
なるべく普通に振る舞う
ここで慌てたら男の見栄もなにもあったもんじゃない。
なるべく興味ね~よ、的な感じでいくのが男のカッコつけと俺は思う。
三四「ねぇ~、どっち?」
上目遣いで胸の谷間があいた服を着てる三四。
こ、こんなの・・・
終夜「む、無理だぁぁぁああああ!!」
俺には耐えられんーーー!!
三四「あ、逃げた。」
綾乃「からかいすぎだよ。」
三四「買い物終わったら終夜を探しに行きますか。」
終夜達がいる五階のランジェリーショップより下の一階に二人の姿があった。
一人は病院から支給された杖をついている。
一人は猫のような目で辺りをキョロキョロしている。
猫語「うわぁぁぁ!!見て見て!ルシファー!!綺麗なところだにゃ~!!」
ルシファー「人ごみが・・・ウザってぇ。」
怠そうな目と声で話す男を他所に猫目の男はキョロキョロとあっちこっちと動き回ってる。
ルシファー「・・・」
ルシファーは、ごったがえす人ごみの中遠くを見ていた
『アリスです!!』
『私は、先生が好き。でも、それ以上に妹が大事なの。』
『う・・れ・・・・しぃ。』
ルシファー「・・・」
あの時の選択に俺は後悔してるのか?
白い世界に赤き後悔の色を散らしたことを
ケッ、ありえねぇだろうが
この俺が、・・・今更。
ルシファー「・・・あ?」
ルシファーは、辺りを見るとさっきまでのキョロキョロ猫は何処かへ行っていた。
ルシファー「あいつ、どこいきやがった。」
終夜「ハァハァ、ここ何処?」
広い建物ってわかんねぇなぁ。
終夜の視界が天井を見た
後ろからグイッと引っ張られたのだ
終夜「・・・うぇ?」
猫語「君、今暇かにゃ?」
三四「たく、終夜のバカどこ行ったのよ!」
綾乃「三四があんなことするから。」
三四「確かにやり過ぎたけどさぁ。あ、あの人暇そう!!」
綾乃「あ、ちょっと三四!」
三四は、その人の襟元をグイッと引っ張った
三四「すみませ~ん!今人探ししてるんですけども、あなた暇ぁ?」
ルシファー「・・・あ?」