〜40章〜 鮮血の結婚式
雄大は、昔からボクシングをやっていた
そのため、速いものを捉える目は鍛えられていた
しかし、その雄大の目をもってしても反応が遅れるほどのスピード
猫語は雄大めがけて走ってきた
いや、走ってきたというのはあとからわかる表現になってしまう
最初に雄大が思ったのはこうだ。
雄大「ーーー!?」
急に目の前に現れやがった!?
猫語が刀を振り下ろすと同時に雄大は下がった
猫語「はにゃ?よけられた?」
雄大「ハァハァ、」
こいつ何者だ!?
速すぎるだろ!!!
落ち着け、すぐに警察がやってくる。
それまではーーー
猫語「ねぇ!君さぁ。」
猫語は、刀をくるくる回しながら雄大に話しかけた
猫語「強いね。」
雄大「ーーー?」
猫語「僕の攻撃を避けるなんてぇ、いやはや凄いにゃあ!!」
雄大「貴様、何者だ!!」
猫語「僕は、猫語愛再。十四歳だよ!!」
雄大「こいつ。」
完全に常軌を逸してる
ふざけた言葉使い、人を人とも思わないあの斬りかた
猫語「さすがは、僕の駒を潰しただけはある」
!?
雄大「なんの事だ。」
猫語「聞いてるよ。毒田一男を倒したって。」
雄大「毒田一男・・・?」
!!
雄大「あの斧男のことか!!」
猫語「やぁっと思い出したぁ。あいつは僕が送り込んだモルモットさ。」
もっとも、本命のクイーンは仕留めそこねたみたいだけど・・・
雄大「つまり、テメーが。リバースって奴か!!」
猫語「リバース・・・?ぁ~、はいはい。」
確かあいつがそんなIDで・・・
猫語「ま、そんなとこかにゃ~。」
雄大「お前を捕まえる。」
猫語は、ニヒッと笑い再び雄大めがけて突進してきた
猫語は思った
この一撃でこいつを殺せる・・・と
しかし、猫語の考えとは別に猫語の顔に嫌な感覚が襲う
猫語「・・・ぐぅぇ!??」
雄大の右ストレートが猫語の顔面をぶん殴る
猫語は勢いよく後ろに吹っ飛んだ
雄大「俺に二度同じ攻撃が通じると思うな。」
猫語「・・・ペッ。」
あれ?
なんだこれ?
この僕が、殴られた?
・・・こいつ、何者?
猫語「・・・殺す!!」
猫語が物凄いスピードで接近してくる
さっきまでの比ではなかった
しかし、雄大の眼は既にそれを捉えていた
雄大「うぉおおおおおおおおお!!」
ドダダダダダダダダダダダダダダ
雄大の連続ラッシュが猫語をボコボコにする
猫語「がぁぁあああああーーーーー!!」
ドサッ
五十発以上のパンチが猫語を襲う
吹っ飛ぶんだ猫語はピクリともしない
雄大「ふぅ~。」
鳴「雄大!!」
雄大「鳴?どうしたよ。」
鳴「心配したのよ!大きな音がしたから。一応、式の中の人たちには問題ないって伝えたけど・・・」
鳴は、俺の後ろを覗き込み仰向けに倒れている猫語を恐る恐る見た
鳴「勝ったの?」
雄大「なんとかな。それより、あいつを警察が来るまで縛っときたい。なんかないか?」
鳴「うん、わかった。受付に行って聞いてくるわ。」
鳴が雄大の後ろを通って行こうとした瞬間ーーー
鳴「キャ!!」
雄大「ーーー!?」
振り返ると立ち上がっていた猫語がいた。
猫語「ーーー、ハァハァ。」
こいつ・・・
この僕を、ここまで・・・
仕方ない・・か。
猫語「認めよう。君は、僕が本気で倒すに相応しい相手だ。」
雄大「鳴・・、みんなのところに戻ってろ。」
鳴「・・だけど、」
雄大「いいから早くしろ!!」
鳴「・・・ぅん。」
猫語「女の子に怒鳴るなんてひどーいにゃ~。」
雄大「・・ハンッ、言ってろ。」
猫語「・・・ゴクンッ」
猫語は、なにかを飲み込んだ
なんだ?
なにをした?
猫語「はぁーーーーーー。」
猫語は、大きく息をはいた。
猫語「これを使うことになるとはね。」
ドンッ!!!!!!!!!!
雄大「ーーー!??」
なんだ???
この威圧感!?
猫語の瞳が紅く、どす黒い真紅に染まっていた
瞳が動くたびに色が残像のように残る。
うまく表現できないが今までに感じたことのないドス黒いヤバさだ。
猫語「カァァァァァァアアアア!!」
ズバァッーーーン!!!
雄大「カハッ!?」
雄大は、理解が追いついていなかった
腹部に強烈な痛みが襲い、その場に倒れこむ。
その数秒後気づいた。
自分の腹部から血が大量にでていることを。
猫語が雄大の腹部を切り裂いたこと。
雄大「なんだ・・・、その力は・・?」
雄大は倒れながら問うた
猫語「・・・にゃぁぁあああ。」
雄大「狂ってやがる。」
猫語「・・。」
これやると自我を保つのに苦労するなぁ
まだ、試作品って言ってからなぁ
雄大「ぐっぅ、テメェそれだけの力完全にヤバイ薬かなにかじゃないのか?」
さっきのスピード、人の領域を遥かに超越してやがる
それにあの力、人間のそれとは異なる。
猫語「・・・鋭いねぇ。かつての毒田一男が使用した物の改良版らしいんだなぁ。」
雄大「やはりな。」
しかし、どうする?
見たところあいつの傷は完全に癒えてる。
それすらも薬の力か・・・。
対して俺は致命傷を与えられた
それでも、田辺雄大は立った。
彼はどんな逆境でも、諦めることを知らないのだ。
その点を、終夜が尊敬してる一つでもある。
しかし、今回においてはそれが仇となる。
そう。今回に限っては逃げてもよかったのだ。
猫語愛再という化物相手に雄大はよく戦った。
いくら田辺雄大があのパンドラを追い詰めた人間でも、頭がきれる天才でも、負ける時は負ける。
ーーーそれが現実だーーー
雄大「・・・ガハッ」
ドタッ
猫語「楽しかったよ!名も知らない誰かさん!」
猫語の瞳の色が戻っていく
雄大は、立ち上がった
そして、猫語に向かって走った
しかし、その倍以上のスピードで猫語は雄大を突き刺した
その場に倒れこむ雄大。
身体からは、おびただしい量の血が溢れている
薄れる意識の中雄大は死を予感した
ドンッ
結婚式会場内の扉が勢いよく開いた
ちょうど終夜と西の二重奏が終了した時だった。
猫語「みぃ〜つけた!」
猫語がそう言うとあたりは騒然とした
猫語の服装には大量の返り血がついており、血のついた刀を持ってる
誰でも目を疑う光景だ
しかし、会場内でひときわ驚いた人がいた
健人「ーーー猫語さん!?」
健人の顔は真っ青になり全身から脂汗が吹き出てくる
手は震え猫語を完全に恐れていた
年は健人の方が一回りも上なのだが、そんなもの関係ないと言わんばかりの威圧感
猫語「迎えにきたよ。さぁ、帰ろう。」
猫語は、健人に向って歩き始めた
健人「うぁぁぁあああああああ!!!」
健人はパニックを起こした。
舞花は、隣で唖然としている。
猫語は健人に向って歩いている。
それを止める者などいない。
血が滴る刀を持った男で服には大量の返り血
こんな奴の前に立ち塞がるのは馬鹿としか言いようがない。
猫語もそれをわかっていた。
世の中の摂理
弱肉強食
それが絶対的な真実
人は威圧されることに恐怖する。
今の健人やこの場にいる大人がいい例だ。
しかし、そんな化物に立ち塞がる奴がいた
鳴「あなた、雄大は?」
猫語「んにゃ?」
鳴は落ち着いて聞いていた
そして、その瞳の奥には静かに怒りがあった
猫語「雄大~?」
なんだ?この女。
僕が怖くないのか?
だが、猫語は気づいた
猫語「君、震えてるネェ。」
鳴「!!」
鳴は、必死に震える手を抑えた
そして、極めて低く落ち着きを装い言った
鳴「だからなに?あたしの質問に答えて。」
猫語「にゃはははは!面白い子だなぁ。君、僕の女にならないかい?」
猫語は、そういいながら刃物を鳴に向けた
言ってることとやってることが違う
そんな事を頭に思い浮かべながら鳴は思った
鳴「・・・」
こいつ、変態だ。
猫語「僕ねぇ、女の子を奴隷にするのが好きなんだぁ!縄で縛ってぇ、僕のオモチャにするんだにゃ~。」
鳴「雄大が、あなたみたいなゲスに負けるわけがない!」
猫語「あー、はいはい。」
猫語は、今気づいたと言わんばかりの感じで答えた
猫語「そいつなら、扉の外で死んでるよ。」
鳴「ーーー!!」
猫語「さて、君を奴隷にするなら手足を切り落としとこうかにゃ~。」
鳴「・・・ざ、・・ゎょ。」
猫語「んにゃ?」
鳴は瞳に涙を溜めて叫んだ
鳴「ふざけんじゃないわよ!!あんたなんかに雄大はやられない!!あんたなんかにやられるもんですかぁああああ!!」
猫語「ふ~ん。」
鳴をめがけて刀を振り上げる猫語
鳴は、覚悟を決め目をつぶった
猫語は、刀を鳴に突き刺そうとした刹那
「人の・・・仲間に、汚ぇ手で・・触ってんじゃねぇぞ。」
猫語は、鳴の身体の前で刀を止めて声の主に振り向く
それと同時に猫語が吹っ飛んだ。
猫語「ーーーッハ!?」
ドサッ
鳴は、閉じていた目をあけた
そこには信じていた仲間の姿があった
鳴「雄大!!」
ボロボロで、血まみれの姿
今にも死んでもおかしくないはずなのに彼は立っていた
猫語「・・・どうして?」
何故あいつが立てる?
確実に心臓を貫いたはずなのに
動けるはずがない
この僕が、仕留めそこねるなんて
ありえない!!
猫語は、立ち上がった
恐ろしいまでのタフさ
これは、お互い様だろうがそれでも猫語は田辺雄大に興味を抱いた
猫語「君さぁ~、最高だね。」
猫語が床に突き刺さっていた自身の刀をとり、雄大に向かおうとした
雄大もそれに対抗した
二人が笑い、走り出す!
雄大・猫語「ぁぁぁああああああああああ!!」
ドッーーーーーン
銃声が響いた
「警察だ!!動くな!!」
猫語「チッ。君、雄大って言うんだね?」
雄大「あぁ。」
猫語は、クスッと笑い悍ましい笑顔で言った
猫語「覚えたよ。」
そう言うと窓ガラスを割って逃げて行った
警察も追おうとしたが中にいる大量の人達の方を優先した
なにより、猫語のスピードが速すぎたのだ
鳴「雄大!!」
成美「雄大!!」
雄大「お前ら、無事だったか。よかった・・・。」
ドサッ
そう言うと雄大は、倒れこんだ。
時は少し戻る
終夜「この曲は、舞花さん。貴方の事を世界で一番大切に思ってる人からのものです。」
そしてーーー
善意や思いやりという、勝手な独りよがりが招いた悲劇が幕を閉じる