〜37章〜 涙恋
結婚式会場内ロビーに、雄大と成美はいた。
近くにあるテレビからは緊急ニュースが入ったらしく雄大はテレビに釘付けだった。
テレビ「ぇー、こちら現場付近上空からお伝えしております。見えるでしょうか、倒壊したビルを中心に周りの建物までもが連鎖的に崩壊した模様です。さらには、付近で火災も発生しており辺りは大パニックとなっております。」
雄大はテレビを見ながら立ち尽くしていた
雄大「なんなんだよ、これ。」
テレビ「原因は、まだ分かってはいませんが分かり次第お伝えしたいと思います。繰り返しますーーー」
雄大は、ロビーの近くにあるデータベースから付近の地図を見ていた
成美「なぁーー!なにやってんだよーー?」
雄大「悪りぃ、ちょっと黙っててくれ。」
カタカタカタカタ
雄大「なるほどな・・。」
倒壊したビルは、空きビルだ。
前の借主は、ベンチャー系のソフトウェア開発の会社・・・か
鳴「はい、調べてるんでしょ?」
いつのまにか鳴が隣に座っていて隣のパソコンで倒壊瞬間の画像がUPされたものをディスプレイに表示させていた
雄大「サンキュ、助かるよ。」
ーーーこれは!?
鳴「雄大も気づいた?」
雄大「あぁ、この倒壊したビルが人為的に破壊されたのは壊れ方を見れば誰でも分かる。前の借主は、普通のソフトウェア開発の会社。別に怪しいところはない。倒壊に原因のありそうな物を作っておいて残していったわけでもないだろう。問題はその周りだ。」
鳴「えぇ、いくらあのビルが倒壊しても周りの殆どが壊れて、火災が起こるなんてあり得ないわ。」
雄大「その原因がこれだ。」
雄大は、端のほうにあった画像を指さした
鳴「・・・これって!?」
雄大「あぁ、あのビルが崩壊しかけてる瞬間の画像だ。そこに写ってるだろ?既に、周りの建物までもが煙をあげていたってな。」
鳴「じゃぁ、この一連の倒壊は・・」
雄大「あぁ、全て人為的に仕組まれている事だったんだ。」
鳴「いったい、誰がこんな・・・」
・・・間違いない奴らだ。
この日本でこれだけの事を成せる連中
大量の死傷者がでても構わないという作戦
一年前とよく似てやがるぜ・・・
つい先日のクロノスの脱走
画像の端に写っている軍用ヘリ
これら全て奴らパンドラに繋がる!!
鳴「雄大?」
しかし、分からない事もある。
いくらなんでも画像がUPされるのが早すぎる。
それにこんな的確に捉えた画像・・。
とある一室
カタカタカタカタ
眼鏡をかけた男がニヤニヤしながらキーボードを叩いていた
ハーデス「いっひひひ。これでぇ~、気づく人間がいるはすですねぇ。」
ケルベロス「ハーデスさん?」
ハーデスは、ビクッとしてゆっくりと回転椅子を振り向けた
ハーデス「なんだぁ、あなたですかぁ。まぁた、あの男かと思いましたよ。」
ケルベロス「なにをなさっていたのですか?」
ハーデス「ぁ~あ、まぁ貴方には隠し事は通じませんねぇ。」
ハーデスは、雄大が見ていた画像をケルベロスに見せつけた
ケルベロス「ほぅ、、画像の流出ですか?」
ハーデス「えぇ~。ゼロに楽しみを与えてるだけですよぅ。いっひひひ、ゼロが戦っているフィールドにイレギュラーを仕掛ける。私の楽しみなんですよぉ。」
ケルベロスは、にっこりとしてハーデスに言った
ケルベロス「たいへん素晴らしい趣味をお持ちのようですが、あまり根を詰めすぎて自らの首をしめない事ですね。」
そういうとケルベロスは去って行った
ハーデス「ふん、若造がぁ。いっひひひ。」
ゼロ「ふぅ、なんとかなったな。」
アトラス「ゼロ、今回の一件。まさかまた、」
ゼロ「彼は頭がいい。しかし、今回の件は別だ。もういい。」
ファントム・エンジェル・・・
貴方は、分からない事をする方だ。
ー結婚式会場ー
終夜「どうするんだ?お前がどうしたいかだ。」
ともき「会ってくる。舞花に。」
ともきはその言葉を残すと会場内に入って行った
狩真「さて・・・と。」
ーーーともき…お前、幸せになれよって言いたいって言ったよな・・・
けどな、お前の顔は諦めてない。
お前の言葉と心どっちを信じればいい?
終夜「・・いゃ、決まってる・・か。」
ともきは、広大な建物内を走っていた
ともき「ハァハァ、ハァハァ。ここ・・か。」
花嫁の控え室なんてものがあるなんて知らなかったが、聞いといて助かったぜ。
まぁ、俺には二度と縁の無い事だろうから覚える意味がねぇだろうがなぁ。
厚い扉を開けるとそこにいたーーー
舞花「ーーー!?」
ともき「ーーー・・・。」
舞花!!
やっとだ、やっと会えた!!
けど、口が震えて言葉がでてこねぇ。
舞花「・・あの?」
ともき「ーーー俺は、・・・」
好きなら好きって言ってしまえよ!!好きって言える相手がいて、手を伸ばせば届く距離なんだろ?
俺を身勝手だと人は思うだろうか?
好きな女の為に嘘をついて、それでも好きすぎてだから世間に八つ当たりして・・・
今更舞花を取り戻したいと思うのはーー
嘘をつきながら、自分は嘘をつきたくないと豪語するのはーーー
それでも、俺は世界から疎まれても蔑まれても自分の気持ちに嘘はこれ以上つきたくない
ともき「俺を覚えてませんか?」
舞花「ーーー?」
ともき「あなたから貰った笑顔のおかげで、俺は今日まで生きてこれました。あなたがくれた言葉が俺の生きる支えになってました。身勝手なのは百も承知です。自分でついた嘘を今更壊すなんて。だけど、やっぱり失いたくないんだ!!」
舞花「あなたはーーー」
ともき「俺はともきだ!!舞花!!お前のーーーーー」
舞花「病室を間違えた人ですね。お久しぶりです。」
ともき「違う、・・・俺は・・俺は!!」
健人「舞花?早く支度しろよ。って、お取り込み中ですか?」
後ろのドアからおそらく格好から新郎だろうか・・。
俺の言葉を遮るように入ってきた男
舞花「健人!ちょっと待っててって言ったじゃん!!」
健人「ハハ、悪かったよ。もうすぐ始まるから急げよ?」
そういうと、男は俺に会釈だけして出てった
舞花「はーい!」
あの笑顔・・・知ってる。
忘れるわけがねぇ、あの笑顔のおかげで俺は生きてこれた。
ずっと一緒だと馬鹿みたいに信じてた。
けど、舞花にとって俺はもうーーー
ーーーーー過去の人なんだな
舞花「ーーー!?どうして泣いてるんですか?」
ともき「・・・どうしてでしょうね。分かりません。・・・一つ聞かせてほしいんです。」
舞花「はい、なんですか?」
ともき「あなたは、・・・今幸せですか?」
舞花は俺の質問にためらう様子無く答えた
舞花「はい!!世界一幸せです!!」
にっこりと笑顔で答えてくれた
この言葉が全てを物語っていた
ともき「・・・そうですか。ご結婚おめでとうございます。幸せになってくださいね。」
舞花「はい!!もちろんです!!」
バタンッ
扉を閉めると俺は扉にもたれかかり心に穴が空いたような感覚だった。
どこか期待していたからか?
もしかしたらと・・。
また、あの頃のように戻れると。
あの頃、確かに俺たちは結ばれるはずだった。
将来結婚して、子供は何人で、名前まで考えた。
結局、あの子達には会えなかった。
ともき「甘いんだよ・・、本当になぁ。・・・・ヒクッぁあ、うぅ。」
だったら、俺にはやるべき事がまだある
人殺しの俺にしかできない
最低で最悪で地獄に行くに相応しい末路で無様にーーー
ともき「今まで、ありがとう。」