第01話 転生ですか?
今回が一番ひどいです。
見てて自分で「ダメだわこれは」と突っ込み入れました。
本当に申し訳ない!
目が覚めると、部屋の一室で椅子に座っていた。
特に目立つものはなく、普通の事務的な仕事をする部屋みたいだ。
黒と白のタイル柄の壁、フローリングの床、そして事務机。
それを見ながら、自分が死んだという事実を思い出した。
人間死ぬ瞬間は「あ、これから自分死ぬな」って分かるって言う話を聞いたことがあるけど、本当にそうだった。
別に痛みが来たわけじゃないのに、なぜか死ぬって分かる。分からないものが分かるんだから、人間はすごいと思う。
なんてことを考えていたら、
「おぅ、目ェ覚めたか」
なんて、渋い声が聞こえてきた。
声のしたほうを振り返ってみると、背広を来ている見た目20代後半くらいの男性がいた。
こっちを見て人懐こそうな笑みを浮かべている。
目を引いたのはその髪型。
いかにも自分不良ですとでも言いたそうな金髪だ。
だけど背広を着ていることから真面目そうな人、というのが第一印象だ。
と、男の人が口を開く。
「ようこそ、生と死の狭間の世界へ!俺は"神"No.3002の江草玖鳥だ!」
・・・・・・・・・・歓迎されてる、のか?
つーかこいつ神かよwwww
「おい、お前が考えていることはすべてお見通しだぞ!!」
「え、ホントに神?あの・・・・・世界を七日間で作った?」
「あ、いや、それは人違いっす。俺そんなこと出来ないし。別の神だなそれは」
「神って何人もいるの!?」
「ああ、当たり前だろ?こんなに広い世界を一人で管理できるわけ無いだろう。会社のようなものだと思ってもらっても構わんよ。」
「それって・・・・どゆこと?つかタメでいいっすか?」
「すでにタメ口だろう!?今さらだからもういいよっ!!つまりだなぁ・・・・・」
以下、要約。
① この世界は、訳あって本当の死後の世界に連れて行くことが出来ない者たちを留めておく所。
② 俺たちが神と呼んでいる者は複数いて、それぞれの役割の場所ごとに区分されている。
③ 本来死んだ魂は一度死後の世界に運ばれて、そこで輪廻転生の教えの通りまた生の世界に戻ってくる。
④ しかし、死んだ魂の中にはさまざまな問題を抱えたものもあり、普通に死後の世界に行くことが出来ないものがこの世界に来る。
⑤ 江草さんは貧乳が好み。
以上、関係ないものも含まれてるけど気にせずに要約終了。
胸の話をしているときの江草さんはまるで純粋な子供のように凄く目がキラキラしてた。
あー、これがダメな大人ってやつか。
輪廻転生があったり、神が複数いたりって、ホントに仏教の考え方だな。
釈迦は何でも知ってたのか?
とりあえず概要だけは分かったけど、まだ聞いていないことがある。
「江草さん。俺は何でここに留まっているんすか?何か俺の死ぬときに問題があったと?」
そう、俺がここにいる理由だ。
ここに俺がいるということは、それだけで俺が問題を抱えているということだ。
ま、大方神様が「不幸にしすぎた」とかそんなもんだと思うけど。
じゃないと一生家から出られない訳がない。
そんな話は俺が生きているうちに何度も読んだ夢物語だ。
だけど、そのフィクションが今目の前で起こっている。
だったらその筋書きも同じだろう。
神様が僕に何かしたことは明白だと、思っていた。
だから、次に江草さんが言う言葉の意味が最初はまったく分からなかった。
「いんや、お前が生きているうちに問題は何もない。むしろ幸せな人生を送ってきている。よっ、幸せだったなーお前の人生!」
自分が不幸だと思っていた俺には、
神様から何かの手出しがあったんだと期待していた俺には、余りにも酷な言葉だった。
「・・・・え?」
声を出すのに10秒近くかかった。
それでも搾り取るような声しか出なかった。
『いんや、問題は何もない。』
あんなに辛い生涯を送っていながら、何も問題はなかった?
『幸せだったな、お前の人生!』
あんなに友達一人いない、狭い病室で過ごした20年間が幸せだった?
その言葉を信じることができなくて、何度もその意味を確かめようと頭の中で繰り返して、
そのせいで言った言葉が一字一句間違っていないということを何度も思い込まされるようで。
生まれてこの方一度たりとも忘れたことのない感情が自分の中に沸き起こった。
妬み、苦しみ、悲しみ・・・・
ずっと、人前では見せることのなかった感情を、江草さんの方を向いて吐き出すように叫ぶ。
「何が問題は無いだ!」
江草さんは驚いて、そして困ったような顔でこちらを見た。
「驚いたな、そんな表情も出来るなんて、ね」
「五月蝿い!俺は幸せなんかじゃなかったんだ!」
いちいち行動が癇に障る。
もう自分が何を叫んでいるのか分からなくなってきた。
「顔の知ってる友達はいない、好きな食べ物も食べることを禁止される、終いには食べ物が喉を通らなくなって点滴・・・・・・
そんなの、幸せなはずが・・・・・」
江草さんは悪くない、彼がやったわけではないと分かっていても、口から零れ出る呪詛の塊を、
「はいダウトぉ~」
他の誰でもない、江草さんの能天気な声が、遮った。
「お前、実は分かってるだろ?気づいてるんだろ?」
「え・・・・な、なに・・・・が?」
自分の口からは微かな声しか出ない。
「さっき、自分で言ったよな、『顔の知ってる友達はいない』って」
・・・・・・江草さんは、ずるい。
「それって、顔が知らない友達はいなくても」
・・・・・・自分でも、分かってて言ったことを
「『顔の知らない友達』なら、居たってことだもんな?」
こうも簡単に指摘してくるのだから。
「・・・・・・・」
「おや、違ったかい?」
「いえ、確かに俺は・・・・いえ、ネットの中の俺には、かなり多くの友達がいた。」
「それも何百、何千という単位で、だろう?」
「っ・・・・ああ」
なぜこんなに俺のことを知っているのだろう。
その通り、俺には自分によくしてくれる人たちがかなり大勢いた。
「お前は、何人もの人々に支えられて生きてきた。たかがネット、そう思うやつは少なからずいる。
だけどな、ネットって、捨てたもんじゃねえよな。真摯にお前の事考えてくれるやつだっているんだよ。
お前がさっき言った『自分は幸せじゃなかった』って言葉、そいつらに対して余りにも酷な言葉だとなぜ分からない?」
「・・・・・・・」
反論できない。
いや、したくない。
自分がどれだけあいつらに支えられたかなんて自分が良く知っているから。
「それに食事だってそうだ。
たとえお前が点滴になった時だって、いつもお前の母親は一緒にお前の横にいて一緒に飯食ってたじゃねえかよ」
母さんか。
どんなに辛いときでも、一緒にいてくれた。
俺が反抗期になって冷たく突き放しても、怒らずにいつも笑顔で励ましてくれた。
母さんやネットの中の友達を思い出していると、自然と胸から熱いものが込み上げてくる。
あーダメだ、こりゃ・・・・・
「お前がずっと病室にいることを嘆いている間に、お前を励ましてくれていた人がいることは、分かってやれよ。
それにさ、どんな人間にも笑う権利と、泣く権利ってのはあるんだしな。」
その言葉を聞いたとき、堰を切ったように俺はむせび泣いた。
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数分後にやっと俺は泣き止んだ。
あー、人前で泣くのは恥ずかしいや。
「江草さん、すいませんでした。見苦しい事してしまって・・・・」
「んー、気にすんな」
そしてニカッと擬音が出そうに笑う。
江草さんは、本当に幸せそうに笑う人だ。
しばらくして落ち着くと、江草さんは言った。
「あー、それとさ、何もお前自身に問題がなかったわけじゃないんだ」
「え・・・・?」
それって・・・・どういうこと?
「だから、問題があったのはお前が生を受ける前からで、お前がずっと病院暮らしだったのは唯のお前の人生。
他の事はな~んも関係ないってことさ」
「・・・・・・・・・・ははっ」
そうだったのか。つまり、自分が不幸だと思ってたのは、不幸でもなんでもなかったのか・・・・・
事実が分かっても、別に取り乱したりしない俺に江草さんが声をかける。
「今度は何もリアクション無し、か」
「まあな、そうだったんなら、仕方ない。一度受け入れたら吹っ切れた」
「そうか・・・・」
江草さんはそのときやっと、本当に笑った気がした。
「こんな終わり!!?」だと思うだろ?
ホントにひどいんだwww
なんてバラバラな終わり・・・・・
出来るだけ早くに続き書きますんで、はい。