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博麗神社の神主さま  作者: 不知火 駿
第一章 
18/19

第17話  知世、里に行くんですか?

前に投稿してから……半年?

遅くなりまして申し訳ありません!!!


ミーーーンミンミンミンミン…………



蝉、せみ、セミ。




ジジジジーーージジジジーーー…………



「せみ」を当て字にしてみると「瀬看」と書ける。

これは、地獄においてセミが「三途の川の『瀬』で魂を『看』届ける虫である」ことから由来する。

同じ虫なのに鳴き声が種によって異なるものは、まずセミが頭に浮かぶだろう。

いろいろな種類の鳴き声で善人・罪人などを分別して瀬に戻したり看取ったりしていたのだと、昔の人は考えたのだろうか。



ツクツクホーシ……ツクツクホーシ…………




つまり何が言いたいのかというと、




「ミンジジツクとかウルセーんだよ!!!!!テメーら自身が三途の川渡ってこいやァァァァァァァァァ!!!!!!!!」





唯でさえ暑い夏真っ只中、うざったいセミの発情した鳴き声にとうとう堪忍袋の緒が切れて、鳥居の近くにあった木を一本力任せに蹴る。

そこまで高くない木はだんだんと傾いていって、最後にはドシ-ンと音を立てて倒れた。

その木に留まっていたセミたちは一斉に飛び立ったが、近くの木にそのまま張り付くと、またけたたましい合唱を始めるのだった。



THE・夏!

当然ながらクーラーも扇風機もないこの時代に夏を乗り切る手段というのはそう多くはなく、効果も大して無いのです。

近代的な科学設備が愛おしい…………。


あ、さっきの「瀬看」の話はウソです。まるっきり出鱈目です。

あまりの暑さにテキトーなこと言ってセミを成敗しようと画策してました。

セミ好きな人ごめんなさい。ぺこり。


することもないので境内を散歩してたのだが、如何せん暑すぎるので家の周りで打ち水をして部屋の中へ。

しかし、掃除は終わらせたし特にやらなければならないことというのもない。

「ホントにやることないから寝ようかな……」

相変わらず少々暑さが気になるが、水をまいたおかげでそれなりに涼しくはなった。

思い立ったが吉日、というか即時決行。ぱっぱと枕とかけ毛布を用意して畳の上にごろーん。

寝転がったその瞬間、



スパーン!


「起きろ真澄ぃぃぃぃ!!!」


ドゴッ!


「ふぐふぁっ!!?」





~ここからはスロー映像でご覧ください~



・鳥越真澄被害者が畳の上で仰向けになる。

・間を置かず閉めていた障子が勢い良く開け放たれ、博麗知世被疑者が登場。

・「おぉぉぅきぃぃろぉぉぉぅ、まぁぁぁすぅぅむぅぃぃぃぃぃ!」という謎の奇声を発しながら知世被告が被害者に向かってダッシュ。

・勢いづいた知世囚人はそのまま止まることなく被害者の下腹部を容赦なく踏み潰す。

・故人が汚い産声を上げ、そのまま悶絶する。


※ここまでわずか0.5秒



~スロー映像終了~




「あら真澄、いたのね?」

「いるよ!お前も名前呼びながら入ってきただろうが!!」

「そんな所で寝ちゃったら風邪引くどころかいたいけな少女に轢き殺されちゃうわよ」

「確信犯だこの悪魔!!」

「失礼な、殺すつもりはありませんでした、とでも言っておけばいいでしょ?」

「犯人の常套句っ!!てかなんでお前が刑法理解してんだよ!」

「ギャグ補正よ」

「それ以上メタ発言やめてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

どう見ても遊んでるようにしか見えない。

ただの遊びならいいんだが、腹蹴られて死ぬかと思ったし。



「で、なんか用があってきたんだろ?」

「そういえばそうだったわ。ちょっと付き合ってほしいところがあるんだけど」

「いいけど、どこ行くんだ?なんか重い荷物でもあるのか?」


そこまで聞いて知世は、素知らぬ風に呟いた。



「ええ、ちょっと里まで行ってみようかと思って」



「あーはいはい、お前が里に……はぁ!?お前が里に!!?」

「ちょ、な、なによ、そんなにおかしい?」

「いや、おかしくはないというかいや確かにおかしいと思うんだけども…………」


これまで人間と関わったことがほとんど無いって、ついこの前聞いた気がするんだけど。

もちろん、知世が人間と関わろうとすることがいけない事だなんてことは無いんだけど、ちょっと意外でテンパってしまった。


「で、どうなの?行ってくれないの?」

「ああ、行ってもいいんだけど…………どういう心境の変化?」

「…………なんか私を『人間と交わろうとしない悲しきはぐれ者』みたいに思ってない?まぁ実際そうなんだけども」

「思ってました。実際そうでした」

「黙りなさい」


ブシュッ


「めが、目がぁぁぁぁぁぁ!!!」


何故この私が唐突に目潰しされなければならなかったのでせうか神様!!

今のは理不尽だろ!


あ、神様も元から理不尽で唐突でした。(実例:江草さん)




目を押さえて畳の上を転げまわっている俺をスルーして知世は話を続ける。



「あなたを見て他の人間のことをもうちょっとだけ知りたいって思っただけよ。ちょうどいろいろ予備がなくなってきてる物もいくつかあるからついでに買ってこようかなと」

「うぅ、まだ目が……まぁ分かった。ちょうどヒマだったしな、早速行こうか。目が痛いけど」

「あ、玄は巴みたいに人間に化けることとかは出来ないから、人間たちが驚くといけないし置いて行くわね。巴に二人乗れるかしら?」

「それなら問題ない。ある程度広くすることも出来るからな。目が痛い」

「そう、なら良かったわ。じゃあ寝室で寝てる巴を起こしてくるわね」

「よろしく頼む。ちなみにずっと目が痛くて開くことが出来ないんですけどどうすればいいですか?」

「なら私が開けてあげるわ」

「え?」


グワッ

ブシュッ


「なんで瞼こじ開けてその上に再びチョキ刺突なんだよお前どんだけ俺のこと嫌いなの畜生ォォぉぉ目がァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」



**************************************************






それから役1時間経って、俺・知世・巴の三人は里の入り口に立っていた。


「ふーん。ここが人間の里ね」

「どうですか知世さん?初めてなんですよね?」

「なんだか五月蝿いわねー。これが普通なのかしら」

「…………それにしてもさ」



流石に耐え切れずに、ずっと気になってたことを言う。


「真澄のあんちゃん!この人が噂の博麗の巫女さんかい!?」

「まー、綺麗な顔しとることやねー!お料理が上手なんだって?今度家来て作ってくださいな!」

「おねーちゃん、つよいのー?」

「まーまー、とにかくうちの店見てってくれよ!」

「あー!先に俺の店だぞ!抜け駆けすんな!!」



「なんでこんなに人が集まってんだ!!?」


里って言っても結構な広さがある土地だぞ!?

なんで着いた瞬間からこんなに多くの人たちに囲まれるんだ……。

知世が来ることを知ってたのか?

しかしそんな能力持ちが里にいるなんて聞いたことないし。


と周りがやいなやいな騒いでる中考えていると、



「それは私から説明しましょう!」



という元気な声が頭の上から聞こえてきた。

…………あたまのうえ?


声につられて頭を上げると、膝から下がなく、半袖の着物で赤い下駄を履いている奇妙な容貌の少女がいた。

見た目は人間なのだが、背中から黒い大きな翼が生えていて羽ばたいているのを見ると、彼女は妖怪だろうか。

あー、あれは知ってる。実際に見たことないし、俺が知ってるやつとは幾分顔つきや身体つきが幼いけど。それに服装もシャツじゃないや。

その少女は空中からゆっくり下降しながら、知世と話し始めた。


「文!アンタ何でこんなところに?!」

「これはこれは知世、ご機嫌麗しくてなによりです。あの知世が外出とは一大事ですからね。里の皆に広めておきました」

「また余計なことを……。いつの間にうちに来てたのよ!」

「そこの真澄さんが夏にイライラして力任せに木を蹴り倒すところからですね」

「見てたのかよ!そして里の皆頼むからドン引きは止めてくれ!!」

少女がなぜ1時間前の俺の出来事を知ってたのかは謎だが、それを聞いた周りの人たちが2歩ほど後ずさりした。


「ん、というかなんで俺の名前知ってるんだ?」

「あ、はい、実は知世からいろいろ聞かされていまして」

俺の言葉を聞き取って、少女がこちらに歩いてきた。

「改めてはじめまして、私は烏天狗の射命丸(しゃめいまる) (あや)と申します。以後お見知りおきを」

そう言ってお辞儀をする射命丸。うーむ、この頃は本当に『清く正しい』だったんだな。

「これはご丁寧にどうも、射命丸。はじめまして、鳥越真澄と申します」

「文でいいですよ-。といっても私はあなたのこと見てたんですけどね。とある手段でバレないように二人の生活を盗み見てたり、あなたが買い物などでいないときを見計らって知世が私を呼び寄せたり」

「盗み見!?監視されてたの俺!!?とある手段とやらも気になるけど…………まあいいや、よろしく」

といっても私はあなたの千年後を知ってるんですけどね。



「でも知世、何で俺がいないときだけに彼女を呼んでたんだ?」

「コイツと友達だとか思われたくないから」

「言い草酷くないですか!?」

「だって事実だもん。根も葉も無い噂ばかり広めるようなやつとは関わりたくないし」

「そんなぁ……」


根も葉も無いって言ったって、さっき里の人が口々に言ってた知世についてのことは当たってると思うんだけどな。

なんだかんだ言って、仲はいいみたいだな。




そのとき、


ドンッ、と。


「おっと」


結構窮屈に取り囲まれていたので、誰かに押されて体勢が崩れてしまった。

そして、


ふにゅっ



あれ?

今なにか柔らかいものに触れた……?


「ま、真澄アンタどこ触ってんのよ!!」



知世の大きな声にハッとして自分の手を見てみると、



「ぅわーお……」

「あらら、私の胸に何か当たったと思ったら……」



文さんのおぱーいにフィットしていました。


何がなんだか分からず、思考回路は加速する中で、心の中は次第に驚くほど静寂さを増していた。

着物の布越しに伝わる女の子の体温と、(たなごころ)にわずかに収まりきらない、ちょうどいい大きさ。

指で押せば返ってくる柔らかな弾力、そして、何より知世には無いこのボリューム!!!

俺はそこに、小宇宙(コスモ)を見出したッッッ!!



「やだ真澄さんたら、初対面の女の子に大胆!でもそんなの嫌いじゃないですよキャッ!」

「キャッじゃないわよ、顔ニヤニヤして隠しきれてないわよ痴女!それとそこの変態!照れてるんじゃないわよ!!いい加減手を離せバカっ!!!」


ドゴッ!!


「うぇぶしっ!!…………ハッ!!?お、俺はいったい何をしていたんだ……」


未だに朦朧とした視界ながら、耳は慣れてきた。

大事な、とても大事な、それでいて幸せな夢を見ていた気がする…………。


「じゃ、じゃあ私はこの辺でー。ネタが私を呼んでいる!!」

「顔真っ赤にして、実は恥ずかしかったのね!あ、この前の鯛ありがとねー!!それだけは感謝しとくわー!!!」


やっと意識がはっきりしてきたところで、文が帰るようだ。



「また面白い出来事があったら呼んでくださいねー!!!」


まだボケーっとした表情ではあるが、とりあえず文に向かって手を振っとこう。

次に会うときはまともなカタチで会いたいなと思いつつ。

そしてまた住人たちに取り囲まれるのであった。



「で、真澄のあんちゃん、この巫女ねーチャンとはどこまでいったのよ?」

「は?えーと、旅行とかは行った事ないですけど・・・・・・」

「・・・・ハァ、ニブいなあんちゃん。男と女つったらやることは1つだけだろう!」

「はぁっ!!?べ、別になんもねーよ!」

「またまた!さっきの見たぞー?射命丸さんに手出してるのを!!意外と隅に置けないなぁあんちゃん!若い男女が人里離れた場所で二人暮らししといて何も無いはねーだろ!」

「あれは偶然だ!!それにホントに何も無いんだって!!まぁ、うーん、強いて言えば・・・・・・・・・」

「そう!大抵はその『強いて言えば』にとんでもねぇ行為が・・・・・・・・・!!」


「主に血祭りかな、俺が」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・あんちゃんも苦労してんだな。噂と違うと思ってたけど、やっぱり巫女ねーちゃんも武闘派なのな。ほら、これ持ってけ」

そう言って柿をくれた。

よく熟れてて美味しそうだ。

「おう?あ、ありがと。よく分からないけどありがたく貰っておくよ」

「まいどありっ!5文な!!」

「金取んのかよっ!!!」




************************************************



「いやー、楽しいわね里!こんなことならもっと早く来とくべきだったわ」

「お前ホント順応早いなぁ・・・・・・・・・」

「そりゃ私の能力は『金で人と仲良くなる程度の能力』だからね」

「違うだろ!そんな歪んだ友情はお断りだよ!!」

「人間って脆いわよね、こんな石1つで簡単に頭下げるなんて」

「絶対今回初めてじゃないよな!?今までに人間を手玉に取ったことあるだろ!!」

「『人間の友人が出来たら今私が言ったことをそのまま言ってやってください。きっとその人泣いて喜びますよ』って文が」

「あのパパラッチぃぃぃぃぃぃぃ!聞いたのが俺でホント良かった!二度と言わないで下さい!」


射命丸にも呆れるが、変なところで非常識人な知世もなかなかアブない。


「それにしても、真澄がくれた柿は美味しかったし、初めてあんなにたくさんの人間ともしゃべったし。今日は楽しいことばっかりね!」



結局買い物をすることなく、里の皆から質問攻めに会ったりいろいろタダで貰ったり押し売りされたりしただけなんだけどな。

まぁ……楽しかったさ、俺も。





しかし、相も変わらず笑顔のまま、知世は続けた。



「人間って姿かたちは違っても、中身はそんなに妖怪と変わんないのね」



唐突なその言葉に、俺は胸を射抜かれた気がした。

知世にとって、判断する価値基準は妖怪なのだ。

周りに妖怪しかいなかったから、それは至極当然のことなのだが。

普通の人間なら、『妖怪を見て、人間と変わらない』と思うのが妥当なのに。


言い表しようがないが、どうしようもなく哀しい気分になってしまった。



「…………帰るか」

「そうね、もう夕方近くだしねー」



新しい出会いを得て嬉しそうにしている知世に対して、俺は沈んだ気持ちのままだった。


空は、青と赤がせめぎあっていた。








物語中で聞こえているセミの鳴き声は深く考えずに書きました。

なので、セミの生態について「時期が違う!」とか「時間帯が違う!」的なことがあっても目を瞑ってくれるとありがたいです。

あ、でも後学のために、教えていただけるとありがたいです。



どうでもいいですけど、昔Twitterで、


「ツクツクホーシの鳴き声が『突く突く奉仕!突く突く奉仕!とってもいいよぉ!とってもいいよぉ!あぁああああああっ!!』に聞こえる」


なんてツイートが回ってきて以来、そんな風にしか聞こえなくなりました。

セミの鳴き声を風情と捉えることが出来たあの頃の俺の耳を返せチクショウ!!




さて、私事ですが、この春から高校3年生となり、受験が近づいてきました。

なので、少なくともセンター試験が終わるまでは更新することは恐らくありません。

唯でさえ半年更新なかったのに、また潜伏してしまい、申し訳ありません。

中3の頃から書き始めて気づけば3年が経とうとしていますが、この長い間ここまで見守ってくださり、本当にありがとうございます。

拙筆ですが、なんとか最後まで書き続けたいと思うので(この分じゃ何年経つか分かりませんが……)、

これからもよろしくお願いします。

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