第15話 一年に一度だけある日ですか?
夏も終わりました。
どうも、お久しぶりです。
ひとまず部活も落ち着き、学校のパソコン室だけでなく家でもちょこちょこ執筆するようになりました。
それでも遅筆なことは変わらないので投稿頻度は遅くなりそうだけどね!!
では、どうぞ!!
左から風を切る音が聞こえる。
少し体を後ろに倒すと、目の前を巨大な腕が通り過ぎていく。
その腕に自分の腕を絡めて関節の不可変方向に力をこめる。
「グォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」
ボキッというイヤな音と共に大きな体の妖怪は苦しげに体を曲げる。
その間に怯んでいた他の妖怪に狙いを付けて、鬼の首筋に手刀を入れて気絶させる。
その場にいた2体の鬼の内1体は気絶させた。
しかし折れた片腕を抑えながら、残りのもう1体が俺の後ろから体当たりしてきた。
「ぐっ・・・!」
例えただの体当たりでも、相手は体の大きな鬼。
俺の背中を鈍痛が通り抜ける。
痛みをこらえつつ、そのまま回し蹴りで鬼の首筋を狙う。
「シッ!!」
ザンッ!
「あ・・・」
失神させようと思ったが、どうやら痛みで力の加減が出来なくて、鬼の首を跳ね飛ばしてしまった。
「・・・・・・・・・・・埋めるか」
十分後、近くの森で穴を作ってその中に殺してしまった鬼を埋めて、俺は妖怪に襲われた階段続きの参道を登っていく。
季節は初夏。
寿命が人間と比べて著しく短い飛行機能を持つセミがけたたましく夏の訪れを知らせてくれることは、1000年前のこの時代でも変わらないのだなと感心する今日この頃。
今のように急に妖怪に襲われても対応できるようになり、手慣れたものだと自分自身に判子版を押す、そんな時期。
知世に頼まれて里に買い物に行こうとしたのだが、巴が寝ていたので、しょうがないと思い一人で歩きながら買い物に行き、その帰りが今の状況だ。
余談だが、何も妖怪が出てきたからって俺は殺しはしない。
いつもは気絶させるだけで済ませる。複数で襲ってきた場合は一体が気絶すると逃げていくもんだが、今のように稀に構わず襲ってくる奴もいる。
俺はまだ未熟だから、とっさのことに手加減が効かず殺してしまった。
その時は遺体を埋めるように心がけている。
殺してしまっては寝覚めが悪いが、襲ってきたのは相手なのだから埋めることでチャラでいいでしょ、という理論の元だ。
以上のことはすべて知世からの受け売りでしたっ。
そして神社に到着。
知世との訓練のお陰で体力はついてるので疲れてはいないが、なにしろ気温が高いせいで汗がしたたり落ちる。
「蒸し暑い日が続くな・・・・・・」
「ホントね・・・・・・この暑さ何とかなんないかしら?」
「うゎおぉっ!?」
完全に一人だと思っていたので、急に横から声を掛けられ驚く。
「いたのか知世・・・・・・」
「あんたが妖怪に襲われた時からね」
「そこから!?どこから見てたんだよ!!」
「空から」
「久しぶりに見せていただきましたが、見違えるようになりましたな」
「玄もいたのか!久しぶりだな・・・・・・てかいたなら助けてくれよ!!」
「馬鹿ねぇ・・・・・真澄がどれだけ強くなったかを見るために手を出さなかったのよ」
「え・・・・・・・」
「強くなったわね、真澄」
そう言って微笑む知世。
急に真面目な顔をして言うもんだから、ちょっと感動してしまった。
「知世・・・・・ははっ、まだまだだけどな。でもここまでなれたのもお前のお陰だよ。ありが・・・・・」
「してご主人。本音は?」
「めんどくさかったし、真澄が苦しむのを見たかったから」
「俺の感動を返せチクショウ!!」
なんて野郎だ!あ、女か。
折角知世のことちょっと見直したのに・・・・・。
『恥ずかしくて誤魔化すところがまたご主人らしいですね』
『・・・・・・・・五月蠅い。アンタが横やり入れてきたんじゃない・・・・・・』
『だってご主人が目で訴えてくるから・・・・・・なんかフォローしないと殺すわよって』
『殺す訳無いでしょ!!まったく、鍋にして食べるだけよ!』
『私死んでるじゃないですか!』
玄と知世が何か囁き合ってたが、小さくて聞こえなかった。
と、夏と言えば・・・・・・。
「もうすぐ俺の誕生日だな・・・・」
ふと、呟いた。
俺の誕生日は7月12日。
この時期が近付くと、毎年母さんが部屋を飾りつけて祝ってくれた。
パーティーと言うには余りにも小さかったが、とても楽しいものだった。
「誕生日?」
呟いたのが知世に聞こえていたようだった。
「あ、あぁ。俺の誕生日は夏なんだよ。今日って何日だっけ?」
多分もうすぐだと思うんだけど・・・・。
しかし、知世が次に言った言葉は俺にとって予想外の言葉だった。
「え、ちょっと待って・・・・誕生日って、なに?」
「は?誕生日だよ。自分が生まれた日」
「自分が生まれた日がどうやって分かるの?物心ついてないでしょ?」
もしかして、この時代に誕生日という概念が無いのか?
まさかの展開に俺驚いているなう。
ところが、予想外はここでは終わらなかった。
「自分を生んでくれた親が教えてくれなかったのか?」
「いえ。私はね、親の顔を知らないのよ」
「・・・・・・・・・・・・。」
四つん這いになってまさに「orz」のように落ち込む俺。
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
話がすっげぇディープなほうに転換したぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
これ突っ込んだらいけない話だろ絶対そうだろ・・・・・・。
うわぁ……墓穴掘った・・・・・。
「なーに落ち込んでんのよっ!」
「・・・・え?」
顔を上げた俺が見たものは、
高く振り上げられる知世の生足。
そしてその間から覗く知世の白いパン・・・・・・・
ドゴッ!
「まさか……真澄。もしも、同情しているんだったら、殴るわよ?」
・・・・・・・・・・・・・・・・知世。既に攻撃している上に世間一般でお前がした行為は「蹴り」と呼ばれるんだよ。
知世の蹴りは予想以上に重く、しかも鳩尾に入ったので、俺は意識を手放す他なかった。
なので俺のツッコミは口に出せず、心の奥底で眠ったままと相成った。
ごめんな俺のツッコミ・・・・・・・・・・・・・・・。
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「かっ、かまぼこっ!!?」
「ひゃっ!」
目が覚めて飛び起きると俺の寝室で、見知った顔が一人。てか巴だった。
なにかものすごい嫌な夢を見ていたような気がする・・・・・。
「ビックリした・・・・。真澄さん寝言で何にうなされてたんですか?」
「いや、何故かかまぼこが怖かったんだけど……なんか思い出したくない」
「じゃあ詳しくは聞きませんけど・・・・・・。気分はどうですか?」
「悪くないよ。・・・・・・・・・・・・だんだん思い出してきた。知世に蹴られて・・・・・どうなったんだ?」
「えぇ、その後・・・・・・・」
ドタドタドタ・・・・・・・
スパーーン!!
巴が言葉を発すると同時に廊下から大きな足音が聞こえてきて、小気味良い音を立てながら障子が開け放たれた。
「失礼ね!蹴ったんじゃなくてただ気合いを入れただけよ!!」
「・・・・・・・・・やぁ知世。普通の人は下駄を履きながら鳩尾に蹴りを入れる事を『気合いを入れる』とは言わないんだ。それはヤンキー達が俗に言う『ケジメ』って類と同じような物だと理解してくれ」
「後半何言ってるか分かんなかったから。それよりも!やるわよ!!」
相変わらず元の世界での単語を使ってしまう癖はまだ抜けないな。
しかし言ってる意味が分からんのはお互い様だ・・・・・・・。
「主語と述語を入れてから話せ。いったい何をやるって言うんだ?」
知世は腕を組んで、その問いが来るのを待っていたかのように言った。
「誕生ぱーてぃーよっ!!!!」
次回もまた長くかかりそうです・・・・・。
そして読み返してみると「・・・・」という無言の記号が多い!!
精進いたしますm(_ _)m