フランカ視点
婚約を破棄されてから、模擬戦闘の申し出を受けたわ。
「フランカ、こんな書状が届いている・・・模擬戦闘の申し出だ。断っても良いぞ」
「まあ・・・・お父様、見せて下さいませ」
何でも100人対100人、どちらも、素人を集めて練兵、軍学校の同期は使えない。
殿下が貴族学園の友人や使用人を集めている。
練兵の期間は十日ね。
ここは王都のタウンハウスだから、領地にいけない。
だから王都の貧民を集めた。
尚、練兵の教官に条件はなかったので同期に協力を願い出た。
同じく婦人科のカティと、男のエーリッヒだ。
同じ幹部候補生の軍曹長を拝命している。
軍曹長で小隊40人規模の長だ。これから先は軍務で経験をつけて学ぶのだが・・・
まず。お金で
「訓練日は1日銀貨二枚、模擬戦闘日には金貨一枚!訓練に参加したら必ず模擬戦闘に参加すること」
で集めた。
300人以上集まったかしら。ニヤニヤ笑っている者もいる。
だから適当にグループ分けをして競争をさせた。
【いいか!これから組を作る。あの木まで競争せよ!勝った者を雇う!この競争に参加したら大銅貨三枚を渡す!希望者は集まれ!】
とエーリッヒに号令をかけさせた。反応は別れたわ。
「ええ、駆けっこかよ!でも大銅貨をもらえるならいいか」
半笑いでニヤニヤしている者・・
「や、やるぞ。妻に薬を買うのだ!」
奮起する者だ。
カティにゴール地点で審判をしてもらった。
「はい、その帽子を被っている殿方の勝ちですわ。記録します。名前を」
「俺の勝ちだ!グスン、グスン、ハンスです。行商人です」
泣き出す者がいた。負けて金だけもらって帰る者もいた。
「え、これで終わり?まあ、いいか」
やる気のある者でどうしても訓練に参加したい者が3人いた。
「た、頼む!どうしても妻に薬を買いたいのだ!」
「グスン、子供を平民学校にいかせたいのだ」
「母ちゃんを養いたい!」
だから・・・
「補欠採用、訓練の参加は認める。その代わり炊き出しや寝床の世話をしなさい。お給金は兵と同じよ」
「はい!やらせて頂きます」
後方支援で雇った。
後から、その様子を見て。
「俺も!俺も!」
という者は遠慮なく断った。
エーリッヒが撃退してくれた。
「おい、どうしてもというなら斬るぞ!」
「ヒィ!」
まず初日は号令を習得させた。
「【集まれ!】と言ったら集まれ!」
「「「はい!エーリッヒ殿」」」
「【回れ~右!】はこうやる!カティ殿がやるから真似てやれ!」
「「「はい!」」」
基本的な号令を教えた。
初日は楽だったと思う。
その夕方には銀貨を配った。
「えっ、今日もらえるので」
「大丈夫ですか?」
「何だ。お前達は逃げるのか?」
「いえ、逃げません」
軍学校の座学では傭兵に戦闘前と後で金を配るかで戦意が違う。
もちろん金だけもらって逃げ出すリスクはあるが。
彼らは逃げなかった。
二日目、三メートルの棒を配って棒の持ち方を教えた。
「気をつけから、【抱え槍】こう持つのだ。カティ殿、見本を見せてやってくれ」
「はい、エーリッヒ殿」
「次は【構え】から、打ち下ろす動作だ!」
「あの、教官殿、槍は突くものでは?」
「質問を許していない!だが、答えてやる。集団戦の槍衾では叩き下ろすのが有効と戦場で出ている!次からは『質問があるか?』と聞いてから質問しろ!」
「は、はい!」
その間、私は殿下の演練の情報を調べた。
難しい陣形を使用人達に説明してやらせているがイマイチ締まらないようだ。
また、個々に剣術を教えている者もいた。
『鶴翼の陣だ!ほら!さっさと集めれ』
『俺は剣を教える!2人一組を組め。まずな。剣はこうやって正面に構えるのだ』
教官は10人くらいか?それぞれ得意分野を教えているようだ。
これで方針は決まった。
「槍を持って走る。駆け足!前へ」
「「「「槍を持って駆け足!」」」
この期間の演練では方陣での突撃しか選択肢がない。
だから、包囲される前に突っ込み敵を撃滅して殿下をとらえる。
また、訓練前に兵1人1人に皆の前でスピーチをさせた。
これで兵の欲求が分かったわ。
「グスン、元々農地持ちの農民だったのに、貴族に買いたたかれて王都に行けば何とかなると思って来ました」
「俺は・・・使用人だったけど坊ちゃんの不興をかってしまって紹介状も無しにやめさせられました」
貴族に不満を少なからず持っている。
だから、私も司令官講和でアジった。
「諸君、模擬戦闘は合法的に貴族をたたきのめせるイベントだ!楽しいか?」
「「「はい、楽しいです!」」」
「諸君、私はクーパー家の者であるが、私のためではない。家族のために戦え!」
「「「はい、家族のために戦います!」」」」
そして、模擬戦闘前日、訓練が終わってから一端家に帰した。これでだけでも銀貨20枚渡していることになる。
帰って来るかは賭けである。
「諸君、銀貨をジャリジャリうるさい。さっさっと家族の元に送ってやれ!一日やる。明日の朝には王宮前の練兵場に集まるものとする!」
「か、家族と会えるのか?」
「グスン、グスン・・・」
「そうだ。模擬戦闘と言えども死ぬかもしれないのだ。今のうちに・・・」
結局、103人全員帰って来た。
「諸君はこれで貧民ではない!今日の金貨をどう使うか?これからの人生はお前達の物だ!」
「「「「オオオオオオオーーーーー!」」」」
そして、開始前に発破をかけたら殿下の軍は瓦解したわ。
想像以上の効果だったわ。
「金貨だ!諸君はこれを持ってさっさと家族の元に帰ってやれ!それとこの紙をやる!」
「司令官殿、これは何が書かれているのですか?」
「この模擬戦闘に参加した証明書である。クーパー家の家紋入りだ。根性だけはある証明になる。奉公先を探すときに使え」
「こ、こんなにビッシリ、俺のことが書かれている」
「司令官殿・・・グスン、グスン」
「さあ、模擬戦闘は終わった。これからは家族防衛戦闘だ!諸君の奮闘を期待する!」
「「「「ウラー!ウラー!ウラー!」」」
その後、王家から多額の慰謝料か、また、フェルナンド殿下との婚約続行の話が来たが、慰謝料を選択した。
さあ、どうしよう。これで嫁入りの話はなくなった。
と思ったが。
「フランカ・・・釣書が来ているわ。こんなに沢山」
「え、何で・・・、お母様、私、玉何個ついているかと言った女ですよ」
「知りません。まあ、エーリッヒ殿から来ているわ・・・」
「え、何で、近くにいたのに・・・」
もう、何でか分からない。
・・・この王宮前の模擬戦闘は戦史に記載され練兵の教科書になった。
フランカの相手の王子の名は記載されている。戦史とはそういうものだ。
その後、フランカ側に参加した者達は少し生活が良くなったと伝えられている。
最後までお読み頂き有難うございました。




