3.エデンの意思
犯罪組織エデンは世襲制をとっている
良くも悪くも実力主義である裏社会において、世襲制は本来生温い組織だと認識されるのが常である
しかしエデンはサウスグリア王国の王都において裏社会を支配する絶対的な組織としての地位を確立するに至っている。それは何故か?
結論、エデン一族には代々特殊な"眼"が発現するからである
"眼"の効果として代表的なものに真理を視る能力がある。
これは"眼"を持つ者の質問に対する返答に偽りが無いかを判別できるものであり、有り体に言えば彼らの前で嘘偽りを申し立てる事は不可能なのである。
裏切り,裏切られるのが常である裏社会においてこの能力は絶大である。
組織内における結束力の担保と他組織からの介入を完全に遮断することができると言うまさしくボスになるためにあるような能力なのである
それとは別に各代によって固有の能力を持っているという噂があるがそれは組織の重要機密であるため限られた幹部にのみその能力が明かされているらしい。
ともかく、ボスであるボア・エデンその人がこの場に乱入した以上、嘘偽りは死を意味する。
「"時狩り"よエイジンの幹部、ヨウムの暗殺任務ご苦労。」
「いえ称賛には及びません、私は任務を遂行したのみです」
「ボスの労いのお言葉を拒否するとは!!!一介の暗殺者風情が身の程をっ....!!!」
「良い、下がれ」
流石はこの国屈指の犯罪組織のボスである
簡潔な言葉に込められた"圧"が違う
苦言を呈した幹部は顔面蒼白になり沈黙した。
「ところで時狩りよ」
ボス....ボアエデンの金色の瞳が怪しく光る
「よもやエデンを抜けようと考えてはおるまいな?」
凄まじい圧が向けられているのを肌で感じつつも
アベルは無表情に返答した
「私は組織に対して返しきれない恩が有ります。そんな私がどうして組織を抜けましょうか?」
嘘はついていないアベルはカインに対する恩が組織に残る大きな理由であるが
拾ってもらった組織に対して少なからず恩がある
ボスの眼がどれほどの事情を看破できるのかは分からないが嘘はついていない。
ボスは少し目を細めた後に一言
「ならば良い...これからも励め」
とだけ言い残し去って行った。
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ボスとの邂逅から2日が経ち
アベルはカインが表向きの顔として開いている酒場に居た
アベルにとって酒場とは世間の情報を入手することができる場である
「なんでもよぉ〜、近頃王国が"静止の魔女"討伐の為に大規模な遠征をするみたいだぜぇ」
「おいおいまだ懲りてねぇのかよ王族のお偉さん方は...5年前の遠征で7割が殺されて逃げ帰ったってのによぉ」
「やっぱそんだけ悪魔の棲家の魔鉱石が魅力的なんだろぉよなんてったってあそこの魔鉱石は純度が異常であらゆる魔法の触媒になるらしいじゃねぇか。商人たちの試算じゃあこの国の100年分の予算よりも大きい利益があるらしいぜ」
「だからってよぉ、せ、静止の魔女だぜ?300年以上前から棲みついてるバケモンの巣にちょっかいかけるなんてどうかしてるぜ」
王国はまだ諦めていなかったのか....
悪魔の棲家、この王国の北東に位置する大森林を畏怖を込めてそう呼んでいる
悪魔の棲家は文字通り強大な魔獣の群生地である上、
"静止の魔女"が棲む場所として王国内における恐怖の象徴となっている
悪魔の棲家には超高純度の魔鉱石が大量に生成されており
それをめぐって王国からは軍を、裏社会からは"静止の魔女"を殺す暗殺者が送られていた
だが今もなお健在である"静止の魔女"存在がその悉くを退けたことの証明となっている
ここ数年は王国も裏社会も"触らぬ神に祟りなし"の考えから接触を控えていたのだが.....
このタイミングで王国が動いたのならば恐らく....
嫌な予感とは必ず的中するのが世の常である
ボア・エデンに呼び出されたアベルは無慈悲な宣告を受けることになる。
「"時狩り"に"静止の魔女"の暗殺を命ずる」




