第四十六話 共鳴の記録
倉庫の中は、朝の光が差し込み、微かに舞う埃がゆらりと揺れていた。
エリシアは楽器を抱え、弓を握る手を静かに休める。
肩の重み、顎当ての冷たさ、指先に残る弦の跡。
音はもう出ない。
しかし胸の奥で、静寂の余韻が記録として深く刻まれていた。
楽器の木肌はわずかに揺れ、指先に残る感触は音ではなく存在そのものの記録。
長年の触れ合いと弾かれた痕跡が、エリシアの体と呼吸に寄り添い、胸の奥で共鳴の記録を形成する。
低い声の人物が倉庫の奥で影だけを浮かべる。
肩幅、背筋、長い指先の微細な動きが空気を揺らす。
目は暗がりに沈み、表情は読み取れない。
存在感だけで場の中心を支配し、共鳴の記録を見守る。
「記憶せよ、この響きを」
低く響く声が空間を震わせる。
音としてではなく、振動として胸に届く。
楽器を通して、エリシアの胸の奥に旋律・光・影・心の共鳴が記録として刻まれる。
エリシアはゆっくりと息を吐き、楽器から手を離す。
木肌の温かさ、肩の重み、指先の感触。
音はなくても、胸の奥で共鳴の記録が確かに生きていた。
影が一歩近づく。
肩の傾き、背筋の角度、指先の微細な動き。
問いかけと答えを紡ぐ微細な振動が、光・影・楽器の木肌と交わり、胸の奥で共鳴の記録を形作る。
朝の光が木肌に差し込み、影が床に揺れる。
手の感触、木肌の揺れ、影の動きが重なり、音はなくても胸の奥で共鳴の記録が確かに生きる。
エリシアは小さく微笑む。
肩の重み、指先の感触、木肌の温かさ。
音はなくても、共鳴の記録が胸の奥で確かに生きていた。




