第二十一話 微かに響く光
倉庫の中は、朝の光が柔らかく差し込み、埃がゆらりと舞っている。
エリシアは楽器を抱え、弓を握る手に意識を集中する。
肩の重み、顎当ての冷たさ、指先に残る弦の跡。
音はまだ出ない。
しかし胸の奥で、輪郭を持った旋律が微かに光と共鳴しているのを感じる。
楽器の木肌がわずかに揺れる。
指先に伝わる軋みは、音ではなく存在そのものの呼吸。
長年の呼吸と触れ合いの積み重ねが、光に触れた瞬間、微かに響きを増した。
低い声の人物が倉庫の奥で影だけを浮かべる。
肩幅、背筋、指先の微細な動きが空気を揺らす。
目は暗がりに沈み、表情は読み取れない。
存在感だけで空間を支配し、問いかけの微かな光を示す。
「微かに響く光は、音ではなく、感じるものだ」
低く響く声が空間を震わせる。
振動として胸に届く。
楽器を通して、エリシアの胸の奥に微かに響く光が生まれる。
エリシアは弓を滑らせる。
木肌の感触、肩の重み、指先の軋み。
音は出ない。
しかし胸の奥で、触れた旋律と揺れる影が光に共鳴し、微かな響きを作り出す。
影が一歩近づく。
肩の傾き、背筋の角度、指先の細かな動き。
問いかけと答えを繋ぐ振動が、光と共鳴する音のない旋律として胸に届く。
朝の光が木肌に差し込み、影が床に揺れる。
弓を引く手の動き、木肌の揺れ、影の動きが重なり、微かに響く光が旋律の一部として胸に刻まれる。
エリシアは小さく息を吐き、弓を止めない。
肩の重み、指先の感触、木肌の温かさ。
音はなくても、微かに響く光が胸の奥で確かに生きていた。




