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桃太郎伝 ~追放された元神は、きびだんごの絆で鬼を討ち、愛しき仲間たちと世界を救う~  作者: ざつ


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第二十話:すべての終わり、そして新たな始まり -2

太郎は、静かに目を閉じた。

彼の脳裏には、現世の母が作ってくれたきびだんごの温かい味、黒鉄との幼い頃の記憶、そして旅の途中で出会った仲間たちとの数々の冒険が鮮やかに蘇る。


(母上のきびだんご……あの温かさ。鈴蘭との約束……幼い頃から、ずっと俺の隣にいてくれた。


羅生門へ向かう道中での鬼との遭遇で、俺の暴走を止めてくれた鈴蘭。枯れ木に桜を咲かせた時、俺の力を信じてくれた仲間たち。


龍宮の宝玉、火鼠の皮衣、子安貝……全ての試練を、みんなで乗り越えてきた。

風神の嵐、雷神の雷鳴……あの絶望的な状況で、俺を支え、鼓舞してくれたのは、他でもない、お前たちだった。


そして、ヤマタノオロチとの最後の戦い。鈴蘭が俺を庇って倒れた時、俺は全てを失うかと思った。

あの時、俺の心を救ってくれたのは、母の愛情と、お前たちとの絆だった。


俺が本当に求めていたのは、力だけじゃない。この温かい絆だ……)。


太郎は、真に欲しかった「帰る場所」は天界ではなく、この地上で仲間たちと共に築き上げた絆の中にあることを悟る。そして、迷いなく自身の決断を下した。彼の瞳には、確かな光と、未来への希望が宿っている。


(俺が本当に守りたいのは……この場所だ。この絆だ。俺は、もう一人じゃない……!)。


太郎の心の声が、彼の脳裏に響き渡った。彼の全身から、微かな桃色の光が迸り始める。それは、彼の決意を象徴するかのように、力強く輝いた。


「俺の答えは……決まっている」


太郎は、静かに、しかし確固たる声で告げた。その声は、広大な鬼ヶ島に響き渡り、風神と雷神、そして仲間たちの心に深く染み渡った。


太郎は風神と雷神に向き合い、晴れやかな笑顔で告げた。彼の言葉は、揺るぎない決意に満ちている。その瞳は、二柱の神を真っ直ぐに見据えていた。


「俺は、この仲間たちと共に生きていきたい!この地上で、彼らと共に歩む道を選びます! この世界を、みんなと共に守っていく!」


太郎の言葉に、風神颯馬と雷神雷牙は、静かに頷いた。彼らの表情に、深い理解と、わずかな感動が浮かぶ。


「……そうか。お前の覚悟、しかと受け止めた。お前の選んだ道が、真の光となることを信じよう」


風神颯馬の声は、静かだが、その中に深い理解と、わずかな感動が宿っていた。彼の言葉は、太郎の決意を祝福するかのようだった。


「……見事な決断だ。お前は、我らが望んだ以上の成長を見せた。その絆の力、真に見事だ! お前ならば、この世界の混沌を鎮めることができるだろう!」


雷神雷牙の声が、豪快に響き渡る。その声には、太郎への素直な賞賛と、深い感動が込められている。彼の瞳は、太郎の未来を確信しているかのようだった。


太郎の言葉に、黒鉄たちの顔には満面の笑みが広がった。


黒鉄は目に涙を浮かべ、琥珀は喜びの声を上げ、天音は静かに感極まり、穂積は無邪気に跳ねる。八重は豪快に笑い、葛は優しく微笑んだ。そして、乙姫も満足げな表情で頷いた。


「若様……! 若様……!」


黒鉄は、感極まって太郎の名を呼んだ。彼女の琥珀色の瞳からは、喜びの涙が止めどなく溢れ落ちる。その涙は、これまでの苦労と、太郎への深い愛情が報われた証だった。


風神と雷神は太郎の選択を認め、祝福の言葉をかける。彼らは太郎が、これまでの神とは異なる、人間と共に歩む「新たな神」として生きることを確信する。二柱の神は光となって静かに姿を消す。


「お前の選んだ道が、新たな時代を築くだろう。我らは、お前の行く末を見守ろう……」


風神颯馬と雷神雷牙の声が、遠くから聞こえてくる。


太郎は、新たな神としての力を持ちながらも, 人間として仲間たちと共に生きる道を選んだ。再生された鬼ヶ島と広大な海を眺め、彼らの旅は終わったのではなく、新たな始まりを迎えたのだと実感する。


「若様。若様は、本当に……」


黒鉄は、太郎の言葉に静かに頷き、彼女の頬にそっと手を添えた。彼の瞳には、彼女への深い愛情が宿っている。その視線は、黒鉄の心を射抜き、彼女の頬を熱く染め上げた。


「鈴蘭。俺は、お前と出会って、本当の意味での強さを知った。俺の隣で、俺の剣として……いや、俺の隣で、俺と共に生きてほしい。お前が、俺の帰る場所だ」


太郎の言葉に、黒鉄の琥珀色の瞳が大きく見開かれた。その目から、新たな喜びの涙がこぼれ落ちる。彼女の心臓が、激しく、しかし温かく高鳴った。


「若様……! 若様……!」


彼女は、太郎の胸に顔を埋め、言葉にならない喜びを噛みしめる。彼女の心の声が、太郎に直接響く。


(ああ、若様……! この日のために、私は……。ずっと、若様の隣で……。若様が、私の全てです……。この命、若様のために……永遠に……)


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