表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桃太郎伝 ~追放された元神は、きびだんごの絆で鬼を討ち、愛しき仲間たちと世界を救う~  作者: ざつ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/71

第十九話:ヤマタノオロチの襲来、絶望、そして覚醒 -2

仲間たちはヤマタノオロチの圧倒的な力に押し潰されそうになりながらも、必死に応戦する。


黒鉄と八重が前線で攻撃を受け止めるが、多頭攻撃の前に防御が間に合わない。

彼らの鎧が砕け散り、傷が増えていく。


「ぐっ……!この攻撃……重すぎる……! 八重殿、頼みます!」


黒鉄は、歯を食いしばり、刀で炎のブレスを受け止めるが、その衝撃で体が大きく揺らぐ。


「ちくしょう!キリがねぇ! どこからでも攻撃してきやがる! 黒鉄、大丈夫か!?」


八重は、豪快な笑みを浮かべながらも、その顔には苦痛の色が浮かんでいた。


穂積は「小槌・結界の祝福」で防御結界を張るが、複数の首からの同時攻撃に耐えきれず、結界が破壊される。

葛は負傷していく仲間たちを必死に回復させるが、回復が追いつかない。


「お兄ちゃん……結界が……! もう、これ以上は……!」


穂積は、小槌をぎゅっと握りしめ、泣き出しそうな声で叫んだ。


『【癒やしの魔法陣・雀の涙】!皆さま、どうかご無事で……!回復が……追いつきません……! このままでは、全員が……!』


葛の思考が、太郎の心に響いた。


黒鉄たちは次々と窮地に陥り、ヤマタノオロチの力に翻弄される。希望が薄れていく中、太郎は仲間たちが傷つき、倒れていく姿を目の当たりにする。彼の顔には、絶望と無力感が広がる。


「若様……!」


黒鉄が、深手を負いながらも、太郎を見上げた。


「もう……ダメかも……太郎兄ちゃん……」


琥珀は、地面に座り込み、うずくまった。


「……ここまで、なのか。我々の力では……」


天音は、静かに呟いた。


ヤマタノオロチの一つの首が、雷を纏い、太郎に猛烈な攻撃を仕掛けた。その雷撃は、空間を歪ませ、全てを焼き尽くすかのような破壊力を持っていた。

太郎は、槍を構え、その一撃を受け止めようとするが、疲弊した体では間に合わない。


その瞬間、黒鉄が太郎の前に飛び出し、盾となった。


彼女の全身から、琥珀色の光が放たれ、「忠義の結界」が展開される。


雷撃が結界に激突し、爆音と共に結界が砕け散った。黒鉄の体が雷撃に飲み込まれ、苦悶の表情を浮かべ、血を吐き、その場に倒れ伏す。彼女の瞳から光が失われ、意識が遠のいていく。


「若様……! 【忠義の結界】……! ぐっ……!」


黒鉄の声は、か細く、しかし太郎への忠誠に満ちていた。


「鈴蘭……!」


太郎は、その名を叫んだ。


太郎は黒鉄を抱きかかえ、その傷を見た瞬間に絶望が頂点に達した。彼女の武士の装束は、雷撃によって焼け焦げ、腹部からは血が流れ出している。温かかったはずの体が、急速に冷たくなっていく。


「俺が、また……! 鈴蘭……! 嘘だろ……! 俺のせいで……また……! なぜだ……!」


太郎の声は、苦痛と、自己嫌悪に満ちていた。彼の脳裏には、天界での破壊の光景、そして、かつて黒鉄を傷つけてしまった悪夢が、鮮明に蘇る。

過去の失敗と、力の制御できない無力感に苛まれる。彼の顔には、大粒の涙がこぼれ落ちた。


(俺は……また誰かを傷つけてしまった……! 父上も、鈴蘭も……俺の力が、なぜいつも……! なぜ、俺は、大切なものを守れないんだ……! 俺は、本当に……破壊神なのか……! もう、終わりなのか……!)


太郎の心の声が、彼の脳裏に響き渡る。彼の瞳は、絶望に深く沈み込み、その場に膝をつきそうになる。


太郎は、仲間が傷つき、倒れていく姿を見て、自らの無力さを悔やんだ。


きびだんごは既に使い果たしており、頼るべきものは何もない。彼の手に残るのは、母からもらった空のきびだんごの包みだけだ。その包みが、彼の無力さを嘲笑うかのように、風に揺れる。


「(空のきびだんごの包みを握りしめ)きびだんごも……もうない……俺には……何も……。俺の力は……誰を守ることもできない……!」


太郎の声は、絶望に満ちていた。彼の全身から、力が抜け落ちていくのを感じる。


「ははは!諦めろ、人間ども!お前たちに、我は討てぬ! 絶望するがいい! お前たちの命、ここで終わりだ!」


ヤマタノオロチの声が、勝利を確信したかのように響き渡る。その猛攻は、さらに苛烈さを増す。






その時、絶望感が漂い始めた広間に、突如として清らかな光が差し込んだ。

浄化された天岩戸の霊気が光となって顕現し、その光の中から、乙姫が姿を現した。


彼女の登場と共に、周囲の海から水の精霊たちが現れ、ヤマタノオロチの邪気をわずかに押し返す。


「お待たせいたしました、太郎殿。私も、共に戦いましょう。この海の平和のために……!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その他の作品もぜひ!
ガイア物語(代表作)
 壮大な異世界ファンタジーサーガ 同時並行的に複数のストーリーが展開します
異世界グルメ革命! ~魔力ゼロの聖女が、通販チートでB級グルメを振る舞ったら、王宮も民もメロメロになりました~(週間ランクイン)
 魔力ゼロの落ちこぼれ聖女が、B級グルメへの愛だけで本当の聖女になっていく話
ニャンてこった!異世界転生した元猫の私が世界を救う最強魔法使いに?
 猫とリスの壮絶でくだらない、そして世界を巻き込んだ戦いの話
時間貸し『ダンジョン』経営奮闘記
 異世界でビジネススキルを使い倒す異色ファンタジー!
幻想文学シリーズ
 日常に潜むちょっとした不思議な話。ちょっと甘酸っぱい話。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ