表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桃太郎伝 ~追放された元神は、きびだんごの絆で鬼を討ち、愛しき仲間たちと世界を救う~  作者: ざつ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/71

第十六話:竜宮への誘い、乙姫との出会い -1

挿絵(By みてみん)



風神と雷神との和解、そして太郎の神力覚醒という大きな節目を越え、太郎たち一行は新たな目的地である竜宮へと向かっていた。


天岩戸を出て数日、彼らは険しい山道を抜け、広大な海へとたどり着いた。


目の前に広がるのは、どこまでも続く紺碧の海。水平線は遥か彼方まで伸び、空と海が溶け合う。潮風が肌を撫で、遠くでカモメの鳴き声が聞こえる。太陽の光が海面に反射し、キラキラと輝く。


しかし、彼らの表情には、その美しさとは裏腹に、新たな試練への緊張感が漂っていた。


「これが竜宮へ続く海か……。風神様と雷神様は、乙姫様が待っていると仰っていたが……本当に、海の底に竜宮城なんてあるのか……? それとも、この海の向こうに、隠された島があるのだろうか……?」



太郎は、水平線の彼方を見つめ、静かに呟いた。


彼の胸には、乙姫との出会い、そして鬼ヶ島への道への期待と、同時にどうやって海の底へ辿り着くのかという、明確な不安が混じり合っていた。

これまでの試練とは異なる、未知の領域への踏み出しに、彼の心は高鳴っていた。


「若様、この海域は、尋常ではありません。微かながら、強大な魔力を感じます。海の底から、何か巨大な存在が蠢いているような……ただならぬ気配がします」


黒鉄は、潮風に髪をなびかせながら、鋭い視線で海を見渡した。彼女の琥珀色の瞳は、海の奥に潜む危険を探ろうとしていた。その魔力は、これまでの鬼とは異なる、純粋な水の力に満ちていた。その冷たさが、肌を刺すように感じられる。


「うわ~! 海だ~! 広いね~! でも、なんか、ちょっと怖いかも……。竜宮城って、この海のどこにあるんだろう? どうやって行くの~? 船もないし……」


琥珀は、海を見上げて目を輝かせたが、すぐにその広大さと、海の奥から感じる不穏な気配に、身をすくませた。彼女の小さな体が、潮風に微かに震える。足元に打ち寄せる波が、彼女の好奇心をわずかに怯えさせる。


「この魔力……海に潜む、強大な存在の気配です。気を引き締めましょう。乙姫殿の導きがあるとはいえ、竜宮城への道筋は、まだ不明です。この海は、ただ穏やかなだけではない……その深淵には、何が潜んでいるか……」


天音は、白い羽を広げ、海上を冷静に分析した。彼女の瞳は、海の深淵に潜む魔力を捉えようとしていた。その魔力の奔流は、彼女の羽を微かに震わせるほどだった。


「へっ、竜宮城ってのがこの海のどこかにあるってのか? 面白ぇじゃねぇか! どんなデカい奴がいても、俺の斧でぶっ飛ばしてやるぜ! 海の鬼だろうと、関係ねぇ! 陸の鬼と、どう違うか、試してやる!」


八重は、豪快な笑みを浮かべ、斧を肩に担いだ。彼女の瞳には、強敵との戦いへの闘志が宿っている。彼女の全身から、漲る力が感じられた。


「しかし、どうやって竜宮城へ行くのですか? このままでは、途方に暮れてしまいます……。この広大な海を前に、どうすれば……」


黒鉄が、困惑した表情で太郎を見上げた。広大な海を前に、彼らの陸上での経験は、ほとんど役に立たないように思われた。


「うーん……確かに、どうしたものか……。風神様や雷神様は、乙姫様が待っているとしか仰らなかったからな……。何か手掛かりはないか? この海のどこかに、入り口があるのだろうか……」


太郎も腕を組み、思案に暮れた。彼らは海のほとりに立ち尽くし、広大な海原を前に、どうすることもできないでいた。潮風が彼らの髪を揺らし、遠くで波の音が響く。


「ねぇねぇ、太郎兄ちゃん! 私と天音ちゃんで、近くの村で聞いて回ってみようよ! もしかしたら、竜宮城のこと、何か知ってる人がいるかも! 伝説とか、言い伝えとか! 海のことは、漁師さんが一番詳しいはずだよ!」


琥珀が、目を輝かせ、提案した。彼女の好奇心は、この膠着状態を打開しようと突き動かされていた。


「そうですね。伝説を語り継ぐ者や、海に詳しい漁師ならば、何か知っているかもしれません。私が行きましょう。琥珀殿も一緒ならば、情報収集も捗るでしょう。分担して探しましょう。効率的です」


天音も、琥珀の提案に賛同した。彼女の冷静な判断が、具体的な行動へと繋がる。彼女の白い羽が、情報収集への意欲を示すかのように, 微かに広がる。


『皆さま、海から感じる魔力は強まっています。この海域は、その強大な存在の領域……。警戒を怠らぬよう……。この魔力は、我々の想像を遥かに超えるかもしれません。

 情報収集は重要ですが、くれぐれもご無理なさらないでください。何かあれば、すぐに引き返してください。決して、深追いなさらぬよう』


葛の思考が、太郎の心に響いた。彼女は、海の魔力の流れを読み取り、仲間たちに警告を発する。彼女の表情は、いつも以上に真剣だった。





琥珀と天音は、早速、近くの漁村へと向かった。


村はずれの小さな漁村は、潮の香りと、魚を干す匂いに満ちていた。老いた漁師たちが網を繕い、子供たちが浜辺で遊んでいる。琥珀は持ち前の明るさで村人たちに話しかけ、天音は冷静に彼らの言葉に耳を傾けた。


村人たちは、海の奥に広がる伝説の竜宮城について、様々な言い伝えを語った。

その多くは、海の底に存在する神秘の都であり、選ばれし者しか辿り着けないというものだった。中には、竜宮城へ行った男の話や、そこで玉手箱をもらったという話も混じっていた。


しかし、その中に、海の底へ誘う「特別な亀」の伝説が語られていた。その亀は、心優しき者を竜宮城へと導くという。


「へぇ~! 亀さんが、竜宮城に連れて行ってくれるんだって! 面白~い! 太郎兄ちゃん、これだよ、これ! 亀さんを探そうよ!」


琥珀が、目を輝かせながら天音に報告した。その声には、確かな手応えが込められている。彼女の小さな体が、喜びでぴょんぴょんと跳ねる。


「なるほど……伝説の亀。それが、乙姫殿の使者ということでしょうか。しかし、その亀がどこにいるのか……。そして、その亀が本当に乙姫殿の使者なのか、見極める必要があります」


天音は、冷静に分析した。彼女の瞳は、伝説の真偽を見極めようとしていた。その言葉の裏には、慎重な判断が伺える。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その他の作品もぜひ!
ガイア物語(代表作)
 壮大な異世界ファンタジーサーガ 同時並行的に複数のストーリーが展開します
異世界グルメ革命! ~魔力ゼロの聖女が、通販チートでB級グルメを振る舞ったら、王宮も民もメロメロになりました~(週間ランクイン)
 魔力ゼロの落ちこぼれ聖女が、B級グルメへの愛だけで本当の聖女になっていく話
ニャンてこった!異世界転生した元猫の私が世界を救う最強魔法使いに?
 猫とリスの壮絶でくだらない、そして世界を巻き込んだ戦いの話
時間貸し『ダンジョン』経営奮闘記
 異世界でビジネススキルを使い倒す異色ファンタジー!
幻想文学シリーズ
 日常に潜むちょっとした不思議な話。ちょっと甘酸っぱい話。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ