表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桃太郎伝 ~追放された元神は、きびだんごの絆で鬼を討ち、愛しき仲間たちと世界を救う~  作者: ざつ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/71

第十四話:雷神の試練、雷鳴の迷宮 -3

『【癒やしの魔法陣・雀の涙】! 皆さま、ご無理なさらないで! 体力の消耗が激しいです! 回復を急ぎます! このままでは、全員が……! 天音殿、雷神の動きに、隙はありませんか!? 琥珀殿、何か撹乱できることは!?』


葛の思考が、太郎の心に響いた。彼女は、魔法陣を展開し、仲間たちの疲労を回復させていく。しかし、雷神の猛攻は回復を上回り、仲間たちの顔には、疲弊の色が濃くなっていく。


琥珀も、雷撃の合間を縫って回避を試みるが、その速度は限界に近づいていた。天音も、正確な矢を放とうとするが、雷光が視界を遮り、狙いが定まらない。


「くそっ、見えない! 雷光が強すぎて、狙いが定まらない! 琥珀、何かできることは!?」


天音は、焦りの声を上げた。彼女の白い羽が、雷の魔力で微かに焦げ付く。


「うわ~! 雷が速すぎるよ~! 幻惑も効かない! これじゃ、どうしようもないよ~! 天音ちゃん、ごめんね!」


琥珀は、悲鳴を上げた。彼女の素早い動きも、雷神の雷撃の前には、無力だった。




雷神雷牙は、彼らの防御を嘲笑うかのように、さらに強力な雷撃を放った。

それは、迷宮全体を覆い尽くすほどの、広範囲攻撃だった。太郎たちは、為す術もなく、その雷撃に飲み込まれそうになる。地面が大きく揺れ、岩が崩れ落ちる。


「ははは! 無駄な抵抗よ! お前たちの力など、この我の前には塵に等しい! これで終わりだ! 消え失せろ、人間ども! お前たちの絆など、この雷の前には、脆くも崩れ去る!」


雷神雷牙の声が、勝利を確信したかのように響き渡る。その雷撃は、彼らの希望を打ち砕くかのように、迷宮の全てを飲み込もうとしていた。


その瞬間、太郎の全身から、眩い桃色の光が迸った。それは、風神の試練で覚醒した「桃源郷の鼓舞」の力だった。仲間たちの疲弊した体に、活力が満ちていく。傷が癒え、身体能力が限界以上に引き上げられるのを感じる。


「みんな……! 諦めるな! 俺たちは、まだやれる! この力は、みんなを守るためにあるんだ! 俺は、もう誰一人、傷つけさせない……! この絆がある限り、俺は負けない!」


太郎の叫びが、雷鳴に掻き消されまいと響き渡る。彼の瞳は、金色に輝き、その光が仲間たちへと伝播していく。その光は、雷神の雷光をも凌駕し、迷宮全体を桃色に染め上げた。


「【桃源郷の鼓舞】!」


太郎の叫びが、迷宮全体に響き渡る。彼の全身から放たれる桃色の光が、仲間たちを包み込み、彼らの能力を限界以上に引き出す。


「若様の力が……! こんなにも……! 傷が……癒える……! 体が軽い……! 力が漲る……! 八重殿、穂積殿、もう一度!」


黒鉄は、驚きに目を見開いた。彼女の剣の動きは、これまで以上に鋭く、速くなっていた。彼女の琥珀色の瞳は、太郎の神々しい姿に釘付けになっている。


「おう! 任せとけ、黒鉄! 太郎の力、最高だぜ! 雷神、覚悟しな!」


八重は、黒鉄の言葉に力強く応え、再び斧を構えた。彼女の全身から、漲る力が感じられる。


「うおおおお!力がみなぎる~! これなら、どんな雷だってぶっ飛ばせる! 雷神様、覚悟しな! 本気で行くよ! 琥珀の幻惑、今度こそ効かせてやる! 天音ちゃん、狙いはどこ!?」


琥珀は、元気いっぱいに叫んだ。その瞳は、興奮でキラキラと輝いている。彼女の体が、まるで羽が生えたかのように軽やかに動く。雷撃の合間を縫って、雷神の死角へと素早く移動する。


「……これが、彼の真の力。私たちの絆が、彼をここまで強くするのですね……感無量です。この力があれば……! どんな雷も、恐れるに足らず……! 雷神の動き、もう見切れます! 琥珀殿、雷神の左翼に、一瞬の隙が!」


天音は、静かに呟いた。彼女の白い羽が、感動に微かに震える。その瞳からは、一筋の涙がこぼれ落ちていた。彼女の弓を持つ腕に、雷の魔力が集中していく。


「お兄ちゃん、すごい! 穂積も頑張るよ! もっともっと、みんなを守れる! 穂積の結界、もっと強くなるよ! 雷神様なんて怖くないもん! 黒鉄お姉ちゃん、八重お姉ちゃん、頑張って!」


穂積は、太郎の袴の裾をぎゅっと掴み、純粋な笑顔で励ます。彼女の小槌が、太郎の光に呼応するように、黄金の輝きを増した。結界の光が、雷神の雷光を押し返す。


「へっ、最高だぜ、若造! あんたの力、存分に貸しやがれ! これで、ぶっ飛ばしてやるぜ! 雷神、俺の斧で、お前を叩き潰してやる! 来い、雷神! 黒鉄、行くぞ!」


八重は、豪快な笑みを浮かべ、斧を握りしめた。その瞳には、強敵との戦いへの闘志が宿っている。斧の一振りで、雷神の雷撃を粉砕する。


『皆さまの力が、限界を超えて増幅されています。太郎殿の鼓舞は、まさに奇跡……! 今が、反撃の好機です! 雷神の動きに、わずかな乱れが生じました! この機を逃してはなりません! 皆さま、一気に畳み掛けましょう!』


葛の思考が、太郎の心に静かに響いた。彼女は、魔法陣の光をさらに強め、仲間たちを後方から支えた。彼女の瞳は、雷神の魔力の流れを正確に捉えていた。


太郎の覚醒した力と、仲間たちの増幅された能力が合わさり、雷神の猛攻を押し返す。八重の斧が雷撃を弾き、黒鉄の剣が雷の流れをいなす。

琥珀は雷神の死角に回り込み、幻惑の魔法で雷神の目をくらませる。


天音は、雷神のわずかな隙を狙い、正確な矢を放つ。

穂積の結界は、雷神の雷撃を完全に防ぎ、葛の回復魔法が、仲間たちの疲労を瞬時に癒やす。彼らの連携は、雷神の予測を遥かに超えていた。


「な、なんだと!? この力は……! まさか、これほどの……! お前たちの絆が、我の雷を押し返すだと……!? 信じられん……! この若き神……!」


雷神雷牙の幻影が、驚きに目を見開いた。

彼の放つ雷撃が、彼らには届かない。

その巨体が、わずかに後退する。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その他の作品もぜひ!
ガイア物語(代表作)
 壮大な異世界ファンタジーサーガ 同時並行的に複数のストーリーが展開します
異世界グルメ革命! ~魔力ゼロの聖女が、通販チートでB級グルメを振る舞ったら、王宮も民もメロメロになりました~(週間ランクイン)
 魔力ゼロの落ちこぼれ聖女が、B級グルメへの愛だけで本当の聖女になっていく話
ニャンてこった!異世界転生した元猫の私が世界を救う最強魔法使いに?
 猫とリスの壮絶でくだらない、そして世界を巻き込んだ戦いの話
時間貸し『ダンジョン』経営奮闘記
 異世界でビジネススキルを使い倒す異色ファンタジー!
幻想文学シリーズ
 日常に潜むちょっとした不思議な話。ちょっと甘酸っぱい話。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ