第十三話:風神の試練、嵐の結界 -2
太郎は仲間たちをまとめ、指示を出した。
彼のリーダーシップと、きびだんごによって高められた仲間たちの力が、風の激流を切り裂く。
太郎の槍が風の流れを読み、道筋を示す。
彼の槍の穂先が、風の渦の中心を正確に捉え、その流れをわずかに変える。
その動きは、まるで風そのものを操っているかのようだった。
彼の全身から放たれる微かな桃色の光が、風の魔力をわずかに鎮める。
「黒鉄、八重、前へ!風を切り開け! 突破口を作るんだ! 俺が道を切り開く! 琥珀、天音、後方支援を!風の流れを読んで、弱点を狙え! 穂積、葛、防御と回復を頼む!みんなを守ってくれ! 俺が道を作る!」
太郎の指示が、風の唸り声にも負けずに響き渡った。その声には、迷いがなく、確かな自信が漲っていた。彼の瞳は、仲間たち一人ひとりの顔を捉え、その決意を確かめる。
「おう!任せとけ! ぶっ飛ばしてやるぜ! 若様の道を開く! 俺に続け! 風神、覚悟しやがれ!」
八重は、豪快な笑みを浮かべ、斧を振りかざした。彼女の斧の一振りは、風を切り裂き、前へと進む道を開く。彼女の足元で、岩が大きく砕け散った。
「はっ! 若様の道を開きます! この身、若様のために! 必ずや! 若様の剣となりましょう!」
黒鉄は、八重の動きに合わせ、二本の刀で風の渦を切り裂いた。彼女の剣舞は、流麗でありながらも力強く、嵐の猛攻を受け止める。刀身が風とぶつかり合い、甲高い音が響く。
「琥珀、風の流れを読んで、敵の目をくらませて! 幻術で撹乱して! 天音、弱点を狙って! 風神の魔力の流れを読んで!」
太郎は、さらに指示を重ねる。
(みんながいるから、俺は迷わない! この絆が、俺の力だ! 俺は、一人じゃない……! この仲間たちとなら、どんな困難も乗り越えられる! 必ず、この試練を突破する!)
太郎の心の声が、彼の全身に力を漲らせた。その声は、彼の心に確かな光を灯した。
風の力を読み解く天音の矢が風神の力の源を正確に捉え、太郎の槍がその急所を突く。天音は、風の流れのわずかな乱れを見逃さなかった。
彼女の白い羽が、風を切り裂き、矢の軌道を正確に導く。矢は、風の渦を縫うように進み、結界の深部へと向かう。
太郎は、その矢が示した風神の力の源である結界の核を狙い、槍を構えた。彼の全身から、桃色の光が迸り、槍の穂先に集中していく。
「見えました!風の流れの乱れ……そこです、太郎殿! あそこが、風神の力の源! 今です! 一気に決めてください! 好機は二度ありません!」
天音は、上空から指示を出す。彼女の白い羽が、風を切り裂き、矢の軌道を正確に導く。その矢は、まるで風そのものを操るかのように、嵐の結界の深部へと吸い込まれていく。
「【真槍・桃紋閃】!」
太郎は、渾身の一撃を放った。
槍の穂先から放たれる桃色の光が、風神の力の源である結界の核を正確に貫いた。その瞬間、結界全体が激しく閃光を放ち、まるでガラスが砕けるかのように、音を立てて崩壊し、光の粒子となって洞窟全体に拡散していく。
風の唸り声は止み、洞窟内には、それまでの喧騒が嘘のように静寂が訪れた。
「ほう……見事。お前たちの連携、そしてその絆……我の風を乗り越えるとはな……。お前は、真の力を取り戻しつつある……。この成長、見事としか言いようがない……。雷牙よ、この者たちの力、しかと見届けよ……」
風神颯馬の声が、驚きと、しかしどこか満足げな響きを帯びて消え去る。嵐の結界は霧散し、洞窟内に一時的な静寂が訪れた。その声は、彼らの心に深く刻み込まれた。
風の試練を乗り越えた太郎たち。奥へと進むと、風神颯馬の力は弱まり、洞窟の空気は一変した。それまでの荒れ狂う風は嘘のように消え失せ、洞窟内には、ひんやりとした静寂が戻る。
彼らの顔には、試練を乗り越えた達成感が浮かんでいた。疲労困憊の体だが、その瞳には、確かな光が宿っている。安堵の息が、静かに洞窟の空気に溶けていく。
「やったな、みんな! 風が止まったぞ! 本当に、止まったんだ……! みんなのおかげだ! ありがとう!」
太郎は、安堵の息をついた。その声には、喜びと、仲間たちへの感謝が込められている。彼の全身から、緊張が解け、力が抜けていくのを感じた。
「やったー!風が止まった! もう飛ばされないね! 地面がしっかりしてる! やったやったー! これで、もっと奥へ進めるね!」
琥珀は、元気いっぱいに叫んだ。彼女は、喜びのあまりぴょんぴょんと跳ねる。地面にしっかりと足がつく感触を確かめるように、何度も足踏みをする。
「へっ、楽勝だったぜ! こんなもん、俺の敵じゃねぇな! 次もぶっ飛ばしてやるぜ! 太郎、俺に任せとけ! 雷神とやらも、まとめて相手してやる!」
八重は、豪快な笑みを浮かべ、肩に担いだ斧を握りしめた。その顔には、達成感が浮かんでいる。彼女の体からは、まだ熱気が立ち上っていた。
◆
太郎は仲間たちとハイタッチを交わし、互いの健闘を称え合った。
彼らの結束は試練を越えるごとに強固になっていく。
笑顔が交わされ、絆が深まる瞬間。互いの手のひらから伝わる温もりが、彼らの心を温かく包み込んだ。それは、言葉以上の、確かな信頼の証だった。
「みんながいてくれたからだ。本当にありがとう! 一人じゃ、決して乗り越えられなかった。お前たちこそが、俺の真の力だ。この絆がある限り、俺はどこまでも行ける! どんな困難も、乗り越えてみせる!」
太郎は、仲間たち一人ひとりの顔を見つめ、心からの感謝を伝えた。彼の瞳には、仲間への深い信頼と愛情が宿っている。その言葉は、彼の心からの本音だった。
「当然のことです、若様。私たちは、どこまでも若様にお供いたします。若様が望む限り、この黒鉄は若様の剣となり、盾となりましょう。それが、私の使命です。若様が選んだ道ならば、どこまでも……」
黒鉄は、太郎の言葉に、迷いなく応えた。彼女の琥珀色の瞳は、太郎の背中を見つめ、その決意を支えるかのように輝いている。彼女の心臓が、太郎の言葉に熱く高鳴った。
「お兄ちゃん、かっこよかったよ! 穂積、お兄ちゃんの隣にいると安心する! ずっと、お兄ちゃんの隣にいるね! お兄ちゃん、大好き! 穂積も、お兄ちゃんみたいに強くなりたい!」
穂積は、太郎の袴の裾をぎゅっと掴み、純粋な笑顔で励ます。その小さな体は、もう恐怖に震えてはいなかった。彼女の瞳は、太郎への純粋な憧れで輝いている。
『皆さまの連携、見事でした。太郎殿の指揮も、的確でした。この絆こそが、太郎殿の真の力です。これほどの力を引き出すとは……。太郎殿の成長は、我らの想像を遥かに超えています』
葛の思考が、太郎の心に静かに響いた。彼女は、穏やかな眼差しで仲間たちを見守っていた。その表情には、満足げな笑みが浮かんでいた。




