表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桃太郎伝 ~追放された元神は、きびだんごの絆で鬼を討ち、愛しき仲間たちと世界を救う~  作者: ざつ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/71

第十二話:天岩戸の洞窟へ -2

洞窟の入り口には、人ならざる姿の風神颯馬が待ち受けていた。


彼の体からは、圧倒的な神気が放たれ、周囲の空気を歪ませる。

その瞳には、太郎を試すような光が宿っている。雷神雷牙の姿は見えないが、洞窟の奥から微かに響く雷鳴が、彼の存在を示唆していた。

その雷鳴は、まるで大地が唸るかのように重く、彼らの心臓に直接響き渡る。


「よくぞ来た、太郎よ」


風神颯馬の声は、風の囁きのように静かだが、その中に確かな威厳が宿っていた。彼の白い衣が、風もないのに微かに揺らめく。


「お前が神としての資格を取り戻せるか、ここで見定めさせてもらう。雷牙は、この奥で待っている。まずは、我の風を乗り越えてみせるか?」


風神颯馬の声が、洞窟全体に響き渡った。その言葉は、太郎だけでなく、その仲間たち全員を試すかのように響いた。

その言葉の後に、洞窟の奥から一段と重い雷鳴が響き、雷神雷牙の圧倒的な存在感を匂わせた。


「風神……!」


太郎は、その名を聞き、全身が硬直した。彼の脳裏には、天界での追放の記憶が鮮明に蘇る。


「(刀に手をかけ)若様、警戒を!この霊気……尋常ではありません! まるで、空間そのものが歪んでいるようです……!」


黒鉄は、刀に手をかけ、警戒を強めた。

彼女の琥珀色の瞳は、風神の放つ神気を捉え、その圧倒的な力に戦慄していた。




風神颯馬が巨大な嵐の結界を作り出し、太郎たちを阻む。

その嵐は、太郎の心に潜む「力の制御への恐怖」を具現化したかのように、彼を飲み込もうとする。


風が唸り、雷が轟く。嵐の結界は、彼らの進路を完全に塞ぎ、その中からは、風神颯馬の嘲るような声が聞こえてくる。結界の表面は、まるで生きているかのようにうねり、彼らを飲み込もうと脈動していた。


「さあ、試練の始まりだ。この嵐を乗り越えられぬ者に、真の力は与えぬ。お前たち、その仲間たちと共に、我の風を乗り越えてみせるか?」


風神颯馬の声が、嵐の結界の中から響き渡る。その言葉は、太郎だけでなく、その仲間たち全員を試すかのように響いた。


「くっ……この嵐は……! まるで、俺の心を映しているかのようだ……」


太郎は、嵐の結界の前に立ち尽くした。彼の心には、再び力の暴走への恐怖がよぎる。

結界の風が、彼の心の奥底にある不安を揺さぶるように感じられた。


「うわ~!風が強くて目が開けられない~!飛ばされそう~!」


琥珀は、強風に煽られ、目を閉じながら叫んだ。彼女の小柄な体が、風に大きく傾ぐ。


「なんて風だ!これでは、前に進めねぇ! 体が押し戻される……!」


八重は、足を踏ん張り、風に抗おうとするが、その巨体すらも微かに揺らぐ。彼女の足元で、岩が微かに砕ける音がした。


「風神の力が、まだこの空間を支配している。この嵐は、単なる風ではありません。精神にも影響を及ぼします。心が乱れれば、動きが鈍る……」


天音は、冷静に分析するが、その白い羽も強風に煽られ、その体勢を保つのに苦労していた。彼女の瞳は、嵐の結界の内部に潜む魔力の流れを捉えようとしていた。


『皆さま、風に体力を奪われています。このままでは、結界を突破できません。この風は、精神力も削り取ります』


葛の思考が、太郎の心に響いた。

彼女は、強風の中で魔法陣を展開しようとするが、風圧に阻まれ、その光が揺らぐ。


「若様、危ない!この風は、まるで生きているかのようです! 隙を見せれば、すぐに飲み込まれてしまいます!」


黒鉄は、太郎を庇うように前に立ち、強風に抗った。彼女の武士の装束が、激しく風になびく。彼女の琥珀色の瞳は、嵐の動きを警戒深く見据えていた。



太郎は「僕たちは一人じゃない!」と仲間たちを鼓舞する。

彼の言葉は、嵐の結界の中で苦戦する仲間たちの心に、温かい光を灯した。


皆の眼差しが太郎に集中し、彼もまた仲間たちの存在に勇気づけられる。彼の全身から、桃色の鼓舞の光が放たれ、仲間たちの能力を限界以上に引き出す。


「みんな!怯むな!僕たちは一人じゃない!力を合わせれば、どんな嵐だって乗り越えられる!」


太郎の号令が、嵐の結界の中に響き渡る。その声には、迷いがなく、確かな自信が漲っていた。彼の瞳は、金色に輝き、その光が仲間たちへと伝播していく。


「はい!若様! この身、若様のために!」


黒鉄は、力強く応えた。彼女の瞳は、太郎への揺るぎない忠誠で輝いている。彼女の全身に、活力が満ちていくのを感じた。


「おう!太郎兄ちゃん! 任せてよ!」


琥珀は、元気いっぱいに叫んだ。その顔には、恐怖よりも、太郎への信頼が浮かんでいる。彼女の体が、風の中でも軽やかに動くのを感じた。


「彼の言葉が、力をくれる……! この感覚は……!」


天音は、驚きに目を見開いた。彼女の白い羽が、太郎の鼓舞の光を受けて、より一層輝きを増す。

彼女の弓を持つ腕に、新たな力が漲るのを感じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その他の作品もぜひ!
ガイア物語(代表作)
 壮大な異世界ファンタジーサーガ 同時並行的に複数のストーリーが展開します
異世界グルメ革命! ~魔力ゼロの聖女が、通販チートでB級グルメを振る舞ったら、王宮も民もメロメロになりました~(週間ランクイン)
 魔力ゼロの落ちこぼれ聖女が、B級グルメへの愛だけで本当の聖女になっていく話
ニャンてこった!異世界転生した元猫の私が世界を救う最強魔法使いに?
 猫とリスの壮絶でくだらない、そして世界を巻き込んだ戦いの話
時間貸し『ダンジョン』経営奮闘記
 異世界でビジネススキルを使い倒す異色ファンタジー!
幻想文学シリーズ
 日常に潜むちょっとした不思議な話。ちょっと甘酸っぱい話。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ