第十一話:かぐや姫の真意、そして新たな旅 -4
葛は太郎の旅への同行許可をかぐや姫に求め、かぐや姫は葛の決意と太郎への信頼を見抜き、同行を許可する。
葛は、かぐや姫の前に静かに跪いた。彼女の瞳は、迷いなくかぐや姫を見つめている。
『かぐや姫様、この旅に、私も太郎殿と共に参ることをお許しください。彼の『光』、そしてその旅の行く末を、この目で見届けとうございます。彼の真の力が目覚める瞬間を…』
葛の思考が、かぐや姫の心に響く。かぐや姫は、その神々しい瞳で葛を見つめると、優しく頷いた。
「よかろう、葛。あなたの忠誠心と、太郎への信頼、しかと見届けた。彼の旅は、あなたにとっても、新たな道を開くこととなるでしょう」
かぐや姫の声は、広間全体に響き渡る。
「葛殿…!」
太郎は、葛の言葉に、驚きと、そして感謝の念を込めて名を呼んだ。彼の心には、葛の深い決意が伝わった。
「…良かった。若様のお供が、また一人増えました」
黒鉄は、安堵の息をついた。
かぐや姫は天岩戸への道を示す神秘的な地図を太郎に授け、過去と向き合い真の力を手に入れるよう促す。地図は月光を受けて輝き、天岩戸の場所を示している。
「さあ、太郎よ。この地図が、天岩戸への道を示すでしょう。己の過去と向き合い、真の力を手に入れるのです。あなたの使命は、まだ始まったばかり。この世界を救う『光』となるために…」
かぐや姫の声は、力強く、太郎の心に響いた。彼女の掌から放たれる月光が、地図を包み込み、地図に描かれた天岩戸の場所が、まばゆい光を放ち始める。
「この地図は…!天岩戸への…!」
太郎は、その神秘的な地図に目を奪われた。その地図からは、天界の魔力が感じられた。
「…天界の魔力。かぐや姫様は、天界のことも…」
天音は、冷静な表情を保ちながらも、その瞳には、深い驚きが浮かんでいた。
「若様…」
黒鉄は、太郎の傍らに立ち、その背中を支えるように立った。
一行はこれからの旅の方針を話し合い、太郎は不安を抱えつつも、仲間たちと共にどんな困難も乗り越えられると決意を新たにする。その瞳には、未来への希望が宿っている。
「天岩戸…そこは、俺が追放された場所。だが、みんながいてくれるなら、どんな困難も乗り越えられるはずだ。俺は一人じゃない」
太郎の声は、不安を乗り越え、確かな決意に満ちていた。彼の視線は、仲間たち一人ひとりに向けられる。
「はい、若様。どこまでも、お供いたします。若様が望む限り、この黒鉄は若様の剣となり、盾となりましょう」
黒鉄は、力強く応える。その瞳は、太郎への揺るぎない忠誠で輝いていた。
「よーし!天界の冒険だ!なんか面白そ~!どんな神様がいるのかな~?宝物とかあるかな!?」
琥珀は、目を輝かせ、飛び跳ねた。彼女の好奇心は、天界への冒険に胸を膨らませている。
「へっ、天界だろうがなんだろうが、俺の斧がぶっ壊してやるぜ!邪魔する奴はな!」
八重は、豪快な笑みを浮かべた。その言葉には、天界の神々すらも恐れない、彼女の力への自信が滲み出ている。
「お兄ちゃん、頑張って!穂積も応援するね!怖いことあっても、みんなで一緒だよ!」
穂積は、太郎の袴の裾をぎゅっと掴み、純粋な笑顔で励ます。
「私も、この旅路を見届けます。あなたの使命が、どこまで続くのかを」
天音は、静かに太郎を見つめ、その言葉を口にした。その瞳には、太郎への深い信頼と、未来への希望が宿っている。
『彼の光は、ますます強くなっていく…この先には、真の覚醒が待っている…』
葛の思考が、太郎の心に響いた。
◆
夜の野営。
黒鉄たちがかぐや姫の言葉を巡って太郎をからかい、彼への愛情を示す。
太郎は残りわずかとなったきびだんごを眺め、母の愛情と、仲間たちとの絆の温かさを噛みしめる。
焚き火の炎が暖かく揺れる。夜空には、満天の星が輝き、彼らの旅路を照らしているようだった。
「ねぇねぇ、太郎兄ちゃん!かぐや姫様、太郎兄ちゃんに興味津々だったね~!もしかして、お嫁さんになっちゃうの~?うふふ~!」
琥珀が、焚き火のそばで太郎をからかうように笑った。その声には、いたずらっぽい響きが混じっている。
「琥珀殿!はしたない!若様をからかうのはおやめください!かぐや姫様は、神聖な存在です!」
黒鉄が、琥珀を窘める。彼女の顔は、わずかに赤くなっていた。
「へっ、太郎もモテるじゃねぇか!やっぱ強い男は人気があるってことだな!」
八重は、豪快に笑った。その言葉には、太郎への素直な賞賛が込められている。
「…かぐや姫様は、真の力を求める者を導く存在。それは、ある意味で、特別な縁と言えるでしょう。ですが、それが男女の情愛に繋がるかどうかは…」
天音は、冷静に状況を分析しようとするが、言葉を濁した。彼女の口元には、微かな笑みが浮かんでいる。
「お兄ちゃん、穂積が一番だよ!穂積はずっとお兄ちゃんと一緒!」
穂積は、太郎の腕に抱きつき、満面の笑みを浮かべた。
「(苦笑いしながらきびだんごを見る)…みんな、ありがとうな。お前たちがいてくれるから、俺は…」
太郎は、仲間たちの言葉に苦笑いしながら、残りわずかとなったきびだんごの包みを眺めた。母が作ってくれたきびだんご。
それは、彼の旅の始まりであり、そして、仲間たちとの絆を繋ぐ証でもあった。母の愛情と、きびだんごがもたらした仲間たちとの温かい絆を噛みしめる。
『この絆こそが、彼の真の力…』
葛の思考が、太郎の心に、静かに響いた。彼女は、太郎を見守る瞳に、深い信頼を宿していた。
夜明けと共に、一行は天岩戸を目指し出発する。
空は清々しく晴れ渡り、東の空には、朝焼けのグラデーションが広がっていた。茜色から淡い青へと移ろう空の色が、彼らの新たな旅立ちを祝福するかのように、美しく輝く。
鳥のさえずりが、彼らの新たな旅立ちを祝福するかのように、森に響き渡る。
朝露に濡れた木々の葉が、朝日を受けてきらめいていた。
彼らの足取りは、新たな決意に満ちていた。
「さあ、行くぞ!天岩戸へ!俺たちの、そしてこの世界の未来のために!」
太郎の声は、力強く、迷いがなかった。その声は、朝の森に響き渡り、新たな物語の始まりを告げる。
「はっ!」
黒鉄は、力強く応える。
「レッツゴー!天界の冒険だ!」
琥珀は、元気いっぱいに叫ぶ。
「おう!」
八重は、豪快に頷く。
「お兄ちゃん、頑張ろうね!」
穂積は、太郎の腕に抱きつき、満面の笑みを浮かべた。
「私も見届けます。あなたの使命が、どこまで続くのかを」
天音は、静かに太郎を見つめ、その言葉を口にした。その瞳には、太郎への深い信頼と、未来への希望が宿っている。
『必ずや、彼ならば…』
葛の思考が、太郎の心に深く響いた。六人の仲間たちの絆が、太郎の背中を押し、天岩戸への道を切り開いていく。




