第十一話:かぐや姫の真意、そして新たな旅 -2
翁は、かぐや姫の傍らで、静かに彼らのやり取りを見守っていた。その表情は、満足げだった。彼の白い髭が、微かに揺れる。
「太郎よ。あなた方はこれまでの試練を乗り越えられました。それぞれの試練が、あなた方に何をもたらしたのか、あなた自身は何を見出したのか、改めて聞かせてもらいましょう」
かぐや姫の声は、静かに、しかし明確な問いを含んでいた。その声は、広間全体に響き渡る。
この質疑応答自体が、太郎が試練の意味をどれだけ深く理解しているかを試す、最後の試練のようだった。
太郎は、真剣な表情でかぐや姫を見つめ返した。
「最初の枯れ木に桜を咲かせる試練。あれは、私の『浄化の力』が、破壊だけでなく、生命を育む力でもあることを教えてくれました。
そして、仲間と共に力を合わせることで、心が平穏になり、力が制御できるという鍵を見出したのです」
太郎は、翁が語った言葉を思い出しながら、淀みなく答えた。彼の声には、確かな理解と、自信が宿っている。その瞳は、一点の曇りもない。
「若様は、その力で枯れ木に命を吹き込みました。その光景は、まさに奇跡でした。若様の優しさが、あの枯れ木を蘇らせたのです」
黒鉄が、太郎の言葉に補足した。その瞳は、太郎への深い信頼で輝いている。
「ふむ…見事な答えです。では次。龍宮の宝玉を得た試練では、何を学んだのでしょうか」
かぐや姫が、次の問いを投げかけた。その視線は、太郎の心を見透かすかのようだ。
「龍宮の宝玉の試練では、穂積が仲間になってくれました。彼女の打ち出の小槌の力で、俺たちの攻撃は格段に強くなり、防御も可能になりました。そして、番人との戦いでは、連携をより精密にすることで、どんな強敵にも立ち向かえることを学びました」
太郎は、迷いなく答えた。その言葉には、仲間たちへの感謝と、彼らの力を信じる心が込められている。
「穂積ちゃん、すごかったんだよ!あの槍が、ドーンって大きくなって、岩をぶっ壊したんだから!」
琥珀が、身振り手振りで穂積の活躍を説明した。その瞳は、興奮でキラキラと輝いている。
「穂積殿の小槌は、まさしく戦況を覆す力でした。若様の指揮のもと、我らの連携も、新たな段階へと進みました」
天音も、冷静に補足した。
「なるほど。では、火鼠の皮衣の試練からは、何を得ましたか?」
かぐや姫の問いに、太郎は八重に視線を送った。
「火鼠の皮衣の試練では、八重が仲間になってくれました。彼女の怪力は、迷宮を切り開き、火の守護者との戦いでは、その豪快な力で前線を支えてくれました。
そして、炎を無効化する皮衣の力は、私の浄化の力と共鳴し、自身の持つ力の新たな可能性を示してくれました」
太郎は、八重への感謝と、自身の力の再認識を込めて答えた。
「へっ、太郎もなかなかやるじゃねぇか!俺の力も役に立ったってことだな!」
八重は、腕を組み、得意げに笑った。
「火鼠の皮衣は、その名の通り、炎を無効化する究極の防具。若様が手にされたことで、その真の力が発現したようでした」
葛が、太郎の言葉に補足した。彼女の思考が、太郎の心に響く。
「最後に、子安貝の試練からは、何を見出しましたか?」
かぐや姫が、問いかけた。
「子安貝の試練では、葛殿が仲間になってくださいました。燕の猛攻に絶望しかけた時、葛殿の治癒の力が私たちを救い、的確な指示が勝利へと導いてくれました。この試練で、私たちは、どれほど深い絶望の中でも、決して諦めない心、そして、仲間を信じ、支え合うことの真の重要性を学びました」
太郎は、葛に感謝の視線を送りながら答えた。
『あなたの言葉、しかと受け止めました、太郎殿。』
葛の思考が、太郎の心に響いた。
「ふむ…全ての試練を通して、あなたは仲間を得、その絆を深め、自身の力の真の性質を理解し始めた。それは、私が求めていた『光』そのものです」
かぐや姫は、満足げに微笑んだ。その笑顔は、広間をさらに明るく照らす。




