第十一話:かぐや姫の真意、そして新たな旅 -1
全ての試練を終えた太郎たち一行(太郎、黒鉄、琥珀、天音、穂積、葛、八重)は、月光が差し込むかぐや姫の館の広間に立っていた。
広間は、試練の時とは異なる、穏やかな、しかし神々しい光に満ちている。
その光の中央には、月光を浴びて輝く、かぐや姫の姿があった。
彼女は、薄い衣を纏い、その顔は月の光そのものでできているかのように眩しく、しかしどこか儚げな美しさを放っていた。
その威厳と美しさに、一行は息を呑む。広間を包む霊気は、彼らの肌を心地よく撫で、心の奥深くまで浸透していく。
「よくぞ参った、太郎よ。そして、あなた方の仲間たち」
かぐや姫の声は、透き通るように澄んでおり、広間全体に響き渡る。
その声は、聞く者の心に直接語りかけるかのように、優しく、しかし確かな力を持っていた。
まるで、彼らの魂の奥底に触れるかのような響きだった。
「かぐや姫様…!」
太郎は、その神々しい姿に、畏敬の念を込めて名を呼んだ。彼の瞳は、かぐや姫の放つ光に釘付けになる。その光の奥に、何か深遠な真実が隠されているかのように。
「(息を呑む)なんて、神々しい…!この場に立つだけで、身体が震えます…」
黒鉄は、その場に跪きそうになりながら、かろうじて声を絞り出した。
彼女の琥珀色の瞳は、かぐや姫の光に圧倒されている。
武士としての冷静さを保とうとするも、神聖な存在を前に、その体が自然と敬意を示そうとする。
「うわ~!本物のお姫様だ!綺麗~!キラキラしてる~!私、こんなに綺麗なお姫様、初めて見たよ!」
琥珀は、興奮した声を上げ、目を輝かせた。警戒心も忘れ、その小さな体が喜びでぴょんぴょんと跳ねる。彼女の無邪気な反応が、この場の厳粛な空気をわずかに和らげる。
「お姫様、綺麗だね~!お花さんみたい!」
穂積は、無邪気な笑顔でかぐや姫を見上げた。その瞳には、純粋な憧れが宿っている。
「へっ、これがかぐや姫か。噂通りだな!だが、噂よりもすげぇな!」
八重は、豪快な笑みを浮かべた。その瞳には、強者への率直な感嘆が浮かんでいる。彼女の武人気質が、かぐや姫の力を瞬時に見抜いたようだった。
「…光り輝いています。これほどの存在は、天界の神々にも劣りません」
天音は、冷静な表情を保ちながらも、その瞳には、深い畏敬の念が宿っていた。彼女の白い羽が、微かに揺れる。まるで、天音自身が放つ霊気さえも、かぐや姫の光に吸い寄せられているかのようだ。
『若様が、導かれた…このお方は、真実を知っておられる』
葛の思考が、太郎の心に直接響いた。葛の瞳は、かぐや姫と太郎の間で交錯する、見えない霊気の流れを、静かに、そして克明に捉えていた。
かぐや姫は、静かに頷くと、太郎へと視線を向けた。彼女の言葉は、太郎の心の奥底に響く。
「あなた方が乗り越えた試練は、単なる力の証明ではない。太郎、あなたの内なる『光』が、仲間たちを惹きつけ、その絆が、あなたの力を真に引き出す鍵となることを、私は見極めたかった」
かぐや姫の声は、透き通るように澄み渡り、広間全体に響き渡る。その言葉は、太郎がこれまで感じてきた力の真実を、全て見透かしたかのように語っていた。
太郎は、その言葉に驚きに目を見開いた。きびだんごがもたらした仲間との絆、そしてそれが自身の力の制御に繋がったという気づき。
かぐや姫の言葉は、その全てを肯定し、彼の胸の奥で、確かな熱を帯びて広がっていく。
「若様の、調和の力…そう、翁殿が仰っていた…」
黒鉄は、かぐや姫の言葉に、翁の言葉を重ね合わせた。彼女の瞳には、太郎の力が持つ真の意味への理解が深まる。その瞳の奥には、若様の成長への深い感動が滲んでいた。
「…なるほど。全てが、繋がっていたのですね」
天音は、静かに呟いた。彼女もまた、太郎の力が持つ不思議な性質と、仲間との絆の関連性に気づいていたのだ。彼女の表情には、この世界の深遠なる理を理解したような、知的な光が宿る。
「なるほどね~!太郎兄ちゃん、モテモテだもんね~!お姫様も太郎兄ちゃんのこと好きになっちゃったのかな~!うふふ~!」
琥珀は、無邪気に太郎をからかった。その言葉は、この神聖な場に、わずかな笑いを誘い、張り詰めた空気を和らげる。
「へっ、だから太郎の周りには人が集まるんだな!納得だぜ!やっぱ強い男は最高だ!」
八重も、豪快に笑った。その言葉には、太郎への素直な賞賛が込められている。




