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桃太郎伝 ~追放された元神は、きびだんごの絆で鬼を討ち、愛しき仲間たちと世界を救う~  作者: ざつ


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第十話:舌切り雀の葛と子安貝の試練 -3

回復した仲間たちは再び燕に挑む。


燕は、六人の新たな陣容を見て、警戒心を強めているようだった。その巨大な体が、空中で風を巻き上げ、威嚇するように咆哮する。


「グオオオオオ!小賢しい人間どもめ!この聖域を荒らすな!」


燕の咆哮が、平原全体に響き渡る。


「葛殿、燕の動きを分析してください!穂積、槍を巨大化頼む!八重、黒鉄、燕の動きを止めるぞ!琥珀、天音、援護を!」


太郎は、葛の的確なサポートを受けながら、燕の隙を突いて子安貝を手に入れるべく、仲間たちに指示を飛ばした。彼の全身から、再び桃色の鼓舞の光が放たれ、仲間たちの能力を限界以上に引き出す。


「穂積、承知!お兄ちゃん、いくよ!【小槌・巨大化の祝福】!」


穂積は、太郎の槍に小槌をかざした。黄金の光が太郎の槍を包み込み、槍が瞬時に巨大化する。その長さは、巨木の頂に届くほどだ。


「はっ!若様の道を開きます!【双剣・犬牙乱舞】!」


黒鉄が、巨大化した槍と共に燕へと突撃する。彼女の二本の刀が風を切り裂き、燕の体躯へと迫る。


「おう!【大地鳴動・剛斧】!邪魔だてする奴はぶっ飛ばす!」


八重も、豪快に斧を振りかぶり、黒鉄と並んで燕へと跳躍した。斧が風を叩き、燕の動きを阻む。


「まかせて!【猿影斬】!【百花幻影】!」


琥珀は、燕の周囲に無数の幻影を出現させ、その動きを混乱させる。


「承知いたしました!【追尾の矢・翼閃】!」


天音は、上空から燕の弱点を狙い、矢を放つ。


「葛殿、燕の右翼に隙が!天音殿、風の魔力を集中させてください!黒鉄殿、八重殿、今です!燕の注意を引きつけてください!」


葛が、冷静に指示を出す。その声は、迷宮全体に響き渡り、仲間たちの動きを導く。


「承知!【風切りの一矢】!」


天音の放つ矢が、燕の右翼を正確に射抜く。


「おおっ!」


黒鉄と八重が、燕の動きを止める。


「今だ!【真槍・子安貝奪取】!」


太郎は、巨大化した槍で燕の体勢を崩し、その隙を突いて、燕の巣へと飛び込んだ。

巣の中には、真珠のように輝く美しい貝が一つ。


それが、子安貝だった。太郎は、子安貝を手に取ることに成功する。

子安貝を手に取った瞬間、燕の巨大な体が、一瞬、ぐらりと揺らいだ。


「ぐあああああああ!な、なんだと…!?我が…宝玉…!」


燕は、断末魔の叫びを上げ、その巨大な体が、まるで魂が抜けたかのように力なく落下していく。平原の地面に激突する轟音が響き渡り、土煙が舞い上がる。


燕の体は、ゆっくりと光の粒子となって消滅していく。

その瘴気は、朝日に照らされ、清らかな光に変わっていくようだった。集落に、再び静寂が戻った。


「やった…!龍宮の宝玉だ…!」


太郎は、宝玉の輝きに目を奪われた。その宝玉は、彼の手に吸い寄せられるように浮かび上がり、掌に収まる。宝玉から放たれる清らかな水の霊気が、太郎の全身を包み込み、心地よい感覚が広がった。


翁の言葉が、彼の脳裏をよぎる。

「その宝玉を通して、あなたの『調和の力』が、単なる生命の浄化に留まらず、広大な自然の理をも理解し、導くことができるかを見極めようとしておられます」


「すごい…!本当に、宝玉を手に入れたのね!」


琥珀が、目を輝かせながら宝玉を覗き込む。


「若様、お見事でございます。まさか、穂積殿の小槌と、我らの連携がここまでとは…」


黒鉄が、感嘆の声を上げた。


「新たな力が、若様の掌に…」


天音も、静かに宝玉の輝きを見つめていた。



太郎は葛のサポート能力に感銘を受け、きびだんごを差し出して旅への同行を求める。


葛は、太郎の人間性と、きびだんごの不思議な力に興味を抱き、かぐや姫の許可があれば同行すると告げる。


「葛殿、あなたのような治癒師がいてくれるなら、これほど心強いことはない。もしよければ、俺たちの旅に同行してくれないか?」


太郎は、子安貝を手に、葛へと向き直った。その瞳には、彼女への信頼と、仲間になってほしいという願いが込められている。


『…私に、その資格があるのでしょうか。私の一族は、表舞台に出ることはありません』


葛の思考が、太郎の心に響いた。


「君の力は、多くの命を救う。俺たちには、君の力が必要だ。そして、母上がくれた、このきびだんごも、君のような心優しい人にこそ相応しい。これは、単なる食料ではない。仲間を繋ぐ、絆の証だ」


太郎は、きびだんごの包みを解き、葛に差し出した。彼の掌には、残りわずかとなったきびだんごが二つ。


『きびだんご…(食べる)この力…!そして、この温かさ…』


葛の思考が太郎の心に響いた。

彼女は、きびだんごを口にした瞬間、その不思議な力と、太郎の母の温かさに驚き、目を見開いた。

彼女の全身に、力が漲っていくのを感じる。

それは、ただの食料ではなく、太郎の根源的な力の具現化だと葛は感じ取った。


『…分かりました。かぐや姫様のお許しがあれば、同行させてください。あなたの力と、その優しさ…そして、このきびだんごが紡ぐ絆…全てを見届けたい』


葛の決意が太郎の心に響く。彼女は、静かに頷いた。


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