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桃太郎伝 ~追放された元神は、きびだんごの絆で鬼を討ち、愛しき仲間たちと世界を救う~  作者: ざつ


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第八話:小さな妖精と打ち出の小槌 -4

洞窟の奥深く、彼らの視線の先に、巨大な空間が広がっていた。

そこは、天井から無数の鍾乳石が垂れ下がり、地面には冷たい水が溜まっている。


洞窟の底から湧き上がる水面に、青白い光が揺らめき、その中心から、番人が姿を現した。


それは、巨大な海蛇のような姿をしており、全長は洞窟の天井に届くほど。

全身は青い鱗で覆われ、その鱗は水気を帯びて妖しく輝いている。背中には、透明な鰭のようなものが波打ち、その体からは冷たい水気を帯びた魔力が発せられている。鋭い牙を剥き出し、その瞳は、侵入者を容赦なく排除する殺意に満ちていた。


その名は、ヤマタノオロチの眷属か、あるいはその一部か、海龍とも称される番人であった。


「グオオオオオオ!愚かな人間どもめ!この聖なる宝玉に近づく者は、決して許さん!

 我が名は、蛇将軍。我が鱗の壁となって、貴様らを海の藻屑にしてくれるわ!」


番人が咆哮すると、洞窟の天井から水滴が降り注ぎ、地面が震えた。その巨大な体躯から放たれる圧倒的な威圧感に、洞窟内の空気が重くのしかかる。水気を帯びた瘴気が、彼らの肌をひりつかせる。


「くっ…!水気を帯びた魔力…!これは厄介ですね、若様!動きが読みにくい!」


黒鉄が叫ぶ。彼女の刀は、すでに構えられている。冷たい水気に、刀身がわずかに曇る。


「穂積、頼むぞ!【小槌・巨大化の祝福】!天音、狙いを!」


太郎は、穂積に指示を飛ばした。穂積は、純粋な眼差しで小槌を太郎の槍へと掲げた。

黄金の光が太郎の槍を包み込み、槍が瞬時に巨大化する。同時に、天音の矢にも同じ光が宿り、矢が通常の倍以上の大きさに膨れ上がる。


「はぁぁぁぁ!【真槍・桃紋閃】!」


太郎は、巨大化した槍を振りかぶり、番人の鱗を狙って渾身の一撃を放った。槍は、空気を切り裂く轟音を立て、番人の巨体へと迫る。


「【追尾の矢・翼閃】!狙いは外しません!番人の左目です!」


天音が、矢を放ちながら叫んだ。巨大な矢が、風を切り裂き、番人の左目へと向かう。


「グオオオオ!小賢しい!」


番人は、巨大な尾を振り上げ、槍の一撃を受け止めた。凄まじい衝撃音が洞窟内に響き渡り、地面が大きく揺れる。太郎の槍は、番人の鱗にわずかな傷をつけたに過ぎなかった。しかし、天音の巨大な矢は、番人の尾に激突し、その動きをわずかに鈍らせた。


「太郎兄ちゃん、効いてないよ~!でも、矢は当たった!」


琥珀が叫ぶ。その声には、焦りが混じっていた。


「ならば、これだ!穂積、琥珀、頼んだぞ!黒鉄、次の一撃!」


太郎は、次の連携を指示した。穂積は琥珀の腰に携えられたクナイに小槌をかざす。クナイが瞬時に巨大化し、琥珀はそれを番人の死角へと放つ。


「【猿影斬】!巨大クナイだ!こっちだよ、おデブちゃん!【百花幻影】!」


琥珀は、巨大クナイを投げつけながら、番人の周囲に無数の幻影を出現させた。番人は、幻影に惑わされ、巨大クナイの軌道を見失う。クナイは、番人の首筋に深く突き刺さった。


「ぐあああああ!小賢しい!だが、この程度で我を倒せると思うな!」


番人は、怒りに叫びながら、その巨大な体躯を荒々しく揺さぶった。洞窟全体が揺れ、天井から岩が崩れ落ちてくる。それは、番人の反撃だった。


「若様、岩が!【小槌・結界の祝福】!」


穂積が、素早く小槌を掲げ、太郎たちの頭上に黄金の光を放つ巨大な防御結界を展開した。結界は、番人の腕を受け止め、衝撃音と共に歪むが、砕けることはなかった。


「チッ!しぶとい奴め!」


黒鉄が叫び、刀を構える。番人は、結界に阻まれた怒りを太郎たちへと向け、口から強大な水流を放った。水流は、洞窟の壁を削り取りながら、一直線に太郎たちへと迫る。


「【双剣・犬牙乱舞】!天音殿、援護を!」


黒鉄が、水流を迎え撃つように、二本の刀で水流を切り裂く。刀が水流に激突し、洞窟内に水しぶきが舞い散る。


「【風切りの一矢】!鬼の核を探します!」


天音は、水しぶきの中を舞いながら、風の魔力を込めた矢を放った。矢は、水しぶきを切り裂き、番人の体躯へと突き刺さる。その矢は、番人の鱗に阻まれるが、その動きをわずかに鈍らせた。


「くっ…!穂積、結界を維持しろ!黒鉄、天音、琥珀!畳み掛けるぞ!」


太郎の号令が響き渡る。彼は、槍を構え、番人のわずかな隙を狙っていた。


「【猿影斬】!足元だよ!」


琥珀が、番人の足元へと素早く潜り込み、クナイで番人の足の腱を狙って攻撃を放つ。


「ぐあああああ!小賢しい!」


番人は、苦痛に叫び、その巨体が大きく揺らぐ。その動きは、先ほどよりも明らかに鈍くなっている。


「若様、今です!あの腹部が…!」


天音が、冷静に指示を出す。


「よし!【真槍・桃紋閃】!」


太郎は、仲間たちの連携によって生まれた最大の隙を見逃さなかった。槍に神の力を集中させ、桃色の光を帯びた槍を、番人の腹部めがけて、渾身の一撃を放つ。槍の切っ先が、番人の鱗の隙間を縫うように突き刺さり、その体内深くへと食い込んでいく。


槍から放たれる桃色の光が、番人の体内を浄化していく。その光は、番人の体内で激しく輝き、番人の巨体が内部から破裂しそうになる。


「ぐおおおおおおおおお!な、なんだと…!?この力が…!浄化の…!まさか…!我が…宝玉…!」


番人は、断末魔の叫びを上げ、その巨大な体から青い光が迸る。番人の体が、水となって崩れ落ち、洞窟の地面に広がっていく。そして、番人のいた場所に、冷たい水に浮かぶ、美しい宝玉が残されていた。青く輝くその宝玉は、まるで海の深淵を閉じ込めたかのようだった。


「やった…!龍宮の宝玉だ…!」


太郎は、宝玉の輝きに目を奪われた。その宝玉は、彼の手に吸い寄せられるように浮かび上がり、掌に収まる。宝玉から放たれる清らかな水の霊気が、太郎の全身を包み込み、心地よい感覚が広がった。


翁の言葉が、彼の脳裏をよぎる。

「その宝玉を通して、あなたの『調和の力』が、単なる生命の浄化に留まらず、広大な自然の理をも理解し、導くことができるかを見極めようとしておられます」





「すごい…!本当に、宝玉を手に入れたのね!」


琥珀が、目を輝かせながら宝玉を覗き込む。


「若様、お見事でございます。まさか、穂積殿の小槌と、我らの連携がここまでとは…」


黒鉄が、感嘆の声を上げた。


「新たな力が、若様の掌に…」


天音も、静かに宝玉の輝きを見つめていた。


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