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桃太郎伝 ~追放された元神は、きびだんごの絆で鬼を討ち、愛しき仲間たちと世界を救う~  作者: ざつ


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第八話:小さな妖精と打ち出の小槌 -2

そして、森の木々が、まるで何かに押し広げられたかのように途切れた場所があった。

彼らの目の前には、翁の言葉通り、巨大な岩が立ちはだかっていた。


その岩は、黒々としており、通常の岩とは異質な、微かな魔力を放っている。

岩の表面には、古の文字のようなものが刻まれているのが見て取れた。


「くそっ…この岩、びくともしないぞ!」


太郎は、槍の切っ先で巨大な岩肌を叩いた。槍の穂先が岩に触れると、微かな火花が散る。

しかし、岩は微かに揺れるだけで、砕ける気配はない。彼の表情には、焦燥が浮かんでいた。翁の言葉通り、この岩はただの岩ではなかった。彼の内なる神の力が、岩の放つ異質な魔力に反発するように、微かに脈打つ。


「若様、私の剣でも…この岩は硬すぎます!まるで、結界に守られているようです!」


黒鉄は、両手の刀を岩に叩きつけたが、甲高い金属音を立てて弾かれる。刀身には傷一つついていないが、岩にも傷一つ付かない。彼女の額には、うっすらと汗が滲んでいた。刀を構える腕が、微かに震える。


「爆弾も効かない~!どうしよう、太郎兄ちゃん!」


琥珀は、懐から小さな爆弾を取り出し、岩に投げつけた。しかし、爆発音と共に煙が立ち上るだけで、岩はびくともしない。琥珀は、頬を膨らませ、不満げな声を上げた。その瞳には、焦燥の色が浮かんでいる。


「これでは、先に進めません。この岩は、通常の物理的な力では突破できないようです。翁殿のおっしゃる通り、神々の力が宿っているのでしょう。魔力の流れが、非常に複雑です」


天音は、冷静に状況を分析した。彼女の瞳は、岩の周囲に漂う微かな魔力を感じ取っている。その白い羽が、わずかに緊張に震える。


その時、彼らの耳に、森の奥から軽やかな鼻歌が聞こえてきた。状況の緊迫感とはかけ離れた、無邪気なその歌声に、一行は思わず顔を見合わせる。


木々の合間から姿を現したのは、一人の少女だった。

その体躯は非常に小柄で、見る者の目を惹きつけるほどに幼い。ライトブロンドの髪をおかっぱにしており、その可愛らしい容姿は、まるで童話から抜け出してきた妖精のようだった。


彼女の手には、自身の身長の半分ほどもある、可愛らしい装飾が施された小槌が常に握られている。少女は、楽しげに鼻歌を歌いながら、その小さな小槌で地面の小石を叩いて遊んでいる。


「るんるんる~ん♪お花畑、綺麗だね~!」


少女は、周りの美しい花畑に目を奪われているようだった。


「あれ?ちっちゃい子がいる~!こんな森の奥で何してるんだろ?」


琥珀が、少女の姿に気づき、目を丸くした。彼女の好奇心が、警戒心を上回る。


「こんな森の奥に、なぜ…?迷子だろうか?まさか、翁殿が言っていた助けとなる者…?」


太郎は、少女の姿を見て、心配そうな表情を浮かべると同時に、翁の言葉を思い出した。


「若様、警戒を。こんな人里離れた場所に、子供が一人でいるのは不自然です。何かの罠かもしれません」


黒鉄は、刀に手をかけ、警戒を強めた。彼女の鋭い視線が、少女に向けられている。


少女は太郎たちの困っている様子を見ると、笑顔で太郎に小槌を差し出した。


その小槌は、彼女の体と同じくらい小さく、可愛らしい装飾が施されている。少女の瞳は、太郎の優しさに触れたかのように、キラキラと輝いていた。


「お兄ちゃんたち、困ってるの?これ、使ってみて!きっと役に立つよ!」


少女は、無邪気な笑顔で太郎に小槌を差し出す。その声は、森に響く鳥のさえずりのようだった。


「え?これを…?君の小槌なのか?なぜ、こんな場所に一人で?」


太郎は、少女の差し出す小槌を見て、戸惑いながらも、素朴な疑問を投げかけた。


「だーいじょうぶだよ!穂積ね、お花さんとお話ししてたの!そしたら、お兄ちゃんたちが困ってるって教えてくれたんだ!」


少女は、黒鉄の警戒など気にする様子もなく、太郎に小槌を差し出し続けた。その無垢な笑顔は、疑うことを知らない。その時、少女は初めて自分の名を告げた。「穂積」と。


彼女の答えは、子供らしい、あるいは妖精のような、どこか現実離れしたものだった。

しかし、その純粋な眼差しには、嘘偽りがないように見えた。


「お花さんとお話し?へぇ~、面白いね~!使ってみようよ、太郎兄ちゃん!なんか、この小槌、不思議な力が宿ってる気がする!」


琥珀は、穂積の小槌に興味津々で、太郎に使うよう促した。


彼女の瞳は、好奇心で輝いている。太郎は、穂積の純粋な眼差しと、琥珀の言葉、そして翁の言葉を重ね合わせ、この出会いが試練の一部であることを直感した。戸惑いながらも、その小槌を手に取った。


小槌は、見た目とは裏腹に、不思議と温かい力を放っているようだった。


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