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桃太郎伝 ~追放された元神は、きびだんごの絆で鬼を討ち、愛しき仲間たちと世界を救う~  作者: ざつ


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第八話:小さな妖精と打ち出の小槌 -1

挿絵(By みてみん)



館で一夜を明かした太郎たち一行(太郎、黒鉄、琥珀、天音)は、朝日が差し込む館の広間に集まっていた。


朝食を終え、翁が静かに彼らの前に立つ。

彼の顔には、次なる試練への期待と、厳しさが混じり合っていた。


「太郎殿、あなた方には、次なる試練に挑んでいただきます」


翁の声は、老齢ながらもはっきりと響いた。太郎たちは、真剣な眼差しで翁を見つめる。


「次なる試練は、伝説の『龍宮の宝玉』を手に入れることでございます」


翁はそう告げると、ゆっくりと周囲を見渡した。


「龍宮の宝玉、ですか…」


太郎が静かに呟いた。その言葉には、伝説の地への畏敬の念が込められている。


「龍宮は、深き海の底に存在する、隠された楽園。その宝玉は、海の精霊の力を宿し、万物を司ると伝えられています。


 かぐや姫様は、その宝玉を通して、あなたの『調和の力』が、単なる生命の浄化に留まらず、広大な自然の理をも理解し、導くことができるかを見極めようとしておられます」


翁は、龍宮の宝玉が持つ意味を、丁寧に説明した。


「宝玉への道は、平易ではございません。龍宮へと至る海の道は、強大な魔力によって封じられており、その入り口は、巨大な岩によって阻まれております。

 

 この岩は、単なる物理的な障壁にあらず、古の神々の力が宿り、いかなる力も撥ね退ける、難攻不落の結界によって守られております。力ずくで突破しようとすれば、その力に飲み込まれることでしょう」


翁は、巨大な岩について説明した。

その言葉には、岩の持つ魔力と、それがもたらす危険が込められている。


「ふむ…力ずくでは無理、と。また、一筋縄ではいかない試練のようですね」


天音が、冷静に呟いた。彼女の瞳は、すでにその巨大な岩の魔力について分析を始めている。


「巨大な岩…そんなの、太郎兄ちゃんが槍でドーンってすればいいじゃん!」


琥珀は、呑気に太郎の槍を指差した。


「琥珀殿、翁殿のお話をよく聞きなさい。その岩は、神々の力で守られているのですよ。我らの力が及ばぬ可能性も…」


黒鉄が、眉をひそめて琥珀を窘めた。

彼女の顔には、新たな試練への緊張感が浮かんでいた。


「ご安心ください。宝玉への道は、確かに困難ではございますが、あなた方ならば必ずや乗り越えられると、かぐや姫様は信じておられます。

 道中で、あなた方を助ける者も現れるやもしれません。その者との出会いもまた、試練の一環となることでしょう」


翁は、そう言って、優しく微笑んだ。その言葉に、太郎たちは新たな希望を見出した。


「分かりました、翁殿。龍宮の宝玉、必ずや手に入れて見せます」


太郎は、翁の言葉に力強く応えた。彼の瞳には、新たな試練への覚悟が刻まれている。


館で一夜を明かし、翁から次なる試練が「龍宮の宝玉」であると告げられた太郎たち一行は、新たな目的の地へと向かっていた。




時刻は午前中。


館を出ると、清々しい朝の空気が彼らを包み込む。


しかし、森の奥深くへと道を進むにつれて、道のりは想像以上に険しさを増していく。鬱蒼とした木々が日差しを遮り、細い獣道は次第に泥濘んでいった。湿った土と苔の匂いがあたりに満ちる。


太郎が先頭を歩き、黒鉄がその右隣で周囲を警戒する。琥珀は時折、木に登っては先行し、天音は上空から静かに彼らを見守っていた。翁が言っていた「巨大な岩」は、間もなく彼らの目の前に現れるはずだった。


「まったく…若様、これは獣道というより、獣の住処ではございませんか?足元が酷く悪うございます」


黒鉄が、汚れた袴の裾を払いながら、眉をひそめた。彼女の武士としての矜持が、泥だらけの道に辟易しているようだった。足元が滑り、バランスを崩しかけた瞬間、太郎がすかさず手を差し伸べ、彼女の肩を支える。


「大丈夫か、鈴蘭?」


「はい…ありがとうございます、若様。お見苦しいところを…」


黒鉄は、わずかに頬を染め、視線をそらした。その様子に、太郎は小さく笑みをこぼす。


「え~、黒鉄ちゃん、何言ってるの?これくらい、朝飯前でしょ?忍者の私にかかれば、こんな道、楽勝だよ!」


琥珀は、木の枝から枝へと軽やかに飛び移り、くるりと一回転して見せた。その身軽な動きは、険しい道などものともせず、彼女の活発な印象を際立たせる。彼女の茶色のショートカットが風になびく。


しかし、調子に乗って飛び降りた先が、思いのほか深い泥濘で、琥珀は「ひゃっ!」と小さく悲鳴を上げて片足を突っ込んでしまう。


「あーあ、琥珀殿。だから言ったでしょう?」


天音が、上空から静かに呟いた。彼女の白い羽は、泥や枝が絡まないよう、普段よりも高めに位置している。その声には、冷静さの中にも、わずかな呆れと、疲労が滲んでいた。


天音は、周囲の魔力の流れを読み取り、時折、彼らの足元に微かな風の道を創り出し、歩きやすくしていた。


「はは、みんな、もう少しだ。翁殿が仰っていた巨大な岩も、そろそろ見えてくるはずだ」


太郎は、苦笑しながらも、一行を鼓舞した。彼の槍の柄を握る手には、確かな力が込められている。彼らの間に流れる賑やかな空気と、互いを気遣う様子が、険しい道のりの疲労を和らげてくれるようだった。


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